第48話哲学者と少女
とある哲学者、世界の真理を探求すべく、今日も歩きながら考える
「善と悪、この二つは共に存在することで世界の均衡を保つのだな」
「人間は考えるとき、自分を基準にしてしか思考できない
それは世界を認識する方法がそもそも限界だということか」
「神がいるとして、悪というものをどう考えているのだろう?」
などなど、思索は尽きない
この哲学者、河原の土手を歩きつつ、考えていた
すると、学校帰りの小学生の女の子が知らぬうちに哲学者の後をついてきた
「おじちゃん、なにぶつぶつ言ってるの?」
少女がそう言うと、哲学者、我に返り、少女を見下ろした
「おお、お嬢ちゃん、なにか用かい?私は今、思索で忙しいのだ」
それを聞くと、少女はぽか~んとして言った
「おじちゃん、シサクってなに?おいしいの?」
哲学者はそれを聞くと、笑ってしまったが、少女には難しい言葉は使えないと思い、
「シサクとはね、いろいろなことを考えることだよ」
と、教えてあげた
少女は、それを聞くとニコッと笑い、言った
「おじちゃん、あんまり考えてばかりだと、頭がぱ~んてなるってママが言ってたよ」
哲学者はそれを聞くと、大笑い、少女にこう言った
「お嬢ちゃん、私は頭がぱ~んとなる寸前にピタッと考えることを止めるから大丈夫」
「ふ~ん、おじちゃん、意外と器用なのね」
「でも、おじちゃん、独りで考えすぎると、変な方向に考えが行くから注意してね」
哲学者はそれを聞くとドキッとしたが、この少女の聡明さに感心した
「おじちゃん、考える基本は対話することだよ、まずは友達見つけないとね」
少女はそういうと、「じゃあね」と言って駆け出した
哲学者は賢明な少女の言葉にしばらく唖然としたが、気を取り直した
「う~ん、今どきの小学生、あなどれぬ」
それからというもの、哲学者は独りで考えることを辞め、
友人と語り合うことで、考えを深めていったのであった
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