11. 定まらないこれからと冷えていく心
場所の住所をのせるのを忘れてたので修正しました。
2022/11/29 08:30 追記
^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-
【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区1番地1-5(青薔薇宮1階)】
「以前と比べ民の皆の暮らしはとても良くなり陛下は民からはとても…慕われていらっしゃいます…。」
私の問いにそう答えた時のアンネの悲しそうな表情を思い出しつつ、今私の正面の席に座り優雅な所作でチキンステーキをナイフで切り分け口に運んでいるソレイユを見た。
「美味しいね。」
私が見ている事に気づいたソレイユがにっこり笑って言った。
その笑みは私がよく知るソレイユのものではなくゲームのソレイユによく似ている。
このままいくとゲームのバットエンドのような悲惨な未来が…いや、この世界にもうヒロインはいない。救う人がいない今、もっとひどい未来が待っているはず。
私にやれと…まだ神はそうおっしゃるのですか…。
やっぱり私は神様なんて大嫌い。
ここから早々に去ろうと思ってたのに。
はぁ…。
私は全てを諦め、いろいろな感情を捨て去ってあのころのように笑った。
「ソレイユ。後で…久しぶりに2人だけのお茶会をしましょう。」
私がそういうとソレイユ以外の周囲のもの達がざわつき空気がピリついた。
私は危険人物扱いなのね。
「これに関しては貴方に拒否する権利はない、そうよね?」
「そうだね。けどその前にティーナに会わせたい人がいるんだけどこの後少しいいかな?」
「…いいわよ。」
私はそう言って天使になる前と同じの、先程までとは全く違うふんわりとした笑みでにっこりと笑った。
すると周囲の人達は驚いて固まったり、怯えたりとまるでこちらをおばけでも見たみたいな目で見てくる。失礼な…いや、1度死んでるんだからおばけってのもあながち間違いじゃないのかもね。
「こいつら全部処罰しよう。」
久しぶりの私の令嬢モードスマイルを見たソレイユが少し同様した後に周囲の様子に気づいてぼそっと呟いた事で部屋内にいた全員がガタガタと震え出した。
「ねえソレイユ、処罰って具体的にはどうするのかしら?」
「どうして欲しい?」
「
「だってそこの者共は王妃のティーナに対して無礼な態度をとったんだし…ねぇ?」
そう言ってゴミを見る目で周囲を見渡すソレイユ
「ひっ」
「も、もうしわけ…」
ガタガタ震えて謝罪する周囲の者達。
それからの食事はひどいものでピリピリした雰囲気の中進んだ。途中ソレイユをなんとか説得し処刑はすんでのところで撤回させたけど何かしらの罰はしそうだった。
【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区1番地1-4(シエルリュミエール城内来客用特別貴賓室)】
その後、ソレイユに連れられ王宮の一角にある宮の一室にいくとローブで全身を隠している人物を連れたよく見知った人物がいた。ローブの人物は何か魔法を使っているのかローブの中がぼんやりと光っている。
「驚いた、まさかあんたまでとはな。」
その人物が挨拶もなしに苦々しくそう吐き捨てる。
「ティーナ、こいつのことは覚えてる?」
ソレイユがその人物を睨みつけてから私の事を気遣うように見つめてくる。
「覚えています。」
忘れるわけが無い。
隣国の王子様。ゲームの攻略対象でソレイユの次に人気のあったキャラ。
そして…ちゃんと思い出せないけど、おそらく私が死ぬ原因を作った2人の内の1人なのだから。
「ふん。お前も許されてはいないとみえる。」
笑わない私を驚いた様に見た後にソレイユを見て鼻で笑った。
「口も聞いてもらえていない貴様よりはマシだ。」
ソレイユがそう言い返すと以前なら険悪な空気のまま喧嘩が始まっていたのにこの3年に何か変わったのか2人はピタリと動きを止めた。
お前もってどういうこと?
