私の居場所 109

 ネット民たちの妄想はよくできた妄想です。ま、それらはすべて事実なのですが・・・

 さらにこんな妄想が。胡桃なるはテレストリアルガードから依頼を受け、多額の金品を受け取り、このやらせ生放送を行ってる。

 これは半分正解。胡桃なるはテレストリアルガードから依頼を受けたのではなく、テレストリアルガードのエージェントそのものなのです。


 胡桃なるは2人の助手に眼で合図。助手Aは立ち上がり、スマホを構えました。スマホはムービーカメラモードのようです。胡桃なるはそれを確認し、

「じゃ、ここでいつもの人に登場してもらいましょうか。徳延くーん!」

 するとガチャッ! ドアが開き、1人の30代の男性が現れました。男性はあいさつ。

「あ、どうも! 科捜研の男、徳延とくのぶです!」

 すると動画投稿サイトのコメント欄に、

徳延とくのぶさんだ」

 の書き込みが。どうやら普段胡桃なるのライブを見ている善良なネット民の書き込みのようです。が、今は悪意の塊のようなネット民がいつも視聴してるネット民の10倍以上います。彼らの書き込み。

「ぶっさー! なんだよ、こいつ?」

「またキモイやつが現れたよ!」

「ここはキモイやつの品評会か?」

 徳延とくのぶさんは標準的な顔かたち。醜いなんて微塵もありません。ほんとネット民のオツムの中身は悪意の塊です。

 胡桃なるは徳延とくのぶさんを横目で見ながら、助手Aが構えてるスマホに、

「この人はよくここに来てくれる人ですが、今日は初めて見てくれてる人が多いようなので、あらためてみんなに紹介しましょか!

 この人はあのテレビドラマで有名な科捜研で働いてる研究員です!」

 するとコメント欄が反応。

「はあ? このキモブタが科捜研だって?」

「うんこ処理場で働いてるんじゃねーの、こいつ?」

 またもや悪意丸出しの書き込みの羅列。するといつもこのチャンネルに来てる人と思われる人がURLを貼り、

「この人はほんとうに科捜研で働いてる人ですよ」

 するとネット民たちは、

「仕込み発見!」

「お前、胡桃なるていうキモヲタに雇われた仕込みだろ!」

「キモいから二度と書きこむな、このくそブタ野郎がーっ!」

「タヒねよ、キモハゲ野郎! ここはお前みたいなハゲが存在してていい国じゃねーんだよ!」

 と罵詈雑言の羅列。けど、悪意のネット民の何人かは、そのURLに飛びました。そこは科学捜査研究所(科捜研)のホームページ。徳延とくのぶさんのプロフィールが載ってるページもあります。

 確固たる証拠を見せられても納得しないのがネット民です。

「おいおい、こりゃまたずいぶん手が込んでるんじゃねーか?」

「一目見てただけでニセモノとわかるずさんなホームページだな、こいつは!」

「大急ぎで作ったんだな! ご苦労なこった!」

 もちろんこれは正式な科学捜査研究所のホームページです。ネット民は自分たちに都合の悪いものを見せられると、反射的に徹底的に否定するのです。

 胡桃なるは日向隊員を見て、

徳延とくのぶさんにはこのの血液型を見てもらいます」

 胡桃なるは徳延とくのぶさんを見て、

「じゃ、お願いします!」

「OK!」

 徳延とくのぶさんは持ってたかばんを床に置き、中からアルミ蒸着袋で密閉されたものを取り出しました。胡桃なるの説明。

「金目ひなたの血液型はA型です。これはいろんな資料で確定してます!」

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