第13話「朝」
「はっ!!!」
なんだ、夢か…。時刻は午前6時55分。外はすっかり明るくなっていた。そうだ。昨夜のおやすみのキスの部分をもう一度聴き直そう。あれは良かった。mp3で録音してiPhoneに入れて何度も聴けるようにしよう。えっと再生時間は確か10時間20分あたり…え?
「マジかよ」
天日子はまだ生配信を続けていた。孤軍奮闘でラスボスに挑んでいた。おいおい。お前はどんだけ配信モンスターなんだよ。ま、そんな所に惚れたのだが。
「まだやってたのかよ。おはよう」
天日子は画面に集中していて俺のコメントには気付かない。というかこの時間帯なのにコメントが滝のように流れている。え?視聴者数8万人!?いつもの10倍やん。朝7時だぞ。何があった?
「いける!いけるぞ!」
「落ち着け天日子!」
「焦るな!回復しろ!」
生配信の醍醐味は一体感だ。強大な敵に挑む配信者を皆で応援するあの高揚感。アーカイブでは決して味わうことの出来ない熱が生配信にはある。取り敢えず尿意がヤバいのでケータイ片手にトイレに行く。俺がじょぼじょぼ音を立ててる最中も天日子は戦っている。
「ああああああああ」
「惜しい」
「どんまい」
わかるぞ天日子。俺もあの下段攻撃にビビって後ろに引いて何度も殺られたよ。でもあそこは勇気の前ステップが正解なんだ。踏み込むことが逆に安全だということに気付けないとこのラスボスには勝てない。そんなことを考えながら歯をシャカシャカ磨いた。
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