第20話…旅の仲間が現れた!①

 翌日。朝の仕事を終え、部屋で軽く汗を流し着替える。転生して唯一不便だなあと思うのはやっぱりお風呂なのよね。日本人だったから。ああ、1日一回は湯船にどぼーん、と肩まで浸かりたい……


 ちなみに今の私の容姿は、ごく普通のブルネットにヘーゼルアイ。つまり平凡中の平凡というやつだ。なんちゃって中世ヨーロッパ的世界なんだから銀髪紫眼とか、金髪碧眼とかなってみたかった気もするけど、一時的ならともかくずっとそれだと、私の中の日本人的感覚が拒否りそう。モブ万歳。


 ちなみにピンクゴールドとか、ストロベリーブロンドとかははなから選択肢にありません。いや、緑とか青とか紫とかの髪色が普通な世界ならともかく、ごく一般的な農村でその色では超絶浮くし。絶対虐められるって。いくら髪の色では差別無いって天使様が言ってても、普通ではありえない髪色ならねえ。顔立ちが地味だから余計にね。髪色だけ奇抜だったら多分めっちゃ凹んだと思う。


 取り敢えず、今日会う人がどんな人なのかがさっぱりなので、王都に来てから買ったそれなりの生地で仕立てた服を着る。畑仕事には邪魔になるので、アクセサリーはほとんど持っていない。ひとまず髪を縛るリボンだけはお洒落なやつにした。……我ながら枯れてるなあ。


 いつもの様に通用門から入って、迷路の様な王宮内を今日もメイドさんに案内してもらって部屋へと進む。厨房は流石に覚えたけど、それ以外の部屋は何回来ても覚えらんないなあ。オートマッピング機能欲しい……


 指定された部屋へと到着すると、外には騎士さんが立っていた。……うへえ。騎士がガードしなきゃならない人が居るって事ね……


「ヴェルティア嬢がお越しになりました」


「ああ、入ってもらってくれ」


「しつれいし…!?……ますぅ」


 これは……いくらなんでも大物過ぎやしませんか。ドアを開けてもらい、部屋に入ると、そこに居たのはあのゲームで一番見た顔……パケで一番でっかい絵……に良く似た男の人。あー……多分第二王子様だよねぇ?王太子殿下はモブに近い扱いだったけど、ゲームに出てきたから、顔多分わかるし。


 促されるまま、ソファに座るとすかさず侍女さんが音もたてずに忍び寄りお茶を用意始める。ビックリした……隠密のスキルでももってんのかしら。


「よく来てくれたね。君は聖女と同じの様・・・・だからもしかしたら知っているかもしれないが、一応名乗ろう。ランクス・リヴァール、まだこの国の第二王子だ。とはいえ気軽にランクスと呼んでくれて構わない。暫く一緒に旅に出る仲間だからね」


「……はぁぁぁっ!?」


 え、い、一緒てどういうこと!?魔法の習熟を見るだけじゃないの!?


 ……やられた。あのくそ宰相様。王子様の事言ったら全力で逃げると思って内緒にしてたわね。

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