私の居場所 10
日向隊員はなんか気まずくなってしまいました。で、何気なく望遠鏡の接眼レンズをのぞき込みました。そこには土星が映ってました。
「あ、土星」
女神隊員が応えます。
「あは、知ってるんだ、土星」
「これくらいは知ってますよ」
「海老名さんとこの望遠鏡で見たんだ、土星を。あんなハチマキをした星、私が生まれた星系にはなかったから、びっくりしたっけ」
「へ~」
それからしばらく2人の会話は続き、30分くらいして日向隊員は自分の部屋に帰りました。
翌朝、テレストリアルガード基地が朝陽に包まれてます。
ここはテレストリアルガード基地地下廊下。隊長と日向隊員が会話してます。隊長は隊員服ですが、日向隊員はセーラー服とブレザーを足して2で割ったような服。中学校の制服です。以前海老名隊員が着てた制服と同じ。日向隊員の首元には紺色の太いチョーカーが見えます。
隊長は笑顔で、
「いよいよこの日が来たな」
「はい」
「元気に行ってこい!」
「はい!」
日向隊員は振り返り、歩き始めました。
長く続く地下廊下。今日向隊員の心の中では不安が渦巻いてました。それは半年ぶりの登校からくる不安ではありません。実は日向隊員は昨夜、正確には今朝早く、嫌な夢を見てたのです。
夢の中で日向隊員は顔面を思いっきり殴られました。殴った相手は制服からして日向隊員がこれから通う中学校の男子生徒。それ以外にも3人の男子生徒がいます。4人ともいかにも不良て感じ。もう1人だれかいるようですが、イマイチわかりません。
日向隊員の身体はパンチを喰らって、大きく背後に吹き飛ばされました。歯を何本か折られたらしく、口から血が噴き出してます。
「ぎゃははは、簡単に折れちまったよ、こいつの歯!」
これは殴った男子生徒の発言。側にいた男子生徒が笑いながら応えます。
「もっと折っちまえよ」
殴った男子生徒が大きく右脚を上げます。
「おーっ!」
男子生徒が倒れてる日向隊員の顔面めがけ、脚を振り下ろしました。
「ほらよ!」
日向隊員の顔面にその靴底が激突する寸前、日向隊員は眼を醒ましました。
「はっ!・・・」
顔は日向隊員の肉体の数少ないオリジナル部分。そんなところを傷つけられるなんて・・・ けど、あれはいったいなんだったんだろう?
日向隊員は予知夢を見ることができます。この不吉な夢は、今日起きる出来事を暗示してるのでしょうか?
長い地下通路の終わりが見えてきました。日向隊員がその突き当たりに達すると右折。そこは階段。階段を上がると木製の扉。日向隊員は扉を開けました。
そこはふつーの木造家屋の居間。日向隊員は靴を脱ぐと居間に入りました。どうやら幅3尺の押入に見せかけた片開きドアだったようです。
日向隊員は居間を通り抜け、玄関へ。玄関には中学校指定のシューズが。日向隊員はそのシューズを履きました。
ここは木造平屋建て家屋。一見してなんの変哲もない家屋です。今その玄関の扉が開き、日向隊員が現れました。
家の前は街道。その向こうは背の高い金網フェンスが永遠と続いてます。金網フェンスの向こうは滑走路。3階建てのビルや格納庫が見えます。そう、そこはテレストリアルガードの基地。
実はこの家、テレストリアルガード基地の秘密の出入り口の1つ。海老名隊員はずーっとこの家を使って学校に通ってました。
ちなみに、この家の三方は林。この家以外、家屋はありません。何か規制されてるようです。
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