ミロス公爵の独白 〜君の愛こそが本物だとやっと気づいた〜

早乙女 潤

ミロス公爵の日記

統一歴14年7月18日 1ページ目



 オレリアと婚約を解消してから30年が経った。46歳。随分と年月が過ぎてしまったものだ。


 私は今になって君が私のことを本気で愛してくれていたことを知ったよ。君にすれば、何を今更と思うだろうね。本当にそうだ。気づくのが遅すぎた。

 

 最近、君との思い出が脳裏に過ぎることが増えた。君はよく私に『あなたは人の上に立つようになるのよ。だから些細なことにも気を配らなければいけないわ』と言っていたね。当時の私は、口煩くて私より優秀だった君を疎ましく思っていた。私の何がわかる!といつも苛々していたよ。言い訳になってしまうが、君はあまりにも正しすぎた。矮小の身で幼い私には君の言葉を受け留めきれなかったのだ。そこは理解してほしい。


 私たちが王立学園に通うようになっても君への疎ましく思う私の心は変わらなかった。そして、その学園で私はあの女と出会ってしまった。アリスのことだ。私はあの女の甘い言葉に釣られてしまったのだ。今思えば、あんな中身も無いような軽々しい言葉で私の心が救われたかと思うと当時の私の程度の低さに驚く。恥いるばかりだ。

 

 ただの言い訳に聞こえてしまうかもしれないが、私は公爵家次期当主として厳しく教育されていた。親から褒められたこともなかったし、君と比べられて怒られる日々だった。そんな状況に私は誰にも愛されていないと思っていた。だから、当時の私にとってあの女の吐く言葉はまさに砂漠にあるオアシスのようなものだったのだ。

 

 だが、今になってようやく君の言葉が愛に溢れるものだと気づいたよ。私を愛してくれてありがとう。だけど、私はそれを仇で返してしまった。悔いても悔いてももうどうしようもない。全ては過ぎ去ったことだ。いくらお金を積もうと神に願おうと叶わぬこと。それに君は先日流行病で亡くなってしまったから、謝ることすらできない。私はどうすればいいんだ!!と叫びたい。しかし、それは私の自業自得だ。本当に申し訳ない。

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