私の居場所 118

 いや、イジメられてないじゃん! 日向さんが全部阻止してくれたんだった! 日向さんと一緒なら、安心してギターを弾けるはず!

 真土灯里はそう判断すると、高浜さんに、

「いいですけど、一つ条件があります!

 今私は日向愛ていう人とコンビを組んでます。彼女は私の大事なパートナーです。今の私は彼女なしではギターを弾けません! 彼女も真夜中のノックに参加させてください!」


 車内でタブレットでこれを見てた日向隊員はびっくり。

「ええ~!?・・・」

 ハンドルを握ってる隊長は、そんな日向隊員を横目で見て、

「おい、日向、そろそろゲートだぞ。用意しとけよ!」

 日向隊員はきょとん。

「え?」

 クルマの窓の外、街道に沿って金網のフェンスが続いてます。そう、この中はテレストリアルガードの基地です。

 さらに眼の前にケートが見えてきました。基地のゲートです。ゲート付近にはいくつかの人影も見えます。女神隊員の単眼を狙ってるパパラッチです。

「あ、いけない・・・」

 こいつらに私の素顔を撮影されたら隊長に怒られちゃう! 日向隊員は慌てて濃いサングラスをかけ、ちょっと季節外れの麦わら帽子を目深に被りました。

 隊長の4WD車がゲートの前で停車。さっそく数人のパパラッチが飛び出し、車内をストロボ撮影します。ストロボを浴びた日向隊員は、平然とした顔をしてます。と言っても、帽子のつばのせいで口元しか見えないのですが。

 ゲートが開き、4WD車発進。さすがに基地内にパパラッチは入ってきません。


 格納庫のような屋内駐車場のシャッターの前で隊長の4WDが停車。シャッターが自動的に上がり始めました。

 その車内。日向体隊員が隊長にもじもじしながら質問。

「あ、あの~ 隊長、その~・・・ 私、プロデビューしてもいいですか?」

 隊長のクルマが動き始めました。ハンドルを握る隊長が応えます。

「あは、聞こえてたよ、タブレットの音。

 オレはすみれがプロになりたいと希望したら、それを許すつもりだった。だったらお前も許さなくっちゃいけないだろ?」

「ほんとうですか!?」

「ほんとうだ。ほんとうにほんとうだ!」

 屋内駐車場のシャッターが完全に上がりきりました。隊長の4WDが動き始めました。その車内の隊長。

「けどなあ、万が一宇宙人が襲ってきたら、そっちに専念してくれよ」

 日向隊員は苦笑い。

「あは、当然ですよね!」


 サブオペレーションルーム。引き分けの自動ドアが開き、隊長と日向隊員が入ってきました。2人はあいさつ。

「ただいまー!」

 部屋の中には宮山隊員と寒川隊員がいました。オペレーションルームのコンソールの前に座ってた宮山隊員は振り返り、

「お帰りなさい!」

 ワンテンポ遅れて寒川隊員も振り向き、2人にあいさつ。

「あ、お帰りなさい!」

 寒川隊員はノートパソコンにヘッドホンのプラグを刺し、イヤーパッドを耳に当て、何かを聴いてました。おそらく尾崎豊の曲です。隊長はその寒川隊員に、

「寒川、お前、例の報告書、作ってあるのか?」

 寒川隊員は苦笑い。

「あは、すみません。すぐ書きます!」

 寒川隊員はヘッドホンを机に置くと、ノートパソコンのキーをカタカタと叩き始めました。

 日向隊員は卵型のテーブルに座り、持ってたタブレットの画面を見ました。日向隊員はドキドキしてます。

「真土さん、あのあと、何を話したんだろ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る