第9話 VSミナミ&プロト -鋼鉄の刑事参上!
「これも使えない。あとこれも……。うーん、こいつも刀剣系スキルじゃない……」
「……見事にハズレって感じですね。SRは引けてるんですけど」
「ガチャ運悪いなぁ……」
アリュビオンのターミナルのロビーの片隅で、アクロデバイスの画面を眺めながら唸り声をあげているナギサと、画面をのぞき込むソウハの姿があった。
今日はいつも隣にいる友人のシューマは、
「大学が終わった後はバイトの面接に行かなきゃならんから今日はログインできん」
とのことで本日不参加である。
1回100コインで引けるスキルカードガチャ。それを試しに10連ほど引いてみたのだが、思うような結果が得られない。
ナギサの操るソウハの武器は刀剣。
それを活かすためのスキルが中々手に入らない。ナギサは画面に表示されたスキルカード達を見てハァ、と溜め息を吐く。
別にドウルの使用武器は後から変更が可能なのでどんな種類のスキルカードを引いたところで無駄になることはないのだが、刀が好きなのでやはりしばらくは刀で戦いたい。
ANOをプレイしてからまだ日が浅いので他の武器を購入するほどコインに余裕が無いというのもあるのだが。
――パワーエッジはもう持ってる。この“ドリルランサー”とかいうスキルは槍系スキルだから使えない。
この“スピンドル・カリバー”って名前のSRスキルは名前から考えると刀剣系スキルだろうか――、ってなんだ!?“分類:ヨーヨー”って!?ヨーヨー武器なんてあるの!?
クソッ、武器の種類が多すぎる上にカードの種類もやたらと多すぎる……。
刀剣系スキルのSRが1試合に1回しか使えないレベルで再使用に時間がかかる上に、発動に少し溜めが必要な"ザンテツスラッシャー"しか持ってないのはちょっと困るんだが……。
余計なカードは全部売り払ってコインに変換するか……?と苦悩していると。
「フォーラム機能を介して交換出来ないか探してみれば?」
とソウハが言った。
「フォーラム?……ああ、ゲーム内の掲示板ね。そうだね。ちょっと覗いてみよう」
デバイスのメニューから“フォーラム”をタップ。
様々なスレッドの中から交換用スレッドを見つけ、タップ。するとそこには――。
出:サンダースピア
求:600コイン
備考:値下げ交渉無しでお願いします。
出:サンシャイン・アロー
求:銃系SRスキルならなんでも
備考:魔法攻撃対応の物だと嬉しいです。
出:召喚魔法“煉獄竜・アラバスター”
求:1000000コイン
備考:ダブったので出品します。発動のために詠唱が必要ですが一度発動すれば強力なのでおススメです。ですが魔法攻撃値が一定以上無いと発動自体が出来ないようなのでご注意を。
ずらりと並んだ交換希望の表示をナギサは眺める。希望者が出しているカードは名前の欄をタップすると詳細を確認することが出来た。
――へー、こんなにスキルカードの種類ってあるんだなぁ……。なんか眺めてるだけでも楽しいかも。
そう思いながらつらつらと画面を眺める。おっ、刀剣系のRスキルだ。安く出してるから欲しいな。
あっ、この人コインと引き換えに槍系スキル募集してる。早速交換だ。
……ヨーヨー系スキル募集してる人がいる!「全然ガチャから出ないので困っています」……ってことは結構レアなのか。
と、しばらくナギサはスキルカードの交換に時間を費やした。
そして数分後。ナギサのアクロスデバイスにはかなりの量のコインがプラスされ、新たなスキルカードもそこそこ集まっていた。早速手に入れたスキルをメインメニューからソウハにセットする。
「余ったカードもいっぱい売れたし色々交換も出来た!新しいデッキも組めたし早速バトルに行かない?」
「いいですね。ごーごー」
◆
フリーバトルではANOのシステムによって実力がほぼ同じプレイヤーを自動的に選んでくれる。ナギサはバトルフィールド:採掘場跡地に立っていた。
