5. 目覚めと拒絶
体調を崩しここ1週間ほど熱が引かず寝込んでいるおかげで時間がとれましたので1話更新します…
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―ルヴァイン達が城に帰りついて1週間―
【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区6番地2-3(クレスウェル侯爵邸庭園隅)】
精霊の森から帰って働き詰めだったルヴァインは部下達に「下が休めないから休め!」と半ば無理やり休みをとらされてしまい昨日の昼過ぎに騎士団宿舎から追い出された。
休めと追い出された所で仲のいい友人達は皆仕事の為行く宛てもなく手土産を買い久しぶりに実家に帰った。
朝食後暫くは父の仕事を手伝っていたのだが集中出来ずにミスを連発し「………元々休めと言われたのだろう?こんな状態では居ない方がマシだ。もういいから街でもぶらぶらしてこい。」と父からも追い出されてしまった。
だが街に行く気分にもなれず暇を持て余し結局庭の隅で剣の素振りをしていた。
何かをしていないと色々と思い出し、どうしても考えずには居られない。それで何かしようと素振りをすることにしたのだ。
だが結局剣の素振りでは逆効果だった様で、彼女に触ることが出来なかった事や森での精霊達の彼女への行動について考えていた。
あの後精霊達に運ばれるクリスティーナとそれに同行するルヴァイン達が森の入口に戻り、我が国の国境にある街を過ぎ、国の端から数日かけて王都にあるお城まで戻る間クリスティーナは1度も目覚めなかった。
プラチナブロンドに輝く長く綺麗でふわふわな髪は誰も触れる事が出来ずに手入れも出来ていないはずなのに森で最初に会った時のまま、衣服もいつも清潔に保たれ、気づくとたまに着替えさせられていて服装が変わっていた。
顔色はいいとは言えなかったが何日も眠り続けている割には良かったんじゃないかと思う。
精霊の森を出てからは精霊達が見えなくなったので予測でしかないが精霊達が彼女に魔法を使っているんだろう。
この城に着いてすぐに以前と同じ彼女の私室に(おそらく精霊達が)運んできり誰も会えていないのでここ数日の様子は分からないが今もおそらく彼女は精霊に守られて眠り続けている。
誰も部屋に近づけないのがその証拠だ。
彼女の眠る部屋に近づこうとすると精霊達の声がした後に外へ飛ばされる。
この現象が精霊達の結界の効果によるものだという事は直ぐに分かった。
無理やり連れてきた自覚はあるのでそれだけで済んだことはむしろ良かったとほっとしている。
まぁ、本当にダメなら王都に入る前に精霊達に止められていた気がするのでそうされなかった時点で「城に連れてきた事をダメとは思っていないのでは?」と薄々思っているがいい方に考えすぎだろうか。
今は結界の効果範囲のギリギリ外の彼女の私室前の廊下で警備を置き何かあれば知らせろと伝えてはいる。
が、しかし。
仮に彼女が目覚めたとして結界の外の我々に精霊達や目覚めた彼女が教えてくれるかは分からない。
元々無理やり連れていているのでそのまま姿を消されてもおかしくないし止める権利も俺にはない。
この城に彼女を連れて帰ってすぐ帰還の報告した時に陛下は精霊達と話していたから何か知ってるのかもしれないがクリスティーナ様が亡くなったあの事件以来俺は陛下と仕事での必要最低限以外の会話を許されていないので聞くことは出来ない。
「坊っちゃま休憩中失礼致します、部下の方から連絡が入っております。火急の件で城にすぐ戻って欲しいとの事です。」
雑念たっぷりで素振りをしていた俺に執事の声が聞こえた。
火急の件…もしかしたら彼女が目覚めたのかもしれない。
「わかった。すぐに行く。」
俺ははやる気持ちを抑えて城に向かった。
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【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区1番地1-5(青薔薇宮1階)】
ルヴァインが城に戻ると予想通り彼女が目覚めていた。
部屋には既に陛下やクリスティーナの兄であるファウスト、彼女の元専属侍女のアンネ等々、近くにいてすぐに来れる彼女の身内が集まっていた。
そしてクリスティーナはそんな人達を無表情でただ見ていた。
彼女からは嬉しさや懐かしさなどの暖かい感情は一切感じられずどちらかと言うと、敵に対して警戒して観察しているそんな冷たい視線だった。
以前のクリスティーナは何がそんなに楽しいのだろうと言いたくなるくらい常にニッコリと微笑んでいたのに今の彼女からはその笑顔は欠片も感じられない。
そんな彼女の変化に戸惑い誰も話しかけられない中、クリスティーナが真っ先に口を開いた。
「我に力を与えよ"
早口で唱えられたそれは今まで誰も聞いた事のない詠唱と呪文名で、そして簡略化されているもののやはり森での浄化洗浄魔法と変わらない与えよという部分。
以前の彼女は、一般的な詠唱であるお恵みたまえ等の普通の詠唱だった。
皆が「一体彼女に何があったのだろう」と不思議に思いつつもなにも聞けずにいる中、彼女の兄であるファウストが口を開こうとしたその時―。
部屋の温度が真冬並みに下がったと錯覚しそうな、冷ややかな声で部屋にいる全員に向かってクリスティーナが言った。
「これで
誘拐犯という言葉にトドメを刺され、全員がクリスティーナの敵意を理解し、部屋の空気が凍りついた。
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次も修正が終わり次第投稿致します。
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