赤ン坊殺しの英雄 2

 翌朝。冬の朝はなかなか太陽が昇ってきませんが、この時間太陽はすでに昇り切ってました。

 ここは新調になったテレストリアルガード基地オペレーションルーム。いつものように上溝隊員がレーダースコープなどの機材が並んだ席に座って雑誌を読んでます。

 その隣のサブオペレーションルームでは、香川隊長がノートパソコンでインターネットニュースを見ています。それ以外の隊員の姿はありません。

 なお、オペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉(引き分けの自動ドア)は、今の隊長の方針で常時開けっ放しになってました。

 隊長が見ているインターネットの画面には、昨夜起きた連続通り魔事件のニュースが映ってました。3人も殺されたようです。

 突然自動ドアが開きました。

「隊長」

「ん?」

 隊長が振り返ると、中学校の制服姿の海老名隊員が立ってました。学生カバンを持ってます。登校直前のようです。隊長は眉をひそめました。

「おい、なんだよ、その服は? この部屋に入るときは、テレストリアルガードのユニホームに着替えろっていつも言ってんだろ!」

「あは、すみません。学校に行く前にどうしても隊長に伝えないといけないことがあったもんで」

 海老名隊員は横目で上溝隊員を見ました。上溝隊員は引き続き雑誌を読んでます。それを確認すると、海老名隊員は隊長の耳元に口を寄せ、

「今日警察の偉い人が2人来ます」

 隊長はニヤッと笑い、

「夢か?」

「はい」

「う~ん、けど、なんかおかしくないか? 君の正夢は君と直接関係のある出来事じゃないと発揮しなかったような?」

「私と関係のあることで来るのかも?」

「ま、心に留めておくよ」

 海老名隊員は振り向くと、

「それじゃ」

 ここで上溝隊員が海老名隊員に声をかけました。

「あ、えびちゃん、たまには朝食ったら? 食べないとずーっとチビのままよ!」

 海老名隊員は自動ドアを開けると上溝隊員を一べつし、

「いらないでーす!」

 と返事。次の瞬間 自動ドアが閉まりました。上溝隊員は呆れてます。

「もう、一度も朝食ったことないんだから・・・」


 廊下です。海老名隊員は歩きながらつぶやいてます。

「上溝さん、私は成長しちゃいけない身体なんです。胃袋も取られちゃったし、成長を押さえる薬も毎日飲んでるし・・・」


 それから2時間後、オペレーションルームの固定電話が鳴りました。上溝隊員が受話器を取り、

「はい・・・」

 そして振り向きました。

「隊長、警察庁の人が来ました」

 サブオペレーションルームの隊長はいつものように録画しておいたアニメを見てましたが、振り返り、

「ん、もう来たのか?」

 上溝隊員はその隊長の返事にある疑問が湧きました。小声で、

「あれ、隊長、なんで知ってたの、今日警察の人が来るって?」


 ここはテレストリアルガード基地にある3階建てのビル。その3階にある会議室です。今この部屋には3人います。香川隊長と2人の男性。2人は警察の制服を着てます。服装からしてかなり階級が上のようです。この2人、仮にAとBとしましょう。隊長と2人の男性は相対して座ってます。

 隊長。

「一晩になんの関係もない人が3人、別々の場所で殺された、と? ああ、そのニュース、さっきインターネットニュースで見ましたよ」

 Aが応えます。

「まるで辻斬り。証拠を何一つ残してないんですよ」

 B。

「3人の内1人は公園で殺されていたんですが、被害者の下足痕ゲソコン以外の下足痕ゲソコンがまったく残ってなかったんです」

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