広大なフィールドを囲うように崖となった石壁が広がっており、ジャリッ、と地面の砂を踏む音が辺りに響く。
そして向かい合うように立っていたのは――。
「あれ?確か……ナギサさん?」
「えーと、……ミナミさん?」
それはログイン初日にターミナルで出会ったミナミという少女だった。服装は中央に星形のマークが描かれたシャツに赤いジャケットを羽織った姿になっている。ヒーロー番組の主役が着ていそうな服だ。
久しぶり――というほど大きく日が空いているわけでもないが、数日ぶりの再会に2人は顔を合わせて笑った。
「いっやー、まさか暇潰しにフリーバトルをやったらナギサさんに会えるなんて。これ終わったらフレンド申請いい?」
「こちらこそお願いするよ。あの時はお互い名乗っただけで終わっちゃったからね」
「そうそう、ナギサさんあの後のバトルどうだった?勝てた?」
「…………あー、うん。勝てたよ。結構ギリギリ、ね……。あはは」
勝てたからよかったけど向こうは完全に初心者を装った初心者狩りだったけどね――。というのは黙っておいた。
談笑する2人。だが風に吹かれて地面へと転がる砂利を見て、ようやく自分達がここに立っている意味を思い出した。そうだ、ここには戦いに来たのだった。2人は腰のホルダーから自身のアクロスデバイスを取り出した。
ミナミの物にはライトグリーンの色をしたカバーが取り付けられている。アクロスデバイスもスマホと同じでアクセサリーを付けるなどしてオシャレにできるのか、とナギサは新たな発見。
「さぁ、始めようかナギサさん!」
黒髪を揺らしながらミナミは身体を大きく動かしてアクロスデバイスを正面に構える。動きが一々活発な娘だなぁと思いながらナギサは彼女とは逆におとなしめの動作で自分のデバイスを構えた。
「イグニッション!ソウハ!」
「イグニッション!マスクドポリス・プロト!」
ナギサの身体が光に包まれ、青髪の剣士、ソウハへと変わる。
対するミナミの身体も“プロト”と呼ばれたドウルへとチェンジ。ミナミの身長が伸び、線の細い身体と四肢が鋼鉄の装甲へと変わる。
そして最後に虫の触角のような物を思わせるアンテナの生えたヘルメットが現れ、ブゥン!と赤く大きな瞳が光った。
ナギサは最初「ロボット?」と思ったが、その姿はロボットというよりは――――真紅に輝く鋼鉄の身体、天を衝くイナズマのような鋭いアンテナ、光り輝く真っ赤な目、口元のクラッシャー、風になびくマフラー。
それはまさに“休日の朝に放送されている特撮番組で主役を張っているようなヒーロー”だった。
現れた鋼鉄の装甲の戦士は右の拳をグッと握りしめ、正拳突きのように真正面へと突き出す。口元から発せられた真面目そうな好青年を思わせる声には、機械音声のようなエフェクトがかかっていた。
「――さぁ、実力行使の時間だ。正義を執行する!」
そうそう、子どもの頃に見たヒーローってこんな感じに最初にお決まりの台詞を言うんだよなぁ、とソウハとリンクしたナギサが幼い頃に見たヒーロー番組の記憶を思い出していた。
なるほど、自分達プレイヤーがドウルとリンクして現れるのは“変身”に見えなくもないな。
「――特に無しです!」
『無いなら何も言わなくていいからね?』
こちらも何か言わなければと思ったのか声を張ったソウハにナギサがツッコミを入れる。特に言うことがないことを宣言するヒーローがどこにいるのだ。
リンクした2人の視界の目の前に試合開始を告げる合図と制限時間が記されたウィンドウが表示される。それとぴったりとしたタイミングでソウハが地面を蹴り、駆けた。
「先手必勝、です」
腰の鞘から刀を引き抜き、プロトへと迫る。プロトはその剣による攻撃を鋼鉄の左腕でガードしてみせた。金属音が響く。
ダメージを完全に抑えることが出来なかったものの、ソウハによる一撃を防いだことで反撃のスキが作れた。プロトは空いている右の拳をソウハへと突き出す。
