黒の部屋
なつきまる。
都市伝説
都市伝説 1
――ねぇ知ってる? 絶対に入居しちゃいけない物件があるんだけど、そこがマジでヤバいらしくてさ。今まで誰も二週間以上住んだ事がないんだって。都内にある一万円未満の物件なんだけど……。
――えっ、それって都市伝説じゃないの? 最初に入居した人が二週間もしないうちに自殺してからおかしくなったっていう、あの物件だよね。
――うん、私も最初はただの都市伝説かと思ってたんだけど、違うみたい。心当たりがあるから、ちょっと話だけでも聞いてみようよ。
《三島さんが入室しました》
亜歌音『おぉ、ホントに来た。初めまして。私、心霊マニアの
てへぺりょ『初めまして。あの物件の事、本当に実話なんですよね? 私たちツイッターから来たんですけど、よろしければ詳細をお願いします』
どんな闇よりも深い背景に、鮮血をほとばしらせる紅い文字。何も疑う事はせず、あっさりと事細かに三島は答えた。
入居中は、音を数えてはいけない。
影が迫ってきても振り向いてはいけない。
入居中は、どんな図形であろうと絶対に絵を描こうとしてはいけない。
《三島さんが退室しました》
……三島は、不気味なほど無口だった。ネット上だけなのかもしれないが、要点だけ伝えてから落ちている。
「……ここだね」
亜歌音とてへぺりょは、古いアパートの前に立っていた。築三十年。かなりガタが来ているようで、近々リフォームするらしい。
頑なに拒む不動産の担当者の意見を押し切り、二人は事故物件へと舞い降りる。
カメラに霊をバッチリ写す。ただ、それだけ。己の欲求を満たすために、二人は絶対に立ち入ってはいけない場所へと足を踏み入れた。
好奇心旺盛な亜歌音が、このワンルームに寝泊まりする事となった。しかし……
「この部屋、危ない。初日だけど、解約してもいい?」
入居当日の夜、亜歌音は怯える声を隠し通せなかった。
「何? ノイズが走っててよく聞こえないよ」
「……はいはい。遠回しに『根性なし』って言ってるのね。分かった、もうちょっと居座ってみる」
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