第15話「屁」
さすがに20時間を超える長時間配信をしたせいか、翌日、天日子の配信は無かった。ま、流石に休むよね。だって本業は声優だもん。それでもたった一日配信が無いだけでどうしてこんなに寂しいのだろう。天日子の存在を知る前もいろんな配信者をそれなりに見てきたつもりだけど、俺には総じて「自己顕示欲が強いただのシロウト」に思えた。とにかく俺は視聴者に媚びる奴が嫌いだ。お決まりの「はいどーも!」とか「よろしかったらチャンネル登録お願いしまーす!」という定型文を聞くだけでうんざりしてブラウザを閉じた。「みんな愛してる」と繰り返す女配信者に対して「嘘つくな」とコメントして場を荒らしたこともあった。なんでこんな奴らが年収何億も稼いでるのか意味がわからなかった。俺にとってユーチューバーは嫌悪であり嫉妬の対象だった。そんな中、俺は天日子を知った。なぜ天日子に辿り着けたのか今でも不思議なのだが、たまたまオススメされてた動画を見て一発で好きになった。天日子はその動画の中で屁をしたのだ。配信中に「あ、屁が出た。すまん!」と言って謝ったのだ。女性声優の屁を聴いたのは初めてだったので一瞬動揺したが、その潔さに俺は惚れてしまった。「あ、なんかこいつ信用できる」と思ってしまったのだ。そこからは過去配信を全て見返して、天日子が本当に面白い女だと確信した。天日子は屁だけではなくてどんな時も面白することができるエンターテイナーだった。そんなこんなで俺は天日子の虜になり日常が天日子色に染まってしまった。もう他の配信者とかどうでもいい。天日子が今日配信するのか否か、それだけが問題だ。
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