侵略者を撃つな! 83

 日向隊員は首をはずすことができる。それは仲間内にも内緒にしておきたい秘密でした。が、一昨日デモンストレーションの最中、日向隊員は女神隊員と倉見隊員の眼の前で首をはずしてしまいました。一応隊長は2人にこのことは口外しないように命じておきました。当然日向隊員にも重々注意しておきました。なのに彼女は、今日も首をはずしてました。

 隊長は、

「あいつ、もしや上溝の眼の前でも首をはずしたんじゃ?」

 と疑念を持ちましたが、上溝隊員の反応からそれはなかったようです。

 なお、日向隊員の授業は、翌日から自習となりました。


 翌日の晴天下、ここはテレストリアルガード基地、広大な滑走路にクレイン号が駐機してます。

 その機内、コックピット。操縦席に寒川隊員、副操縦席に隊長が座ってます。2人は5点式シートベルトを締めてるところ。シートベルトを締め終えると、寒川隊員は隊長を見ました。

「隊長、なんですみれのこと話してくれなかったんですか?」

「ふっ、だってお前、なかなか基地に帰ってこなかったじゃないか。スマホの電源も切ったままだったし・・・」

「あは、昨日はストリートで夜11時まで歌ってましたよ。こんなことなら、もっと早く帰ってくればよかった。

 しかし、気になりますねぇ。すみれの父親のこと。その話をすると、なんか、あいつ、壊れてしまうような気が・・・」

「う~ん・・・ かと言って、これは刑事事件だ。すみれは何か重大な証拠を握ってるかもしれないし、無視することは絶体できないぞ」

「ええ、わかってます」

「じゃ、そろそろ行くか!」

「はい!」

「浮上!」

「了解!」

 滑走路上のクレイン号が浮上し始めました。なお、いつものように音はまったく漏れてきません。

 コックピット背後の乗務員席。日向隊員と女神隊員の姿が確認できます。2人は並んで座ってます。ちょっと離れたところには倉見隊員の姿もあります。上溝隊員はいつものようにお留守番です。橋本隊員はいまだに有給休暇中でした。

 日向隊員は思いました。

「黒部すみれ、か。初めて会う人だけど、いったいどんな人なんだろう? 脳をケガして心が希薄になってると言ってたけど、どうやってあいさつしよっか?・・・」

 日向隊員は夢の中で出逢った海老名隊員を思い浮かべました。

「海老名さんはすみれさんが足を引っ張って隊長が戦死すると言ってたけど、やっぱダメダメな人なのかなあ?・・・」

 日向隊員はまだ見ぬすみれ隊員にいろいろと思いを巡らせました。

 操縦席の隊長が号令。

「ジャンプ!」

 寒川隊員が応えます。

「了解!」

 クレイン号の窓の外、何かがピカッと光ったと思った瞬間、雲の形や量が一瞬で変わりました。近くには富士山も見えます。寒川隊員がコンソールのモニターを見て、

「ジャンプアウト完了! チェック、ライトオールグリーン! 問題ありません!」

 隊長の命令。

「よーし、着陸!」

 クレイン号が着陸を開始しました。いつものように無音です。

 日向隊員が窓の外を見ると、草原に佇む白衣姿の南原主幹が見えました。

「あ、南原さんだ」

 南原主幹の側には2台のワンボックス車も見えます。内1台は日向隊員が変身するときに使ったクルマです。


 クレイン号が着陸ギアを出し、草原の広くなったところに着陸。続けてクレイン号の腹の下に淡い円筒形の光が発生。光が消滅すると、そこにテレストリアルガード一行5人が現れました。

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