私の居場所 163

 窓の下はいつもの街角。信号はいつものように動いてます。遠藤原はそれを見てぽつり。

「なんだよ、信号は動いてんじゃねーかよ? 電気が切れたのはこの部屋だけか?・・・」

 遠藤原はスマホを手にしました。その画面には「圏外」の文字が。

「おいおい、電波もダメかよ? どうなってんだよ、いったい?」

 遠藤原は再びカーテンを少しめくりました。窓の下に電話ボックスが見えます。

「ちー、めんどくせーなー! あんなとこまで行かなくちゃいけないのか?」

 遠藤原は玄関に向かいます。

「電力会社に文句言って、賠償金をたくさんもらわないと気が済まんぞ!」

 遠藤原は玄関のドアを開けました。


 マンション外観。10階のドアが開き、遠藤原が出てきました。そのまま外廊下を歩きます。

 このマンションから500mほど離れたところに別のマンションがあります。その屋上に2つの人影があります。橋本隊員と倉見隊員です。2人はいつもと違うユニホームを着てます。背中には「鍵の救済社」の文字が見えます。

 橋本隊員は片手で双眼鏡をのぞいてます。そしてもう片手で持ったスマホに、

「対象がエレベーターに向かったぞ! パターンAだ! 用意しとけ!」


 住宅街の中の街角。少し遠くに遠藤原が住む10階建てマンションが見えます。

 ここに1台の大型ワンボックス車が駐まってます。以前田村佐恵子事件のとき出動したテレストリアルガード専用の特殊車両です。

 その車内。コンソール卓がずら~と並んでます。その前には宮山隊員が座ってます。宮山隊員の頭部にはヘッドセットがあります。宮山隊員はそのマイクに話しかけます。

「了解! 手筈通りに!」

 カタカタカタ 宮山隊員はキーを叩きました。

 なお、宮山隊員とは別に、このディスプレイを見てる2つの人影がありました。隊長と寒川隊員です。2人は警官の服を着てました。隊長と寒川隊員はお互いの顔を見合わせ、ニヤッとしてうなづきました。


 エレベーターの扉の前に遠藤原が立ちました。表示されてるデジタル数字(階数)は10に向かって増えてます。

「ふ、さすがにエレベーターこいつは壊れてなかったか?」

 デジタル数字が10に到達。チーン! 扉が開きました。

 これを双眼鏡で見ていた橋本隊員は、スマホに、

「今だ!」

「了解!」

 と応答すると、宮山隊員はエンターキーを叩きました。ピッ!

 エレベーターの箱の中、遠藤原が「1」のボタンを押しました。が、扉が閉まりません。遠藤原はあれ?という感じになってしまいました。

「おいおい、どうなってんだよ!?」

 遠藤原は「1」のボタンを連打します。また「閉」のボタンも連打します。けど、やはり何も動きません。遠藤原はついに怒り声をあげました。

「もうっ! どいつもこいつもーっ!」

 遠藤原はエレベーターを降り、その隣りの非常階段を降り始めました。

 片手に双眼鏡、もう片手にスマホの橋本隊員。

「エレベーター復旧!」

「了解!」

 と応答すると、宮山隊員はエンターキーを再び叩きました。するとエレベーターの扉が自動的に閉まりました。表示されたデジタル数字を見てみると、エレベーターは下に向かったようです。


 マンション外観。脇の非常階段のぶ厚い鉄製のドアが開き、遠藤原が出てきました。遠藤原の行く手には交差点。さらにそのはす向かいには電話ボックスがあります。

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