冬の小鳥

ひとりぼっちで


降り立った駅は


誰もいない


池ノ谷駅(わかれめのえき)


次の列車は


まだ、来ないわ


夜明け前の


冷たい風が吹く


きのうまでは


愛に満ちて


あなたがいれば


それだけで


よかった


なのに、あなたは


もう二度と


このまま


帰らないかも


知れないと


そう、言い残して


あなたは


旅に、出たのね


私、私は


歌を忘れた


冬の小鳥



ひとりぼっちで


線路に、そって


鳴門(うずしおの街)へ


歩いて行く、私


次の列車は


まだ来ない


空は、凍て雲に


おおわれている


春が来たら


二人で暮らそうと


あなたは、私の


背中(せな)を抱きしめた


なのに、あなたは


私に、背中(せな)を向けて


俺が、いれば


じゃまになるからと


そう、言い残して


あなたは


あの部屋を、出ていったわ


私、私は


愛し方を、忘れた


冬の小鳥



やがて


たどりついた


うずしおの街


気がつけば


終着駅


ここから


私は


行くあてもなく


どこへ、行けば


いいの


私、私は


迷子になった


冬の小鳥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る