私の居場所 161

 真土灯里の眼がテーブルの上に置いてあった紙片に止まりました。で、それを持って読みました。

「ちょっと急用ができた。先に帰る?・・・」

 他の真夜中のノックのメンバーも真土灯里の背後からこれを読んでます。真土灯里は横目で右にいる日向隊員と左にいる明石悠を見ました。そして再び前を見て、

「いったい何があったんだろ?」


 テレビの中、エレキギターを弾きながら歌を歌ってる見附さん。先ほどまで真夜中のノックが演奏してた扶桑テレビの歌番組、ミュージックレッツゴー!です。

 ここは酒場。店内に設置されたテレビにこの見附さんが映ってました。酒場の中はそこそこ混んでます。その中で高浜さんがジョッキでビールを呑んでます。高浜さんは2人がけのテーブルに座ってますが、向かいの席はからです。

 テレビの中はちょうど今、バンド(Technical-H)の演奏が終わったところです。男性MC。

「Technical-Hのみなさんでした!」

 高浜さんはからになったビールジョッキをテーブルにバーンと叩きつけました。そして情けない表情を見せます。

「ふっ、オレ1人じゃ、何もできねぇのかよ? 情けねぇ・・・」

「荒れてますねぇ・・・」

 突然の声。その声を聞いて高浜さんははっとします。高浜さんが見上げると、ちょうど1人の男性が眼の前の席に座ったところでした。私服の寒川隊員です。

「ちょっと失礼しますよ」

 2人は初対面。寒川隊員は高浜さんを知ってますが、高浜さんは寒川隊員を知りません。高浜さんは寒川隊員をギロっとにらんで、

「取材お断りだ! どっかに行ってくんないか!」

 どうやら寒川隊員をマスコミ関係者だと思ったようです。

「ふ、自分は日向愛にギターを教えた者ですよ」

 それを聞いて高浜さんははっとします。

「え?」

「けどねぇ、あいつ、5歳のときからピアノを習ってましてね・・・ オレの知らない音楽用語をポンポンと並べてきたんですよ。オレ、とたんに教える気がなくなっちまって・・・ 5日でギブアップしましたよ」

「ふふ、教える方がギブアップしたなんて?・・・」

 高浜さんは思わず苦笑い。

 寒川隊員は面積の大きい茶封筒を取り出し、

「あなたにいいものを持ってきました」

 寒川隊員は高浜さんの眼の前にその茶封筒をぽんと置きました。高浜さんはその茶封筒を手にしました。

「これは?・・・」

 高浜さんは茶封筒の中からA4の紙片を1/3ほど引き出しました。数枚あります。それを読んで高浜さんはびっくり。

「えーっ!?・・・」

 それはほんの少し前、高浜さんを、そして寒川隊員を激怒させた掲示板。そこで見た文章が並んでるのです。しかもIPアドレス付き。そのIPアドレスの所有者と思われる個人名とその住所まで明記されてました。

「こ、こ、これは!?・・・」

 寒川隊員は応えます。

「見ての通りですよ」

「どっから手に入れたんだよ、これ!?」

「それは言えません」

「ほんものなのか、これ?」

「もちろん!

 その中に付箋のついた紙があります。確認してください!」

「え!?」

 高浜さんは慌てて茶封筒からすべての紙を取り出しました。その中にたしかに付箋の付いた紙片がありました。寒川隊員。

「そいつ、わりと近い場所に住んでますよ。ここから3kmキロてとこかな?」

「え?・・・」

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