第13作 「私」

時々思う

「私」は何を想い、何を求めているのか。

何が楽しく、何を哀しく感じるのか。


世間の大人はよく言う

「自分のことは自分が一番知っている」と。


でも「私」は「私」が分からない


お気に入りの番組や映画、音楽

「私」は何に惹かれているのだろう


「私」を知ることは簡単なようで難しい

それは理想の「私」との距離を知ることだから


誰しもが無意識に持つ理想の「私」は遥か先にある

しかし道は示されておらず、ルートはわからない


今の「私」を知ることは、理想の「私」との距離が分かるということ

その距離に絶望したくないため、今の「私」は「私」を知ろうとしない


だが、理想の「私」を知らなければ、理想の「私」に近づくことすらできない

理想の「私」へのルートを示すのは、「私」を知るという指針


「私」の興味や感情は、何に向けられるのか

何が気になって、何を調べるのか。

何に笑い、何に怒りを感じるのか。


そうやって「私」を知ることでしかわからないことがある


一方で、そうやって考えていてもわからない「私」がいることも事実である

「私」にとって当たり前だと考えていること

それが他人にとっては当たり前ではないこと


そういった隔たりは「私」一人では考えの及ばないところである


ゆえに「私」は「私」を定義する。

「私は私を一番知っている相棒であり、一番知らない身近な他人でもある」と。

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