私の居場所 106

 隊長。

「あの男、え~と・・・」

 隊長はど忘れしたのか、言葉に詰まりました。代わりに日向隊員が、

「胡桃なるさんですか?」

「ああ。あいつもどこで情報を漏らすのか、わからんからなあ・・・」

「テレストリアルガードの隊員てみんな口が軽いんですか?」

「あは、まさかあ・・・」

 日向隊員は宮山隊員を思い出し、

「そういや、あの人も私の正体を知らなかったっけ・・・」

 とつぶやき、次に隊長に発言。

「仲間内でも信用できないなんて、なんかすごいところなんですねぇ、テレストリアルガードって・・・」

 ここで突然電子音が。日向隊員のポケットの中のスマホが鳴ったようです。

「あれ?」

 日向隊員は慌ててスマホを取り出し、画面を見ました。

「あ、真土さんからメールだ!」

 日向隊員はスマホをタッチ。メールを開きます。そして画面の文字を読みました。

「今日7時からユーチューブのタカハマチャンネルに出ます。ぜひ見てください」

 日向隊員は視線を上げ、つぶやきました。

「7時か・・・」

 隊長が応えるように、

「君は胡桃なるあいつの生放送に出てるんじゃないか、その時間は?」

「あは、あとでアーカイブで見ます」


 すでに夜。ここは日向隊員や明石悠が生徒会長と呼んでいる女子の家。

 その家の室内。机に座って生徒会長がインターネットをやってます。パソコンのモニターの中では真土灯里がエレキギターを弾いてました。

 そう、生徒会長が見てる番組は、タカハマチャンネルの生放送だったのです。


 ここはスタジオ。真土灯里がエレキギターを弾いてます。高浜さんはちょっと高級なカウチに座ってそれを聴いてます。サングラスをかけてますが、それでもうれしそうな顔をしてるのがわかります。


 再び生徒会長の部屋。生徒会長はコメント欄を見ます。そこには辛辣で悪意に満ちた書き込みしかありませんでした。

「ぶっさーっ! 超ぶっさー!」

「こいつ、きもいんだよ! こんなやつ、放送に出すなよ!」

「なんだよ、このヘタクソなギター。ただの雑音じゃねーか」

 あまりにもひどい罵詈雑言の数々にさすがの生徒会長も引き気味。

「あ~あ、いやだいやだ。私はこんなやつらにはなりたくないな・・・」

 と、コメント欄に突然こんな書き込みがありました。

「おい、みんな、金目ひなたが生放送に出てるぞ!」

 それを見た生徒会長はびっくり。

「金目ひなた? ええ? え~!?・・・」

 コメント欄は、

「おい、みんな、そっちに行こうぜ!」

「こんなへったくそなギターなんか聴いてたら、耳の毒だ!」

 こんな書き込みだらけになりました。

 生徒会長もマウスを操作。慌ててそちらに移動しました。

 タカハマチャンネルの蒲放送は1万人以上が視聴してましたが、これをきっかけにものすごい勢いで実況民が減っていき、カウンター数はあっという間に2千以下になってしまいました。

 ちなみに、この数、いつものタカハマチャンネルの生放送の視聴者の数です。つまり本来のタカハマチャンネルの視聴者だけとなったのです。

 今真土灯里が弾いてる曲ですが、真夜中のノックのundercover。オリジナルの音源からギターの音だけを抜いたものに、真土灯里が生でギターを入れてたものです。

 今まで罵詈雑言だらけだったコメント欄は、真土灯里を大絶賛する書き込みだけとなりました。

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