第26話ヒロさん
ヒロさんとは当時仲良しだったと思っていた。
ゲーム内のチャットも結構してたしプライベート話も割としていた。
兎に角、ギルドメンバー全員仲良しだったと思うんだ。
そもそも。ジュンがゲームを始めるまでは毎日ログインして遊んでいたけど節度あったかも。
本当にあの世界にのめり込んでしまったのはジュンと知り合ってからだ。
ゲーム内でしか会えないジュンとの会話が楽しくて・・。色々と紆余曲折あったが今となっては懐かしい思い出であったのに。
ヒロさんは確か俺よりかなり年上でカフェ経営者と言う設定だった。
実際は夜のお仕事。年齢も正確な所どうなんだろ。
「オーナーに内緒には出来ないだろ?俺はもう須佐さんと関わりたくない。」
ジュンはそう言って溜息をついた。
「そうだな。ハッキリさせておきたい。で?彼はこの地に来てるのかな?それとも東京?」
3人に聞いた。
「いや。そのー。」
誤魔化す様に苦笑いする女のスマホが鳴った。
「取らないの?出なよ。」
チラリと画面を見ると須佐と見えた。
今日の仕事の確認か。この地に来ているのか。
「出ないなら!!」
旭さんがスマホをサッと取り上げた。
「ちょっと!!止めてよ!」
ピッ・・・。
聞こえる様にスピーカーにして旭さんは電話を取った。
「もしもーし!遅い!何しているんだ!?」
少しダミ声の男の声。イメージと全然違う。
「あっ。オーナー。そのあの。えっと!電話ダメです。」
「は?何がダメなんだ?!!」
女がそう言うとキレ気味のヒロさん。
旭さんが俺とジュンの顔を見て話す様に促した。
「大濠です。これはどう言う事ですか?」
ジュンが冷たく言い放つと無言になった。
プッ・・・プープープー。電話切れたし。
「意気地無しな男だな。かけ直そう。」
旭さんは人のスマホを平気で弄りリダイヤル。
音は鳴るがなかなか電話に出ないヒロさん。
そして切られた。
全く!やることなすこと俺の元彼と変わらないし!
男気ゼロかよ!とツッコミたくなる。
「すみません。うちらオーナーと来てます。オーナーは車の中です。」
「ちょっと!アイちゃん!」
「もう無理だよ。ナナちゃん。オーナーの負け!」
3人組の2人がそんなやり取りを始めた。
「うん。無理だよ。だってオーナーおっさんじゃん。大濠さんの彼氏さん?イケメンだしさあ。」
あっ。俺達の事はサラッとバレてるんだね。旭さんにもバレたか・・・。
そこは仕方ない。
「大濠さんが悪いんすよ。こんな地方に転勤しちゃうから。」
また無茶苦茶な事を言う・・。解らなくも無いがもうヒロさんがジュンが好きなのは確定か。
この御意見を書いていた女性がアイちゃんと言うらしい。
「私は良く事情知らないんですけど旅行連れて行ってくれるって言うからきました。」
この人はユウちゃんと言うらしい。
「ヒロさん来てるなら会って話がしたいんだ。」
「俺も話したい。」
ジュンと2人で彼女達に頭を下げた。
「そうですよね。オーナーには申し訳無いけど。やらせてた事はクソみたいな事だし。」
アイちゃんが迷惑かけてすみませんでしたと言って立ち上がった。
「なるほど。此処からは2人で大丈夫かな?何かあったら連絡して。ストーカーとして警察に相談も出来るから。」
旭さんは今は私が痴話喧嘩に加わるのは可笑しいだろ?と言って引いてくれた。
実際、あまり見せたい現場では無いし俺達の関係は後で旭さんにはフォロー入れて口止めしないと。
取り調べ室を出て俺達は彼女達に付いて駐車場へ向かった。
「アキラさん。ごめん。」
ジュンがボソッと呟く様に謝った。
「大丈夫。それよりジュンは平気?」
顔色があまり良くない。
「平気じゃないよ。まさかこんな事になるなんて思わなかったし。」
「うん。そりゃそうだよね。」
解決したらゆっくり話そう。
俺達を先導する彼女達も暗かった。
「あの。大濠さん。オーナー、まじウザイかも。ごめんね。」
アイちゃんが振り返ってそう言った。
「それは知ってるよ。」
ウザイのか・・・。
俺の連絡先消させたりゲーム辞めさせたり。
彼はその頃からジュンに対して固執していたのだろう。
駐車場は外れの方に止めてあった。
ナンバーは『わ』ナンバーだからレンタカーか。黒の普通乗用車だ。
女の子達は車に寄っていくのを少し距離を取って俺達も近寄った。
ジュンは本来は会いたくなかったんじゃないかなと思う。
運転席をナナちゃんって子がコンコンと叩いた。
運転席のウインドーが下りた。
「失敗したんだな?」
不満そうな顔のおっさん。
うーん。想像とだいぶ違うー!
まさにオンラインマジック!カフェ経営のお洒落な大人を想像していたのに。
良く言えばちょいワルオヤジ?
悪く言えば・・・未だにヤンキー抜けて無いおじさんだ。
年は?40代かなあ。
「あの。ヒロさんですか?」
俺は車に近寄った。
「・・・大濠君!!」
少し困った顔をしたが目は嬉しそうでちょっとムッとした。
「それと、アキラか?」
敵意剥き出し。俺だけ睨まれた。
解るけど。
「大濠君。少し2人で話がしたい。」
頼むと言われジュンは俺の顔を見た。
2択だ。2人で責め立てる。
ジュンがハッキリと断るか。
「ジュンはどうしたい?」
ジュンは少し悩む顔をして話をすると言った。
「解った。」
ちゃんと解決出来るかな。
心配はあるけれど。
決意した様にジュンは助手席に乗り込んだ。
俺とガールズバーの女の子達は車の外で待つ事にした。
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