第14話 ジンボウ・ファミリー
フィオは同じオレンジ色の髪をした4人の子供達を一人一人ハグをして頭を撫でた。
そして、最後にナデナデされた三つ編みの子供はグループでは一番年下そうな少女がキリュウが乗っている車に向かって元気な声で声をかけてくれた。
「こんにちは!」
キリュウは思わず、手をあげてニコッと笑みを見せた。
横に座るミレーヌが窓からこう少女に向かって声をかけた。
「あら、ユキちゃんね。大きくなったわね」
そう言ったあとミレーヌは子供達の方に向かうために車を降りていった。
キリュウは車を歩道沿いに駐車させて車から降りた。
後ろをふと見るとアンはぐっすりと寝ていたので彼女は起こさないでいこうと感じた。
フィオは車から降りてきたキリュウを見てどこか子供達を紹介したそうな顔をしていたのを感じ取れた。
「キリュウ君。子供達の紹介をするわ。
この男の子が長男のアキラ・ジュニアよ」
アキラ・ジュニアと紹介されたキャップを被ったオレンジ髪の男の子はどこかさっきあったアキラ先輩にそっくりな感じの10歳かそこらの少年だった。
やんちゃなのか活発なのか鼻には絆創膏が貼られていた。
「アキラさんと同じ名前なんですね!?」
「初めての男の子だったから、父親と同じ名前をつけたくねぇー
アキラは反対したんだけどね」
子アキラはどこか恥ずかしそうにキリュウに近づいて拳を出してきた。
どうやらフィスト・バンプをしたいようでキリュウそれに答えて拳をポンとつけてこう言った。
「よろしく」
ニコッとキリュウは見せると子アキラはそそくさとフィオの方に戻って行った。
「でこの子が、次女のナツミね」
ミレーヌは物静かそうなオレンジ色のロングヘアの少女の両方を掴んでそう紹介した。
ナツミはニコッと笑みを見せてお辞儀をして
「こんにちは」
と声をかけてきてくれたのでキリュウも会釈をして「こんにちは」と声をかけた。
母親と違ってどこか落ち着いた感じがあるように感じられたが、それを言ったら何かフィオに言われそうだったのでそれは飲み込んで口には出さないでいた。
そして、ナツミの影に隠れている大人しそうな大きな本を持っている男の子をフィオがポンポンと背中を押して前に出させてこう言った。
「で、次男のナツキね。この子シャイだから。
でもすごいのよ、魔導書好きみたいでちょっとだけ魔法が使えたりできるのよ」
そうフィオは紹介するとナツキはキリュウをじっと見つめた後、そそっと姉のナツミの後ろに隠れて行った。
キリュウはそれを見てどこかふと、小さい頃の自分と重なったことを思い出していた。
人見知りでいっつも兄貴の背中に隠れてはあまり知らない人とは関わらないようにしていたことがふと頭に浮かんだのだった。
キリュウ自身はどこか他人に自分を見せるのが恥ずかしかった思いがあったことをふと思い出す。
それと同時に光り輝く兄と比べた時にどこか劣るのを感じて目立つのが嫌だと少なからず思っていたようにも感じられた。
そして、最後にミレーヌがナデナデしている一番小さなオレンジ色のショートヘアの元気な女の子をフィオが手招きして呼ぶと、
ニコニコとしながらミレーヌのところから離れて行って、フィオのところへ駆け寄ってきた。
その少女が離れて行ったあとどこかミレーヌは少しばかり寂しそうな顔をしていたようにも感じられた。
「で、この子が三女のユキね」
「よろしくお願いしましゅ!!」
きっと小学校に入る手前ぐらいの年齢をしているユキはそう元気よく挨拶してきたので、キリュウは思わずにっこりとして手を振った。
「よろしくね!」
ひとまず、フィオの子供達の紹介を終えたようで4人はキリュウに興味を持ったようで4人とも凝視していたことに気がついた。
「ところで、お兄さんは?」
そう子アキラはどこか生意気な感じでキリュウに話を振ってきた。
「俺はキリュウ。キリュウ・タチバナ。
お父さんと同じ世界からやってきた人だよ」
キリュウはなんていうべきか悩んだが、咄嗟にそうとりあえず名前と父親であるアキラとの共通点を言ってみることにした。
すると次男ナツキがさっきとは違って目をキラキラ輝かせてキリュウのところに駆け寄ってきた。
「じゃあ、じゃあ....シンカンセンとかモノレールとかって乗ったことあるの!?」
