第17話 細マッチョ

「な、なんだ!あれ!!」細川が現れた瞬間、プールの外から爆笑が響き渡った。


 少し痩せていた時の水着とは言っていたがまさかここまでとは思わなかった。この水着を着ようとして時間がかかっていたということであろう。


「あはははは!ボンレスハムだぜ!」


「あれは無いな!」


 あまりの罵声に、細川は泣き出しそうな顔になった。その様子をみて、日暮が注意しようとする。


「君達!」「おめえら笑うんじゃねえ!!」その言葉を遮ったのはなぎさの声であった。


「細川さんは、一大決心をして痩せようとしてるんだ!一生懸命頑張る奴を馬鹿にする奴はぶっ飛ばすぞ!」それは、今までHandyman倶楽部で見せた事の無い真面目な顔であった。彼のその言葉で、ギャラリーが一気に静まり返った。


「・・・・・・・逢坂君」細川の頬が少し赤くなった。


「そんな事より、細川さん!始めましょう」なぎさは細川の手を掴むとプールに入り、一緒に準備運動を始めた。


「・・・・・・・」詩織はポカンと口を開けて頬を染め目を少し半開きにしてその様子を眺めていた。


「詩織!詩織!」高原は詩織の体を揺らす。


「えっ!?ああ・・・・・・・、ごめん」どうやら我に返ったようであった。


「詩織は解りやすい性格だよね・・・・・・・・・」高原は呆れた顔をして、詩織を見つめた。


「えっ、なに、どういう事・・・・・・・」詩織には高原の言葉の意味が解らなかった。


「自覚は無しか・・・・・・・・・。まあ、いいわ」高原は両手を上げて、肩を竦めた。


 プールに目を移すと、なぎさと細川が水中ウォーキングを真面目に行っている。


「いやあ、意外となぎさ君って筋肉質でいい体しているな」日暮が前のめりになって、観察している。周りのギャラリーたちは日暮のその体に釘付けであった。


「うーん、細マッチョってやつでござるな」服部が補足する。彼女はプールサイドの手を突くと少し前のめり気味に観察しているようであった。


「へー、服部が珍しく男の子の感想を言うのね・・・・・・・、さては・・・・・・・・」日暮はニヤリと横目で見ながら笑う。


「そ、そんなのでは無いでござるよ・・・・・・・・」そう言い残すと服部は、いつものように煙の如く姿を消した。


「詩織君も服部も、本当に解りやすい性格ね・・・・・・」日暮は徐にプールに飛び込むと華麗なクロールで泳ぎだした。

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