第17話 ブールス・R・ブライアント
キリュウは目を覚ますとまた見知らぬ天井が目に入った事に気がついた。
あたりを見渡すとそこはどこかの一室のようでどこかジャズでも聞こえてきそうな雰囲気のインテリアで統一された部屋にいることが気がついた。
窓の外を見ると、煌びやかに光る摩天楼が見えていた。多分、あの街はニューアムステルで間違いはないだろと確信できた。
「起きた?よかった...」
そう声が聞こえて振り向くとメイド服姿のオレンジ髪の少女....
自分が助けたハルカが安堵した様子でホッとしているのが見えていた。
「無事だったんだ...よかった」
キリュウはそういうとホッと胸を撫で下ろすとハルカが話をしてくれた。
「あの時にちょうど消防隊が用意してたクッションの上に落ちたから大丈夫だったの。
でも、キリュウさんは目覚めないで...
そのままここに連れてきたのよ」
「ここは?」
「ブライアント邸。それで、見て見て...」
ハルカは嬉しそうにそう言ってひらひらとフリルを動かしてしてメイド服をキリュウに見せるようした。
キリュウはそのメイド服を見てあることを思い出した。
ブライアント家のメイド長であるアンと同じものだったからだ。
「家が燃えちゃって、ミレーヌさんがブライアント様に頼んで住む家を貸してもらえるようになったの。
それで、私はアンジェラ様にお誘いを受けて働かさせてもらってるの」
キリュウはそれを聞いてふと中学生ぐらいの少女がメイド服を嬉しそうに着ているのをみてこう言った。
「なるほど。かわいいじゃん、似合ってるよ」
キリュウがそういうとハルカは嬉しそうな顔を一瞬見せたあと顔を隠すように背中を向けてこう言った。
「べ、べべべべ別にキリュウに見せびらかしたかったわけじゃないんだから」
どうやら、喜んでくれたようだった。
キリュウはベッドから起きてスリッパを履いてこう言った。
「ブライアントさんに挨拶に行かないと...今、会えそうとかわかる?
お金持ちってことは忙しいのかなとか思って...」
「え、ブライアント様なら...今、書斎にいると思うよ。行く?
でも、先に髭とか身なりを整えた方がいいかも...」
そう言葉を聞いて、
顔を触って髭が生えてることに気がついた。
「あ、そうだよな....」
キリュウがそういうとハルカニコッと笑みを浮かべてこう言った。
「そりゃ、2週間近く目覚めてなかったんだから仕方がないよ」
ハルカのその言葉を聞いてふとあることに気がついた、もしかして....
「もしかして、2週間ずっと看病してくれてたの?」
ハルカはうんと頷いてこう言った。
「だって、命の恩人だもん。世話ぐらいさせてよね」
ハルカはそう言ってどこか胸を張って誇らしげに言っているのを見て、あの明るい母であるフィオの雰囲気が見えた気がした。
ふと、ほとんど初対面なのに違和感がなく接してられるのは彼女自身の明るさがあるのかなという気がして来た。
「じゃあ、準備できたら教えてね。着替えとかはクローゼットの中にミレーヌさんが用意してくれてるから」
ハルカはそうウィンクをしてから部屋を後にして行った。
キリュウはベッドから起き上がり、身体が少しばかり重いことに気がついた。
「そりゃ、2週間も寝てたならこうなるよな...」
少しばかりフラフラする足取りでシャワー室と思われる場所に入った。
鏡を見ると無精髭が生えて、髪の毛もボサボサになった自分の姿があった。
「これで女の子と喋ってたのもなんか嫌だな...