『危ない!横に避けて!』
ナギサの指示と操作によりソウハは右方向へとステップし、何とかその一撃を躱す。だが攻撃の手を休めないとばかりに次はプロトによる左の回し蹴りが迫る。
「ハッ!」
「――ッ!」
これは完全に避けきることはできず、身体の正面に鋼鉄の左回し蹴りがヒット。咄嗟に身体を逸らしたことで直撃は避けることができたが、思わぬダメージを食らってしまった。
『なるほど、武器を持たずに己の肉体のみで戦うスタイルってことか……。ますますヒーローっぽいね。だいぶ昔の』
ナギサは冷静に相手の戦闘スタイルを分析する。対するプロトの身体には武器と呼べるものが全く備わっていなかった。代わりに手足を用いた攻撃の威力が高い。なるほど、そこもヒーローらしいといったところか。
『武器を使って戦うヒーローもカッコいいけど、やっぱり基本は格闘戦だよ。あたしのプロトはそういう風に鍛えられてるからね!』
「そう、この鋼のボディ全てがオレの武器であり、防具だ!……やるぞミナミ!オレ達のスキル、見せてやろう!」
『ああ!“ジェット・ナックル”!』
ミナミによるスキル発動が宣言されると、プロトが一気に速度を増してソウハへと迫った。
<ジェット・ナックル>
レアリティ:R
チャージ時間:小
分類:物理
・自身のスピードを上げ、高速の拳を叩きつける。
“ジェット”というからにはスピードタイプの技だろう、と即座に読んだナギサはミナミの宣言が終わった後すぐに自らもスキルを発動させた。
『“高速化”!頑張って避けて!』
「らじゃーです!」
“高速化”により速度を増したソウハが、高速の正拳突きをステップで回避してみせた。
「何っ!?」
機械の身体を持つプロトとソウハでは通常のスピードに差がある。そんなソウハのスピードが高まれば、反応の速さによってはスキルによる一撃だって回避が可能だ。
そして攻撃が外れたことで生まれたプロトの隙に刀による攻撃。金属の身体をしたプロトから火花が散る。
『……ッ!身軽そうな格好からしてやっぱり素早いね!』
「スピード型の戦士ということか……!」
軽やかな動きでプロトの周囲を駆けまわり攻撃を続けるソウハを、ミナミは自身の視界とプロトの視界を合わせてなんとか読み取り、攻撃を防ぐ。だがどうしても全てを防ぎきることはかなわず、徐々にHPが削られていく。
「っと……。ここまでみたいです」
「ようやく終了か!」
“高速化”による速度上昇のバフが解除されてソウハの動きが元に戻る。今が好機とばかりにプロトが反撃へと移り出た。
「っ……!」
綺麗なフォームから繰り出される突きや蹴りにソウハは翻弄され始める。
彼女の華奢な身体ではプロトの攻撃を防いでも身体に入るダメージを軽減しきれない。
『……来た!ここで新技の出番だ!“マッハ・レイヴ”!』
「早速出番ですね!」
アクティブ化された1枚のスキルカードに触れ、凪紗が新たなスキルを発動させる。トレードで手に入れた新たなスキルだ。新技のお披露目にナギサの心は少し踊った。
「ハッ!…………何ッ!?」
右手による一撃がソウハを捉えたと思いきや、彼女の姿が一瞬で消えたことに驚くプロト。ソウハは“高速化”を使用していた際よりも遥かに素早い動きで加速し、プロトよりも離れた場所へと移動していた。
「せいっ!」
そして遠く離れた位置から、ソウハがまるで弾丸の如き勢いで刀を構えてダッシュ。プロトの身体を切り裂いた。
『プロト!』
プロトの身体から大きく火花が上がる。音速の斬撃攻撃を終えたソウハは地面を削ってその勢いを殺し、無理矢理停止した。
「靴が磨り減るかと思いました」
ふぅ、と一息吐いてからソウハが刀を構え直す。
<マッハ・レイヴ>
レアリティ:SR
チャージ時間:中
分類:物理/斬撃/刀剣
・音速の如きスピードで駆けぬけて斬撃を放つ。
この攻撃が命中しなかった場合、一定時間自身のスピードを10%上昇させる。
スピードに秀でたソウハだ。なんなら速さに特化させた戦い方をしても面白いのでは、と考えたナギサはこのスキルをデッキに組み込んだ。
突然の奇襲やトドメの一撃にも使えるかもしれないし、攻撃が外れた場合でもスピードにバフがかかるのは中々強力だ。これは結構良いカードだな。これからも使っていこう。
「まさに風だな……。こちらも何か手を打たなければ。スピード対決では圧倒的に不利だぞ。どうするミナミ?」
『うーん。手持ちのカードでソウハちゃんに対抗するには……』
ミナミが大きく減少したプロトのHPを眺めながら考える。ジェット・ナックルはチャージ中。今使える残り3枚のうち彼女に有効なのは――。
『よし、これだな』
続けて迫るソウハ。プロトはそれを避けようともせず佇む。
『カウンター狙いか……?でも一気に押し切ろうソウハ!“アイシクル・ブレイド”!』
ソウハの持つ武器の刀身が氷で覆われる。アイシクル・ブレイド。自身の武器に氷属性を付与して切りかかるスキルだ。
プロトの鋼鉄の身体に氷が通じるのかどうかはさておき、魔法を纏った剣で攻撃する技はなんとなくファンタジーっぽいので使ってみたかった。
おお、思っていた通り、ビジュアルがカッコいいぞ……!と氷の刀を構えるソウハを他人称視点で眺めながらナギサは興奮した。
戦闘中でも様々な視点で自分のドウルを眺められるのも一応このゲームの醍醐味であった。
『“鋼鉄化”!』
振り下ろされた氷の刃がプロトの肩口を捉えるが、それはガキィン!という大きな金属音と共に無効化される。
刀身を覆っていた氷が破片となってパラパラと地面へと落ちる。先ほど繰り出された攻撃は全然効いていない様子だった。
「!?」
「肉を切らせず骨を断つ作戦、成功だなミナミ!」
そう言ってプロトは連撃を放ち、それによってソウハのHPが一気に削られていく。
鋼鉄化、ソウハの高速化と同じ法則性で名付けられたそのスキルは自身の防御を一定時間向上させる効果があるのだろう。それを使ってこちらの攻撃をわざと受け、生まれた隙を突く。そして自身へのダメージは最小限に抑える――。
――なるほど、自分の肉を切らせず相手の骨を断つ、か……!
ソウハが攻撃とスピードに優れているのに対して相手のプロトは攻撃と防御に優れたステータスのようだ。
こちらが速さを強化すれば並大抵の相手を翻弄できるように、あちらは防御を強化すれば並大抵の攻撃なら防げるというわけか。
『さぁ、フィニッシュだプロト!トドメは勿論!』
「キック、だろう?いくぞッ!」
『「“エクストーム”――!」』
僅かな溜め動作の後、プロトが地を蹴り空高く跳躍した。ソウハの振り払った刀による一撃はそれにより大きく空振る。
「――あんなに、高く……!」
鋼鉄の身体がまるでバネの様に跳ね、そして空高く舞い上がると、空中で身体を一回転させ――。
『「“インパクト”オオオオオオオォッ!!“」』
<エクストーム・インパクト>
レアリティ:SR
チャージ時間:大
分類:物理
・大空への跳躍は、旋風を纏いし必殺のキックへと変わる。
装備時、相手のHPが自身よりも20%上回っている状態ならば自身の攻撃力と防御力を5%上昇させる。
ミナミとプロトの叫びが重なるとともに、空中で右足を突き出してキックの体勢をとったプロトが勢いよく地面に向かって、空中を滑るようにして発射された。
空高く舞い、一回転してからのキック。まさにヒーローのお手本のような動きだった。“高速化”を発動させて回避しようにも間に合わないとみたナギサは、最後に残されたスキルカードを見つめる。
<キューピッド・キス>
レアリティ:R
チャージ時間:小
分類:特殊
・投げキッスで相手を魅了する。ドウルの見た目が良いとその分成功率がアップするぞ!
