私の居場所 103

 女性はクルマから見て横を向いてます。髪の毛で顔は見えません。

 と、女性がクルマに顔を向けました。黒い肌。そう、この女性は明石悠です。びっくりするサングラスの男。

「ええ~!?」

 次の瞬間、咆哮のような悲鳴が響きました。

「うぐぉーっ!」

「いてーっ!」

 サングラスの男は慌てて振り返ります。

「な、なんだ? 何が起きたんだ~!?」

 後部座席ではモヒカンの男とリーゼントの男は頭を抱えたまま、のたうち回ってました。サングラスの男は慌てます。

「だ、大丈夫ですかーっ!?」

 モヒカンの男はのたうち回りながら怒ります。

「ばかやろーっ! あいつ、すぐそばにいたじゃねーかよ!」

 唖然とするサングラスの男。

「ああ・・・」

 と、サングラスの男は明石悠をにらみます。

「くそーっ、こうなったら、オレがーっ!・・・」

 サングラスの男はアクセルペダルを踏み込みます。

「ひき殺してやる!」

 クルマが急発進。明石悠に迫ります。危ない! が、クルマが当たる寸前、明石悠の身体がふわりと浮きました。びっくりするサングラスの男。

「ええ~!?」

 クルマが急停車。サングラスの男が慌ててクルマを降り、顔を上げ、あたりをキョロキョロ。

「ど、どこに行きやがった、あいつ!?」

 けど、明石悠の姿は見当たりません。

「くそーっ、いったいどうなってんだよ?・・・」

 と、そこに、

「うごぉ~!」

 サングラスの男はそのうめき声を聞いてはっとします。

 車内。モヒカンの男とリーゼントの男は、まだ後部座席でのたうち回ってました。それを見てサングラスの男は青ざめます。

「な、なんてこった・・・」

 さて、明石悠ですが、実は近くの2階建ての木造住宅の棟瓦の向こうに着地してました。

 クルマを見下ろしてる明石悠。と、突然明石悠は自分のもみあげあたりを片手で掴みました。すると・・・

 ベリベリベリ! なんと自分の顔の皮膚を剥いでしまいました。いや、皮膚ではありません。精密に作られたマスクだったのです。

 実はこの人物は明石悠ではなく、サングラスの女だったのです。そう、もしこの女性が明石悠だったとしたら、中学校の制服を着てたはずです。けど、実際はジャケットを着てました。長い髪もウイッグでした。

 女はさっとサングラスをかけました。そして右手に持ってたマスクの残骸を見て、

「ふふ、変装でも発動するなんて、なんてすごい催眠術なの、これ?」


 快調に走る隊長が駆る4WD車。

 その車内。助手席の日向隊員は浮かない顔になってます。無理もありません。窓の外の光景は日向隊員のよく知ってる光景なのです。

 日向隊員は運転席の隊長を見て質問。

「あの~ 隊長、ここって?・・・」

「ああ、君が生まれ育った街だ」

「なんでここに?」

「君が金目ひなたじゃないと証明するためだ。いや、ウソをつくためかな? まあ、ちょっと我慢しててくれないか?」

 日向隊員は相変わらず浮かない顔です。

 校門が見えてきました。日向隊員が金目ひなた時代通ってた小学校のものです。日向隊員はここで山際怜子をイジメて自殺に追い込み、そのために世間からひどい報復を受けました。

 弟は悪ガキに殺され、自分と両親は逃亡。が、ネット民が行く先行く先で網を張ってました。ついには3人が乗ってた飛行機が墜落。両親は死亡。自分は身体がバラバラになってしまいました。

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