また男子高校生のシャワーシーンか...映えるのか?ってこんなメタいことは言わなくていいか...」
キリュウはそう呟くと服を脱いでシャワー室に入った。
身なりを整えて、船の時と同じようにまたミレーヌが用意してくれたスーツを身に纏ってキリュウが部屋を出るとそこには、ハルカが待っていてくれた。
綺麗にしたキリュウを見て彼女はどこか見惚れるような仕草を一瞬見せた後、こう言った。
「じゃあ、案内するね。ブライアント様もお待ちなので」
「ありがとう」
キリュウはそう答えるとハルカは先導するように前を歩き始めた。
キリュウは建物の内装を見てどこか、大きな洋館なんだなと感じられた。
多分、建物は3階建てのロの字型になっていて中には大きな木が一本植えられていて、テーブルと椅子が置いてるのが目に見た。
キリュウは今3階を歩いていることも中庭を見ていて感じられた。
反対側の廊下では、メイド服姿のアンが何かを運んでいるのも目に入って来た。
窓から空を見えあげると夜だったが街の明かりで外が明るいせいか星は見えにくい感じだった。
どこか大人のカッコいいを体現したようなムード漂う屋敷を進んでいくとこの屋敷の主がきっとこう言う雰囲気を漂わせる人なんだろうなと想像できた。
ハルカはある部屋の前に止まると扉をノックした。
すると部屋の奥から一言はいと返事をする男性の声が聞こえて来た。
「ブライアント様。キリュウが来られました。
じゃあ、行きましょ」
ハルカはそういう時、目を合わして頷いてきたのでキリュウも少しばかり緊張していたことに気がつきそれを和らげるように深呼吸をして一緒に部屋の中の入っていった。
部屋の中では円卓の奥の席に座る黒いスーツ姿のダンディな雰囲気を出す30代中盤ぐらいの男性が何か本を読んでいるのが目に入った。
服がどことなく身体にフィットしていて彼が筋肉質でかなり鍛えている人だと言うのはわかった。
短い黒髪で鋭い青い目がキリュウを捉えたのでは思わずキリュウはドキッとしたが、彼はそのあと表情を変えて微笑みを見せ、本を閉じてこう言った。
「やぁ、はじめましてだな。調子は大丈夫かい?」
「え、まぁ...大丈夫です...」
思わず鋭いからから、どこか明るい空気に変わったのでキリュウは返事に少し戸惑った。
紳士はキリュウの方に近づいて行って握手を求めて右手を伸ばしてきた。
「俺はこのマンションの当主、ニューアムステルの騎士。ブルース・R・ブライアントだ」
キリュウはそれを聞くと手を伸ばす前にお辞儀をして挨拶をした。
「タチバナ・キリュウです。あの...ありがとうございました」
なんて言うべきかを迷ったが咄嗟にそう言葉が出た。ただ、感謝を伝えないといけない気がしたからってのがあったからだ。
ブルースは、その言葉を聞いてこう言った。
「気にするな。恩人の友人を救うのは造作もないことさ」
キリュウはそれを聞くとどこか、
凛々しく人を助けることにどこか優しさを感じる目をしてるブルースを見て彼が差し出した手を握り握手を交わした。
どこかこの優しさは、強さに裏付けされた熱い心があるようにも感じられた。
それがどこか兄や父と同じようなだなとキリュウは感じられた。
そして優しいその声にはどこか聞き覚えがあるようにも感じられた。
ブルースは握手を終えると、キリュウを自分が座ってた横の席に座らせた。
「キリュウ君には、色々聞きたいことがある。
さっきまで寝てたから、ちょっとお付き合い願おうかな。
ハルカはもう上がっていいぞ。あとは先輩のアンに任せていいから」
ブルースはそう言って手を挙げると、
ハルカはハッとして部屋を後にして行った。
ハルカが出て行った荷を見計らい、
ブルースはコップを2人用意してそれに水を注いだ。
「早速だが、キリュウ君は異世界人で帝国軍の差金ではないんだよな?」
「え?」
いきなりそう質問されたので、驚いたその瞬間だった。
ブルースの目つきが変わり、威圧感を発する武人の目という感じの表情を見せてきた。
「いえいえ、違いますよ。俺帝国軍に追われて、ミレーヌさんの手引きでニューアムステルに来たんで...」
ブルースはそれを聞くなり、表情をひとつも変えずにこう言った。
「ミレーヌか...なるほどな」
そして、ため息をついた後表情を和らげて、出していて殺気を仕舞い込んでこう言った。
「怖がらせてすまない、キリュウ君。
話題を変えよう。君はあの怪人バーニンを撃退して赤ん坊と女の子を救った英雄として一躍有名人になってるのは知らないよな?」
ブルースはそういうとコップをキリュウの前に置いて、部屋の片隅に置いてあった新聞をキリュウに手渡した。
紙面には自分は必死な表情をしながら、ハルカを背負い赤ん坊を抱き抱えながら燃え盛るマンションから身を乗り出そうとしている写真だった...
その姿はどこか憧れていた兄と似ている気がしていた。
「これが俺?」
ふとそう、自分が全く何もできないとばかり思っていたこと思い出して思わずその言葉が出てきたのだった。
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