#20 俺は取り扱い注意

「あぁぁ!! 悠馬助けて! なんで俺あんなことしちゃったんだろ!!」
 



 俺は家に帰るなり、大声をあげて式神に泣きついた。

 …………いや、こういう言い方は俺のプライドに傷がついてしまうからやめよう。

 文字通り詰んでしまった俺は、致し方なく式神に相談したのだ。

 でも目の前の式神は、何とも非情で……
 



『あんなに気をつけようねって話したのに! もう知らないよ! 華音ちゃんだってめっちゃ怖い顔してたよ! 誰のために京汰は今回頑張ったんだよ? 自業自得だよそんなの! 式神とかそういうの、バレちゃいけないんでしょ? パパの言うことまで守れなくってどうすんの京汰ぁ!』
 


「華音ちゃん、やっぱり俺のこと嫌いになっちゃったかな……」


 
真剣に悩み、頭を抱える俺に、悠馬は容赦無くぴしゃりと言い放つ。
 



『……それ、なんか前は好きだった、みたいに聞こえるけど』


「……じゃ、華音ちゃん、もう金輪際俺のこと、アウトオブ眼中かな……」


 
アウトオブ眼中……我ながら、すごい時代の言葉を使ってしまったなと感じた。


 パニクった時に親の口癖が伝染するのは、藤井家の特筆すべき点である。


 
悠馬ははぁーーーーーっ、と盛大なため息をついた。

 式神に盛大なため息をつかれる俺。

 そんな人間は、ガチで救いようがないのかもしれない。


『アウトオブ眼中どころか、アウトオブ世界だと思うよ』


 頭を、ハンマーで、ぐぁーーーーーーん、と殴られた、そんな感じがした。うわぁ、クラクラする……。
 



「あ、アウトオブ、世界…………」


 気づけば
俺は、泣いていた。そんな自分にドン引きするけど、流れる涙は止まらないし、巻き戻して涙腺まで戻ってくれるわけでもない。


 
もう男だからとかそういうの関係なく泣いた。


 女々しいとかそういうの関係なく泣いた。

 
情けないとかそういうの関係なく泣いた。

 
悠馬の前だとかそういうの関係なく泣いた。

 
たかが女のことだとかそういうの関係なく泣いた。
 



 そして悠馬は、非情にも、俺に優しい言葉は1つもかけてくれなかった。俺の第2のママだったんじゃないの?! こういう時こそ出番じゃないの?!

 悠馬が俺に吐いた冷徹な言葉の数々は、以下の通りである。


 
自業自得


 京汰は既にアウトオブ世界


 もう京汰なんて助けてられない


 お手上げだよ

 もう見捨てようかな

 
なんか勝さんの気持ちわかる

 
人間性が底辺の極致だよね

 
勝手にしなさい
 
 



 ……こんな言葉ばかり。

 
まだ16歳の俺は、精神的に不安定でセンチメンタルで、取り扱い注意だということを理解してくれないなんて、


 あぁ、なんて、
 



 なんて酷い…………!

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