さっきからローブの人物の方から視線を感じる。目深に被っているローブのフードで顔は直接はわからないがおそらくこちらを見ている。
私がじっと見ているとその人物は頭に被っていたフードを脱いだ。その正体は私には予想外の人物だったけど同時にそりゃそうだと納得もした。
だって悪役令嬢の私がこうしてここにいるんだもの。あなたがいてもおかしくないわよね。
そこに居る王子の婚約者で私が死ぬ原因を作ったうちのもう1人。私のよく知る人物。
ゲームのヒロイン。
「ルーナ…。」
なーんだ…ヒロイン生きてるなら私要らないじゃない。私がわざわざ出しゃばる必要なんてなかったのね…馬鹿みたい。
ルーナを見てこの国の為にもう一度頑張ろうと思いかけていた気持ちも綺麗さっぱり消え去った。
「ティーナ?」
きっと今の私はひどい顔をしているんだろう。なんの感情も湧いてこない。こんな気持ち初めて――
──あぁ、違ったわ。前にもあった。こんな事が。
私は思い出した。忘れていた森での追いかけっこの時の記憶。自分で消していた死んだ時の記憶を。
「ティーナ!?待って!」
部屋から出ようと背を向けた私を止めようとソレイユが私の手をつかもうとしたがソレイユの手は私の手をすり抜けた。
「待って!空姉様!」
ルーナがそう言って私に手をのばす。
「黙れ!」
ルーナの手はソレイユのようにすり抜ける事はなくバチッという音と共にはじかれ、それと同時にすぐ近くに雷が落ちる。
私を殺しておいて今さら虫のいい話だと思わないのかしら。きっと前世の妹だから大丈夫だと信じていた私が悪かったんだろうけど。
「他人の貴方にそう呼ぶ事を許すことは、もう、二度と、ない!次言ったら今度は雷が直撃する事になるわよ。」
私は最後にルーナを睨みつけてから背中の翼を消してルーナと同じ状態になった。
消していた記憶を思い出した時にこの身体の使い方も思い出したからこのくらい余裕でできる。
部屋の外に出る扉の前には元幼なじみのルヴァインが立ちふさがっていた。
「お願いします、クリスティーナ様。お願いします…。」
ルヴァイン様はおそらく私がこのままこの国から出て二度と戻らないつもりなのを何となく察したのだろう。私が出現させた森へと続く精霊の回廊との間に立ち塞がった。ゲームの攻略対象の中でも熱狂的なファンが多かった騎士ルヴァインらしいわね。
「今の私にただの人が触れれば死にますよ。どきなさい。」
私はそれだけ言って立ち止まらずに扉の前のルヴァイン様に近づいた。
あと一歩で触れるところまで近づいても退く様子がないのを見て心が空っぽになっていくのを感じた。
「私を捨てたのは貴方達でしょう?要らないやつが勝手に消えるんだからそっちにしてみれば願ったり叶ったりでしょ?」
私はそう言って空っぽの心でにっこり微笑んでそう言ってやる。
「あの日。私に冤罪ふっかけて処刑しようとしてたそこの王子を誰も止めようともしなかったのを私が覚えてないとでも?ルヴァイン、貴方大した証拠もなしに喚くそこの王子の指示に何も言わずに従ってたでしょう?」
あの日私を牢に入れたのはルヴァインだ。
「そもそも、いくら隣国の王子だろうとこの国であんなふうに好き勝手できる法なんてどこにもなかったのに。ルーナ…いえ、ここはあえて
そもそも私が飲んでれば効かない毒だったのだ。
「ね、姉さ「貴方達は、今さらこの私になんの用?」」
何かを言いかけたルーナの言葉を遮り、部屋にいる人たちを見渡す。
空っぽになったはずの冷えきった心がなぜかきしんだ気がした。
「もういいわ。精霊さん達、こっちにもうひとつ回廊を繋げて。お礼のお菓子を作りに帰りましょう?」
『ティナ元気ない』
『人間嘘つきティナ元気なくなった』
『ティナ元気ない、人間達のせい?』
『人間殺す?』
『賛成!』
『賛成!』
『どうする?』
『たつまき?』
『じしん?』
『ひでり?』
『こうずい?』
『なんでもできる!』
『お菓子たくさん!』
『クッキーたくさん!』
『ケーキたくさん!』
「そんなめんどうな事しなくていいわ。それより人間がいなくなると私がお菓子作れなくなるけどいいの?」
私がそういうと精霊達は慌てだした。
『だめー!』
『いやー!』
『殺すのやめるー』
『やめるー』
『お菓子たくさん!』
「それなら早く帰りましょうか。つなげる先はとりあえず森の入り口でいいわ。」
『わかったー』
『つなげたー』
『お菓子ー』
『わーい』
新たに出現した精霊の回廊に入っていく私を止める人間はもう誰もいなかった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
翼は自由に消せますが、翼を消している間はその翼にたまっている力が全身から溢れだして神様みたいに全身が光ります。
翼は邪魔だと主人公は思ってますが、消したら消したでうっとおしくてなくても邪魔なのは変わらないとめんどうに思っている感じです。
そしてクリスティーナが森に帰るのに使った回廊ですが閉じずにそのままになってます。理由はのちのち…かけるといいなぁ。
次話は激怒しているソレイユ視点になるかと思います。
毎日投稿がいつまで続けられるかはわかりませんがもしできていれば明日のお昼くらいにまたお会いできると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます