第619話 とある乗り鉄の人2

現在1人旅中の僕。


乗っている電車は多分定刻通り終点の賢島へと向かって走っている。

今は――真菅ますが駅を通過したところだと思う。少し電車のスピードが落ちていたのでね。駅名を読むことが出来た。

もしかしたらもうすぐ大和八木駅を通過すると思うので、前を他の電車が走っているのかもしれない――と、思いつつ進行方向左側を見ていると――ちょうど大和八木駅を電車は通過。隣のホームには、普通か急行かまたは準急か――というのは、電車のスピードが戻っていたので、さすがにわからなかったが。通勤車両が止まっていた。どうやらこの電車が前を走っていたらしい。大和八木駅を通過した電車はさらにスピードをあげてさらに伊勢志摩方面に向かって行く。


「がはは。この電車はいいな。全く止まらないな。良い電車を教えてもらった。こりゃ楽だな。がははっ」

「……」


うん。あの時たまですね。僕の前に座っている身体の大きな方が独り言を発しているのだが――声が大きい。でもまあ、ずっと話しているわけではないから――まあいいが。って、突然独り言が始まると――。


「おー、そうだそうだ。到着時刻を連絡しないと何だな。宮町は特急券に書いてあるとか――言ってなかったか?どれだどれだ?」

「……」


うん。ドキッとなんかするんだよ。静かな車内でいきなり――だからな。まあ僕が一番近くたまたま真後ろの席に居るからかと思うが――ってまあまだこの身体の大きな人の前の座席じゃなかっただけマシなのか。これ――真後ろにこの身体の大きな人が居たら――独り言の度にびっくりだな。にしてもこの前の人。わざとという感じはなく。多分これが普通なんだろうな。嫌な感じ。オーラというのは全くないのでね。出来れば独り言の際のボリュームを半分くらいにしてほしいが――まあいいか。


ちなみにちらりと車窓を見ると――いつの間にか周りが緑。山の中となっていた。どうやら――どこだ?ここどこだ?山の中――山の中。あっ、長谷寺あたりを今電車は走っているらしい。車窓より前の人が気になりすぎているから。なんかあっという間だな。うん。コロコロ車窓が見るたびに変わっているよ。


「よっこいしょ。デッキデッキ。前でいいか?前あるのか?まあいいか」


僕が車窓を見ていると。前に座っていた身体の大きな人は――スマホだけ持って前の方。デッキへと歩いて行った。って、あの人が動くたびに目立つというか。うん。多分だがこの車両に乗っている人みんなが見ているのではないだろうか――などと思いつつまあ静かになったし。車窓でも見てゆっくり目的地――。


ゴーー。


「……」


うん。ちょうど僕が再度外を見ようとした瞬間。電車はトンネルに入ったのだった。車窓は真っ暗となった。うん。真っ暗。ガラスに自分の姿が映っている。


それから少しして身体の大きな人が戻って来た。ちなみに今度は前からこちらに向かって歩いてきたので――うん。なんか僕見られてる?気のせいだよね?ということが少しあったが――ってか。ものすごく笑顔だった。キラキラしている顔だった。何かいい事でもあったのだろうか――と考えてしまうくらいに。って、もしかして、僕と同じでこの電車を楽しんでいる――?いや、違うな。なんかどこかに行くって感じだもんな。


「よっこらせ。さて、連絡良し。終点まではまだまだ。寝るか」

「——同じだったか」


うん。聞こうとしているわけではないが。勝手に聞こえてくる前の席の身体の大きな人の声。うん。どうやら目的地は同じらしく――このままずっと同じらしい。まあ「寝るか」と言っていたので――そのまま寝ていただけると静かに移動できるかな?うん。僕は静かに車窓を楽しんでいるのでね――うん。


それからしばらく、身体の大きな人の声は聞こえてこなかった。動く気配もなかったので――本当に休んでいるらしい。

そのため車内はまた静かになり――走行音だけが聞こえてくる。途中の停車駅が少ないため。車内放送もないのでね。走行音だけが聞こえている。電車は名張駅を通過して――しばらくというところを走っている。


それから僕も車窓をのんびり――って、ちょうど電車のスピードが落ちてきたな。と思っていたら伊賀神戸駅を通過。この駅からは伊賀鉄道線だったか。他の鉄道もあり。忍者?だったかな?忍者列車というものがあるらしく。また時間を見つけて乗りに来たいな。うん。いろいろ乗りたいところはあるだった。


その後の電車はまた緑が多い中を進み。長いトンネルなどを走り。って、この区間はトンネルが多いというね。まあ予定通り伊勢志摩方面へと進んでいた。

そうそう。伊賀神戸駅を通過したということは、いつの間にか三重県には入っていたというね。


ちなみに、身体の大きな人は本当に静かです。うん。いや、静かなのに何故かまた独り言が――と勝手に身構えてしまうというね。静かでも存在感のある僕の前の人だった。

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