『――なんでこんなの入れちゃったかなぁ自分!?』
繰り出された必殺キックが真っ直ぐにソウハの身体を捉え、そのままの勢いでステージ端の岩盤へと向かう。
「かはっ……!!」
勢いよくステージ端の岩盤へと叩きつけられたソウハが呻く。
そしてドオオオオォン!と爆発音が響く。
一気にHPが0になり、ソウハはぱたり、と地面に倒れた。
ナギサの視界に表示される『YOU LOSE』の文字。やれやれ、最後はしてやられたなぁ……と、ナギサは残念に思いながら自身の敗北を受け止めるも、やはり悔しかった。
「対戦に感謝する。こんなに素早い相手と戦うのは初めてだったよ。経験になった。
できればまた戦ってくれ」
プロトがそう言いながら倒れたソウハへと近付き、手を差し伸べる。どうも……と言おうとしながらソウハはその手を掴もうとするが、戦闘が終了したため、両者の身体は光に包まれて消えようとしていた。
『対戦直後にもゆっくり喋る時間欲しいよなぁ……。あっ、ナギサさん!後でアクロスデバイスの“対戦履歴”からあたしのプロフィールに飛んでフレンド申請しといて――』
消えゆくプロトの背後からミナミの顔アイコンが出現し、何やら叫んだ。ナギサも元の場所へと転送されながらなんとかそれを聞き取り、目を瞑った。
◆
「えーっと、対戦履歴から、名前を探して……」
ターミナルのベンチに座り込み、ナギサは対戦終了後にミナミに言われた通りアクロスデバイスを操作する。ソウハは向かいで黙ってそんなナギサの様子を見つめていた。
ミッション中にドウルのHPが0になった場合はアクロデバイスの中で一定時間休むか、回復アイテムを使わない限り体力は回復しないのだが、フリーバトルで敗北した際はHPが0になってもバトルフィールド外に戻れば体力が回復する。
PvP要素がメインとなるこのゲームで一々フリーバトルの後に体力回復を挟まねばならないのは流石にゲームとして欠陥が過ぎるので当然なのだが。
「名前をタップしてプロフィールを開く、と」
対戦履歴に表示された『ミナミ/マスクドポリス・プロト』の名前をタップすると、ミナミのプロフィール画面が表示された。
PLAYER_NAME:ミナミ
ID:MINAMI
DOUL:マスクドポリス・プロト
RANK:F
MESSAGE:
フレンド申請いつでも歓迎です!
特撮番組が好きなので趣味の合う方はお話ししましょう!よろしくお願いします!v
お手本のように丁寧なメッセージ文にナギサは苦笑する。マナーの良いプレイヤーて感じだ。
そういえば自分はプロフィール画面を特に触っていなかったな……。と自分のプロフィールを確認する。
PLAYER_NAME:ナギサ
DOUL:蒼葉
ID:N@gi
RANK:F
MESSAGE:
よろしくお願いします。
「あー、デフォルトのまんまか。そりゃそうだよな……。ここやっぱり変えた方がいいかなぁ?」
「別に“よろしくお願いします”のままでも良いのでは?」
「でもちょっと捻っときたいんだよね。それにデフォルトのままだと初心者感が強いというか……」
「じゃあミナミさんと同じように自分の趣味や好きなことを書いてみれば?“巨乳が好きです!”とか」
「それに設定した後向こうにフレンド申請を送ったら蹴られる自信がある」
プレイヤーの見た目は現実のものが反映されるこのゲームで性癖を暴露したら社会的に死にそうだ。それは勘弁願いたい。
そもそも僕は胸の大きさにそれほど深いこだわりは無い。君の胸を見れば分かるだろう。”巨乳も好きです!”が正しい。……絶対に書かないが。
というか以前シャルディの胸に気をとられたこと、ひょっとして根に持っていらっしゃる……?
「おっ、来た来た」
ターミナルから少し離れた場所に存在する公園でミナミがアクロスデバイスの通知を確認する。公園ではミナミと同じようなプレイヤーが辺りに寝っ転がったり、自身のドウルと談笑したり軽い食事をとっていた。ANOにはこのように戦闘以外でもドウルと触れ合える場所がいくつも存在する。
「さっきの対戦相手か?初のフレンド申請だな」
隣で芝生に座っていたプロトがミナミのデバイスへと視線を移しながら言った。
「うん。……?……ふふっ、なんだそれ」
『フレンド申請を承認しますか?』の表示をタップする前に、そのプロフィール文を見て一瞬ミナミが固まり、そして苦笑した。
PLAYER_NAME:ナギサ
DOUL:蒼葉
RANK:F
MESSAGE:
何を書けばいいのか分からないのでここに書く内容募集中です!
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