15話 転移の先には

 転移の先には




「う、う~ん。ここは? 研究所っぽいけど」


転移は無事成功したみたい。でもここは、何やら見覚えがあるような無いような? そこに、一人の少女が現れた。


「……君だね? 紫波が言っていた、義手が欲しい子は。あたしは文、宜しくね」


なるほど、連絡はしてくれていたんだね。なら、もしかしてこの人は、


「ええ、そうよ、私は式。宜しくね。あなたもしかして、紀光かしら?」


「……うん、そうだよ。今から義手の作成に着手するから、少し待っててね」


そう告げると、奥の方の部屋に引っ込んでしまった。待っとけばいいのかしら? そう思って、近くの椅子に腰を掛け、周りを見渡すと、周りの皆がケガしていることと、二人ほど此方を睨んでいることが判った。


「な、なんで睨んでいるのよ」


「あんたたちが来たから、私たちの船は襲われたんだ。どうしてくれるのよ」


「そうだそうだ! お前らが連れてきたんだろ」


皆がどよめいて、こちらに疑いの目を向けてくる。ここは言い返しておかないと、気が済まないわ。


「連れてきてないわよ! 実際あいつらが何処の軍かなんて私には分かって無いわよ」


「本当はわかっているくせに! なら教えてあげるわ、アレは、ゴトの軍勢! あなたたちの親玉でしょ!」


「違うわよ! 私たちもあいつと敵対しているもの!」


「そんなの言葉ではいくらでも偽れるわよね」


あ、これ話聞いてもらえないわね。なら逃げる一択なんだけど、それだと義手がもらえないからなぁ。けど、命には代えられないし、


「行こう、皐月」


「うん、解ったよ」


二人で外に出ようとドアというドアを開けて、出口を探すが、


「……出口は無いよ。ここ地下だから窓もないし、ここからは出れないよ」


「どうなっているのよ! ってあれ? 義手を作ってくれるって言ってた、紀光の人。でも出られないって、どういう事?」


「……ここは、ショートカット使わないと、出れられないんだよ。その紙は私が持っているから、私の許可がないと出れないよ」


「じゃあ今すぐ貸して」


「……駄目だよ。紫波が義手を作ってあげてって言ってたから、それを作って装着してもらうまで出してあげれないよ」


「じゃあ急いでよ。あの人たちと一緒にいると、喧嘩になりそうなのよ」


「……確かにね、けど今出すわけにはいかないんだよ」


そう言うと、彼女はみんながいる部屋に行き、


「じゃあ、怪我した子たちは、治療してあげるから、列に並んでね。って一人増えている?」


「こ、こんばんは、あ、あた、あたしは、赤井 雛。貴女が、こ、ここの紀光さんですか?」


「……そうだよ。今から治療するから、少し待ってね」


「う、うんけどあたしは大丈夫」


「雛ちゃん! あの人たちが、私たちの敵よ!」


私と皐月を指さして、一人が言う。


「敵対した覚えはないわよ」


「ふ、二人とも、悪いけど、あたしと戦闘シュミュレーターで戦って」


「……それは許可できないよ。皐月はともかく、式の方は、義手を作らなくてはだからね」


「な、なら、皐月。悪いけど戦闘シュミュレターに来て」


「皐月、乗る必要ないわよ」


乗る必要なんてない。治療が終わるまでの待ち時間だ。だから、戦う必要なんて、


「うん分かった。戦うよ」


「へ? 皐月」


「大丈夫、戦闘シュミュレーターだよ、死ぬことは無いよそれに」


周りを見渡す、皐月、言いたい事は分かるけど、


「戦って黙らせたほうが良いよ」


根本的解決にならない。でも、黙らせれるならいいかとも思う。


「分かったわ。任せるわね」


「任せといて」


そう言うと、二人は機工掌に載せて、目をつぶった。


「「機工同期、仮想戦闘開始!」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る