アクロステージ NEXAS_ONLINE～彼らは仮想現実の世界で記憶から産まれた相棒と共に戦うようです～

プロローグ

　草原に銃声が響く。

　日本刀のような武器を持ち、西洋の騎士の制服のような衣装を身に纏った女性剣士が銃弾から逃れるように草原を駆けながら、銃弾の主に対しての反撃のチャンスを伺っていた。青いショートの髪が風でふわりと揺れる。

　それに対する銃弾の主は長く美しい銀髪をなびかせており、軍服とドレスを足し合わせたような煌びやかな衣装を着ている。

　右手に握られているのはこれまた派手な装飾が散りばめられた銃だ。剣士を狙い、引き金を引く。

　軽やかな動きで弾丸を避ける剣士。撃ち出された弾丸……紫色に輝く魔力の弾丸は剣士の身体に命中することは無く、空しく虚空を飛んだ。

『“スラッシュシュート”！』

　突然声がした。その声の主は剣士でも銃使いのものでもない。少し高めの若い男性の声だ。

　その声は青い剣士の背後から響いたようだが、この草原にいるのは剣士と銃士の2人だけである。

　先ほどの声が出されたタイミングとほぼ同じタイミングで、剣士が自らの獲物である刀を振るう。振るわれた刀から衝撃波のような物が放たれ、それは真っ直ぐ銃使いへと向かって飛んでいく。

　銃使いはそれをすんでのところで回避するも、思わぬ遠距離からの攻撃により攻撃の手が止まる。そして剣士はその隙を逃がさないとばかりに駆け出した。

　剣士の刀が銃使いへと迫る。だが次の瞬間、銃使いが小さく口角を吊り上げ笑った。

　剣士が刀を振りかぶったその時、右手で銃を構え直していた。まるでこちらが隙を見せて近寄ってきたところを返り討ちにしようと狙っていたかのようだ。

『ハッハァ！甘いわァ！』

　次は銃使いの背後から同じように男性の声がした。こちらはどこか気取った印象を受ける声で、その笑い声は笑っているというよりも目の前の相手を嘲笑っているように聞こえる。

　拳銃の引き金が引かれる。それは剣士の空いた身体を撃ち抜――――

『“バリア”！』

　――かなかった。

　突如剣士の正面に出現した透明な丸い板のような物が銃弾を防ぎ、そして割れる。

「やぁっ！」

　剣士の振り下ろした刀が銃使いへと命中する。銃使いは軽く苦悶の表情を浮かべて後ずさった。

「っ……。甘いのはこちらだったようですわね……」

　銃使いが切られた肩口を抑えながら悔しそうに言う。

　その背後から男性のドット絵のような顔アイコンが出現する。そしてそのアイコンから声が発せられた。

『防御スキルを持っていたか。生意気な……！』

　それに答えるように剣士の背後からも顔アイコンが出現する。

『そろそろそっちも疲れてきたころじゃないか？悪いけどこの勝負は僕が勝つぜ！』

「ナギサ君。“僕が”じゃないですよ」

　剣士が背後を振り向くことなく、先ほどの男性の発言に対して涼し気な声で指摘する。男性はそうだった、ごめん。と小さく謝る。

　――そうだった。僕は一人で戦っているわけではない。

　僕達は共に戦っているのだ。相棒……ドウルと共に！