09 ENDmarker.

 いつも彼女がいた場所。


 トラックの端。


 彼女は、昨日が、誕生日だった。


 そして。もう。ここにはいない。


 いつものように準備をして。


 走る。ひたすらに。


 自分が何を求めていたのか。いまになって、分かった。そしてそれは、もう、戻ってこない。


 誰かと愛し合いたかった。


 人の温もりが、心の暖かさが、ほしかった。走っているだけでは、充たれない心の渇きを。走って、拭い去ろうとした。


 彼女は。


 もういない。


 いないとわかっているのに。


 彼女のために走って。そして。いまは。ひとり。


 走る脚が、止まった。


 駆け抜けきれない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る