どうやらナツキはそういうのが好きなようで、本に挟んであった手書きのイラストをキリュウに嬉しそうに見せてきた。
子供が描いた絵ではあるようだったが、きちんとその絵が新幹線のように流線型の形をした列車であることわかった。
他にも色々、前の世界で見た乗り物らしき物が描かれていた。
「ナツキはそういうのが好きなんだな。もちろん、新幹線にもモノレールにも乗ったことあるよ」
キリュウはそう言って彼と目線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
すると背中にユキが嬉しそうに乗ってきたり、次女のナツミも興味津々そうに近寄ってきてくれた。
ただ、子アキラだけはどこか、気に食わなそうな感じでキリュウを見ていた。
手招きをしたが、子アキラは不機嫌そうに舌打ちをして目線を逸らしてきた。
『なるほど、そう言う時期か....』
キリュウはそう納得すると、
背中に乗ったユキをフィオが抱き抱えて、ついでに目をキラキラさせていたナツキも抱き抱えた。
「さて、今はこのくらいでおしまい。
ママ達を家に案内して」
「「「はーい、ママ〜」」」
そう子アキラ以外の子供達はそう言った。
ミレーヌは何か思い出したかのように周りを見渡してこう言った。
「そういえば、ハルが見当たらないけど」
それに対して答えたのは、子アキラだった。
「ハル姉は、ママが来るからってケーキ焼いてるんだ」
「へぇーそうなの、ありがとう」
ミレーヌがそう言って子アキラの頭を撫でるとどこか照れ臭そうに子アキラ視線を隠していた。
「ませてるな」
キリュウはそう呟きニコッと笑みを浮かべた。
フィオと子供達についていく形でキリュウとミレーヌはマンションの中に入ろうとした瞬間だった。
大きな爆発音のような音が聞こえたのと同時に身体に軽い衝撃波を感じた。
キリュウとミレーヌ以外が驚いて声をあげていた。フィオと子供達は慌てた様子を見せていたが....
ナツキが上を見上げて指を指して言った。
「あ、家から火が出てる!」
それを聞いた、フィオがその黒い煙が出ている部屋を見て慌てて大声で叫んだ。
「ハルカ!」
建物から階段を降ってきたこのアパートに住む住民たちらしき人が雪崩れ込むように降りてきていた。
「大変よ。アキラちゃんたち逃げた方がいいわよ」
そう近所のおばちゃんのような女性が階段から降りてきてそう声を変えて素早く離れていった。
フィオはそれを聞いて、走り出そうとしたがそれを止めるようにミレーヌが手を掴んだ。
その時だった、また別の部屋からも煙が窓から吹き出しているのが目に入った。
瞬く間に火の手は広がっているようだった。
ミレーヌがフィオを見つめてこう言った。
「もうだめよ。逃げましょ....」
フィオはミレーヌ手を振り払おうとするがそれはできずに焦った様子を見せてこう言った。
「だめでも関係ないわ!」
キリュウはその声色から、
フィオが冷静でないのは判断することができた。
そして決意する間もなく、キリュウは近くにあった配管パイプを手を伸ばしてまだ冷静でいられているナツキにこう言った。
「ナツキ!家は何階のどこ!」
「燃えてるところ」
キリュウはそれを聞くなり、うんと頷くなりパイプを猿のように登り始めて、2階のバルコニーの足場に手をかけて懸垂をするようによじ登って2階のバルコニーに入った。
「キリュウ君!」
そう、ミレーヌが呼ぶ声が聞こえたがキリュウ下にいる彼女に向かって親指を立ててウィンクをした。
「ミレーヌさんは非難の誘導をお願いします。俺は...残ってる人を助けます」
キリュウはそういうと上の階を見上げた、バンバンと爆発音が聞こえて炎が出ている部屋から窓ガラスが割れる音が聞こえて
パラパラとガラスの破片が落ちてきていた。
「5階だな」
キリュウはそう確認すると5階のバルコニーにオレンジ色のセミロングヘアの少女が咳き込みながら飛び出してきた。
「ハルカ!」
そうフィオがその少女の名前を呼ぶ声が聞こえて、彼女が探している人物だと確信できた。
キリュウは恐怖よりも先に目の前にいる困っている人を助ける為に、手すりなどを掴みながらよじ登っていった。
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