15.新入りが覚えてなかった会館の内情
しかし、その一瞬後。
アンニュイに上を仰いでいた先輩が、んん? と首を傾げる。
「おまえが今掃除してたとこ、3-A区画だろ。
そんな危険な実験されてる奴いたか?」
「えっ」
「あそこは反抗的な奴もいないから、こっちも武装する必要ないし。
ほとんど希望通りの生活を整えてんだからそこまで言われる筋合いないと思うんだけど」
「えぇっ?」
自分が思い描いていた内情とはなにやら話の違う情報に、マッピーは片眉を上げる。
「部屋の外側に窓がないのは?」
「3-A区画がそもそも洞窟暮らしで日光嫌いな奴多いから、その対策だよ」
「設置されてるカメラとスピーカーは?」
「カメラの稼働は常時じゃない。
魔族達のの許可もらった上で定刻にならないと稼働してないぞ。
マイク付きのスピーカーは緊急事態発生の時に向こうがヘルプ求める時とか、部屋に毒が充満してたり諸事情あって職員が直接赴けない場合に状況把握と指示出しのために使うんだ」
「個室へ入る度にかざすカードキーだってあるじゃないですか!」
「あれは誰がいつ入退室したか記録してるだけ。
部屋のロックも一応掛けられるけど、今はしてないぞ。
あそこの奴らは暗がりにひそむのが日常だから、そもそも目を光らせるほど部屋から出てこないし。
……自由に出入りできる共通スペースの説明、したよな?」
次第に疑心を含み始めた眼差しに、マッピーは全力で目を反らした。
職員の許可と付き添いがないと連れ出せないものだと思っていたとは、今さら言えない。
しかしその思い込みは察知されたようで、焼却炉の前で出くわした当初とは真逆の視線の動きに、先輩はやれやれと白煙混じりのため息をつく。
「うちのボスの『魔族と仲良しになりたい』信条なめんなよ?
採用されてる人員は、魔族に敵意を持ってないことが最低条件だし、そこは所長が最終面接で直々に見極めてる。
上から魔族の能力のデータ提出を求められてるとはいえ、本人達の同意無しで変な実験やテストなんてやるわけないだろ」
まあ、例外はあるけどな。
小さく付け足された補足に社会の闇をかぎとりつつ、誰に言われたんだよという質問に正直に答える。
「テンタクルです」
「あー……あぁ……」
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