第16話…聖女様はざまぁされる②(聖女視点)

「そこまでだ」


 ホールに冷たい声が響く。誰よ、邪魔すんのは!?


 声がした方に振り向くと、シアンのお父さんの王様が怖い顔をして立ってた。


「ち、父う「今は公式の場だ。貴様こそ無礼だぞシアン」…も、申し訳ありません、陛下」


 何よ!身分を振りかざしちゃって王様だからって酷いわ!!


 だから、シアンは悪くない、私が悪いの!って王様に言ったんだけど、かえって冷たい目で見られただけだった。


「聖女よ。そなた、魔法は習得出来たのか?」


 な、なによ突然。当然でしょ、あたしは聖女なのよ。出来て当たり前なのよ!!


「ほう?学園からの報告では、授業や指導から逃げ回り、未だ初級の魔法が精々だとあったが?」


 そ、そりゃ面倒くさい練習なんかよりも、シアン達と交流する方が大事なんだもん、仕方ないじゃない!!それに魔法なんてちょっと使えりゃいいじゃん!!だって遠征じゃ騎士団の人とかが闘えばいいんだもん。あたしが怪我でもしたらどうすんのよ!?


「その騎士達が怪我をしないように……、怪我をした時もすぐ回復出来る様に魔法の習得が必要なのだがな。どうやら口で言ってもわからぬ様だ。世界を救うべく神が遣わした存在だからと、この世界の為に無理強いするのは心苦しいと思うが故に、学園での振る舞いは見逃していたが、このままでは、世界よりも先に我が国が滅びかねん」


 なんでこの国が滅びちゃうのよ。意味わかんない。一体あたしにどうしろっていうのよ。


「皆の者。明日早朝、聖女には世界樹の救済の旅に出てもらう。供は此処におる五人のみ、騎士は付けぬ。以上だ」


「へ、陛下!!どういう事ですかっ!?」


 はぁぁぁぁっっ!?いきなりあしたの朝ってなによ!?しかも、騎士の人が来ないってどういうことよっ!?聖女の出発って、こう、大々的にパレードとかやって大勢の人に見送られながら行くもんでしょっ!!


「シアン。歳が近い故に聖女の影響を受け、共に切磋琢磨する事を期待したのだがな。切磋琢磨どころか一緒になって遊び呆けるとは。おまけによく精査もせずに他人の言葉を鵜呑みにし、王が認めた婚約を勝手に破棄するとは呆れて物も言えぬ。お前達には試練を与える。後ろの四人も同様だ。聖女と共に旅立ち、世界樹救済を成し遂げよ。成し得ぬ場合は、お前達全員除籍とすると心得よ」


「そ、そんな!?お待ちください陛下!!」


「これは決定事項だ。早々に出立の準備をせよ」


 ど、どういうこと?王様の言葉難しくてよくわかんないわよ。だれかちゃんと説明してよ!!


 突然現れた男の人達が、あたしたちを無理矢理部屋から連れ出す。それぞれバラバラに部屋に押し込まれ、あたしは着ていたドレスを引き裂くようにして脱がされた。


 ワケわかんなくて暴れるあたしが無理矢理押さえつけられながら着せられた服は、地味も地味。なんの飾りも宝石も付いてない灰色のワンピースで、こんなの着れるわけない!ってメイドが離れた隙に脱いだら、『聖女様のお召し物はそれしかございません。着たくないのでしたら、下着のままでどうぞ』とか言うのよ!!


 信じられない!!一体なにがどうなってんのよ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る