(二)‐8

 三年生になり、級友たちが受験勉強に打ち込む時期になった。この頃には恵美の髪は背中の肩甲骨の辺りまで伸びていた。郁雄も美大の学科試験の勉強と、デッサンの練習にますます励むようになった。学校生活と部活動に加えてこれらをこなすと忙しかった。

 ただ、恵美は違っていた。恵美も、美大の受験をするものだとばかり思っていたが、違うとのことだった。

 三年生になったばかりの四月に、恵美が入院をすることになり、一週間ほど学校を休んだ。何か重大な病気かもしれないと郁雄は心配したが、恵美は「検査するだけだよ」と言うだけだった。心配かけまいとしているのが郁雄にはわかった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る