第183話 一人反省会 〜ライアン王太子視点〜

(ライアン王太子視点)


「「「「「おぉーーーー」」」」」

「凄い!」

「流石はライアン殿下だ!」

「ライアン殿下ぁ〜〜!!!」


 観客の歓声を受け、私は我が国の民に向けて手を振って見せる。


 冷や汗を流しながら……。


 まさか、私の放ったファイアボールで、あんなことが起きるなんて!?


 あまりの驚きに腰を抜かさなかった自分を褒めて欲しい。


 あの爆発を、何の心の準備もなく、至近距離で見せられた私の驚きがわかるか!?


 周囲の者たちのように、私も危うく足を滑らせて泥まみれになるところだった……。


 一人だけ涼しい顔で私の隣に立つサラを、私は睨みつける。


「あのような大魔法を使うのなら、先に教えて欲しかったのだが!?」


 私の予想では、私が放った火球をサラが風で操り、壁の背後に隠れる大将をピンポイントで狙うとか、そういう作戦だと思っていたのだ……。


 口惜しいことに、私と違ってサラは既に“けん”の技術を修得している。


 敵の位置を圏で感じ取り、そこに向かう風の流れを作り出せば、壁の背後に潜む敵にも攻撃が届くのではと、そう考えていた。


 それなのに、こいつは!?


「そのように睨まないで下さい。

 私だって、うまくいくか自信がなかったのです。

 少なくとも、自分一人であの魔法を成功させたことは、まだ一度もありませんから……。

 空気中の酸素濃度の調整だけならまだしも、大気中の水蒸気から水素を取り出して適切な割合で混合させるとか、いくら空気に関する魔法に適性があるからといって、そんなに簡単なものではありません。

 それをアメリアお姉さまは……。

 当たり前のようにやってのけて、おまけに空気圧縮で好きな場所に火種まで作るなんて……。

 お姉さまはご自分が如何に特別な存在か、全く分かっていません!」


(先程の魔法の仕組みか? サンソ? スイソ? 何を言っているのだ??)


 サラの言っていることはさっぱり理解できないが、一つだけ分かったことがある。


 あの魔法をサラに教えたのはアメリアで、彼女もあの魔法を使うことができるということだ……。


 アメリアの魔力量では……いや、いや、そんな常識は無意味だ。


 少なくとも、アメリア関連の魔法については、私の知る常識は役に立たない。


 先の試合のソフィア侯爵しかり、先程のサラの魔法然り……。


『アメリアの機嫌は絶対に損ねるな!』


 父上の言葉がよみがえる。


 いくらディビッド伯父上の娘で、セーバの街の領主とはいえ、国王たる父上が気を遣い過ぎでは? と思っていたが……。


 もしサラが言うように、先程のような魔法を当たり前のように使えるとしたら……?


 一人で王都を落とせるやも……。


 いや、いや、いや、恐い想像を頭から振り払う。


 それより、今は目先のことだ。


 次の決勝の相手は、セーバ・ザパドの合同チーム。


 つまり、全員がアメリアの関係者!?


 今更のように、サラとの会話がよみがえる。



『決勝では、レオさんの相手は私がします。

 私の方はそれで手一杯だと思いますので、後のことはお兄様のお好きになさって下さい』


『……私の方はそれでも構わないが、本当にそれでいいのか?』


『ええ、構いません。どうせ私やお兄様がどう足掻あがこうが、結果に変わりはありませんから』



 散々合同チームは強いと主張しながら、チームの勝利よりも自分の私闘を優先するサラの言動に呆れたものだが……。


 もしかして、サラの言っていたことは事実なのか!?


 本当に、何をしてもこちらに勝ち目は無いと思っているのか?


 そういえば、ユリウスもレオナルド男爵とレジーナという平民のことをひどく警戒していた。


 油断して負けた言い訳に、殊更に相手の実力を大袈裟に言っているとばかり思っていたが……。


 もし、ボストク領でやったという模擬戦が、ユリウスの言っていた通りのものだとしたら……。


 レオナルド男爵やソフィア侯爵だけでなく、あの平民も相当な実力者ということか!?


 サラも、ただの平民に対してレジーナと敬称を使っている。


 いくらセーバの街で世話になったからといって、王族がただの平民を“先生”と呼ぶなどいささか問題ではと思っていたが……。


 サラにそう呼ばせるだけの実力が、彼女にもあるとしたら……。


 たんに頭が良いというだけではないのか?


 あの容姿からして、魔力量は平民の中でもかなり低いはずだ。


 実技訓練でも、彼女の魔法は可もなく不可もなくといった感じで、特に目を引くものではなかった。


 ん? 可もなく不可もなく? 周囲と同じ魔法?


 学院に通う平民の中では明らかに最底辺の魔力量の彼女が?


 おかしいだろう!


 先程の試合。


 目の前で起きた強烈な衝撃。


 あの爆風は、私が敢えて目を背けてきた現実を、白日のもとに晒したらしい。


 どうして今まで信じなかった?


 アメリア関連のことに、常識など通用しないというのに……。


 ユリウスは言っていた。


 一対一の試合では、自分はレオナルド男爵にもレジーナ嬢にも絶対に勝てないと。


 そう言うユリウスと私の模擬戦の戦績はほぼ互角。


 つまり、決勝の相手は、3人揃って化け物ということだ。


 闘技場の補修作業が終われば、決勝が始まる。


 事実はどうあれ、王族2人がいて15対3の試合で無様なところは見せられない。


 それこそ、王家の威信に関わる。


 今更ながらに、サラやユリウスの話をもっと真剣に聞いていればと後悔するが……。

 

 今となっては、全力で立ち向かう以外に方法など無い……。

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