第9話 殿下のプロポーズ(回想)〜アリッサ視点〜
(アリッサ視点)
「アリッサ、私の妻になってもらえないだろうか?」
「……………………はぁ?」
いつも通り? の我が家での夕食の後、ディビッド王太子殿下から出た
今、何て言った?
妻?
何それ? おいしいの?
……あぁ、倭国で食べたお刺身にのってた白いヤツかぁ……って!
いやいや、現実逃避してる場合じゃないわ。
そうではなくて、それって私と結婚したいってこと?
この人、こんなところに居るけど、一応王太子よね? 次期国王よね?
それって、私にこの国の王妃になれって言ってる?
「本気?」
「もちろん本気だ。
真剣に我が
誤解のないように言っておくが、
正妃として我が王宮に迎えたいと望んでいる」
真剣な様子でこちらを見つめる深い紫水晶の瞳を見返し、私ははっきりとした口調で答える。
「お断りします」
「……えっ?」
誤解の余地のない簡潔な返事に、殿下の表情がみるみる変わっていく。
この様子から判断するに、恐らく断られるなどとは思っていなかったのだろう。
そりゃあ、王子様の周りの貴族のご令嬢方は、この
世の女性はみな王子様からの求婚を夢見ているとでも考えていたのだろう。
訳がわからないといった顔をしている。
「誤解のないようにもう一度言います。
ディビッド王太子殿下と結婚して正妃になるなんて、絶対に嫌です!」
いくらなんでもそんな言い方をしたら不敬罪になるって?
この2年近く、頻繁に我が家を訪れる殿下の相手をしてきたのだ。
出会ったばかりの頃の、ただ王太子というだけでビビりまくっていた頃とは違うのだ。
ふっ、あの頃とは違うのだよ!
そして、
「だって、私平民ですよ。
王宮なんかに行ったら、絶対に
学院内だけでも平民の癖に王太子殿下をたらし込んでいるって陰口叩かれているんですよ。
これが王宮で、国中の貴族からって、考えるだけでぞっとします」
「なっ! 誰がそんなことを」
「誰でもいいです。
というか、実際に口に出すか出さないかの違いだけで、大半の貴族はおもしろくないと思いますよ。
殿下は私と結婚すれば、今まで通りにお父さんにも頻繁に会えるとか考えているのかもしれませんけど、絶対にそうは
間違いなく、血の雨が降ります。
私も命は
私は、何があっても王妃になるつもりはありませんから!」
そこまで言うと、殿下も
少しかわいそうな気もするが、これは仕方がない。
私たちももうすぐ学院を卒業するし、そうなればもうお
殿下にも早く現実を知ってもらって、さっさと大人になってもらうしかあるまい。
うん、私は悪くない。
良識的な、大人な対応だったはずだ……。
それからしばらくの間、ディビッド王太子殿下の姿を学院で見かけなくなった。
もちろん家にも来ないし、聞いた話ではずっと学院を休まれているらしい。
ショックでぐれた?
寝込んだ?
そんなことを考えていると、ある日、思い出したように殿下が我が家を再び訪れた。
もう来ないと思ってたんだけど、気持ちの整理がついたのかな。
せっかく訪ねてきた殿下を追い返す訳にもいかず、
「私を
「…………………………はぁ?」
聞けばディビッド王太子殿下、いやディビッド殿下は正式に王位継承権を
王太子の位を弟に譲り、自分は学院卒業後、新たに領地を得て公爵として弟である新国王を支えることとなったという。
「これは決定事項であり、父上も周りの者も了承済みだ」
「それってどういう?」
殿下が言うには、名目上領地を得て管理することになるが、新たな領地は元々王家の
私たちは新たに与えられる王都公爵邸に移り住むことになるが、そこは王宮からも離れていて知らない貴族が訪れてきたりするようなことは一切ない。
自分は毎日王宮に通って新国王の補佐をすることになるが、アリッサや先生には何の義務も制約もないから、毎日屋敷でお茶を飲みながら読書を楽しんだり、自由に魔法の研究をしてくれればいい。
正に3食昼寝つき、
「本気?」
「私なりに、どうすればアリッサが私との結婚に
アリッサの言い分も理解できたしな。
その上でお
「……何て言うか……。こんな無茶、よく国王陛下が納得して下さったわね」
「ダメならアリッサと一緒に国を出ると言ったら、しぶしぶ了承してくれたよ」
「勝手に国を出るとか決めないでほしいんだけど」
「別に私も、本気でアリッサを連れて国を出ようと考えている訳ではない。
無茶な要求を通したければ、より無茶な要求を突きつけて、これに比べればずっとマシだと思わせてやればいい。
ただの
「………………」
「で、それでも私が断ったらどうするつもり?」
「……アリッサを連れてこの国を出る」
やっぱりね。
そう言うと思いました。
ちなみに、これは恐らく本気だ。
駆け引きでも何でもなく、本気で今の地位を捨てて、ただの平民になって他国で私とお父さんと楽しく暮らそうとか考えているに違いない。
私にはわかる!
この人は、非常識なことを
これは、この辺りで
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