下−44 タカシ
タカシ。
その生ける物体、どんな世界であろうとも、タカシを蝕むことは出来ない。
その脅威に、唯一干渉できる可能性が、靴であった。
ふーごふごふごふごふごふご、ふんすかふんすかふんすか!!
ぷっっはあーーー!!
まんぞく、、、
いや、ネコの腹でもモフっている音であれば、心地よく聞こえたろう、、
が、相手は靴である。履き古した靴である。
靴は何も応えないが、もし靴が何かコメントを出せるとしたら、なんと言ったであろうか?
くつじょくである、とか?
古代種の中年みたいな事は言わないはずだ、、あ、、でも元の持ち主が中身それ系だから、言うかもな、、
ここんとこ、タカシに仕事はない。
タカシが3ばk,、3人娘と活躍しているときに、今までのタカシのしていた仕事の穴は、魔人が埋めていた。
その魔人が結構使えたので、イサムはもうそいつが担当の方がいいや、と決めてしまっていた。
アラタの仕事も同様だったが、アラタは仕事が無い時は桜のところに居てベタベタしてればいーんだからどーでもよかった。
そうしてタカシは、ようやく嗅ぎまくれる時間を得られたのだった。
3日間、タカシは嗅ぎまくっては寝て、嗅ぎまくっては寝ていた。
水すら飲むことを忘れて!!
ん?
「あ、主様?タカシさん、死にそうですよ?」メフィ
あんのばか、、
「転送、、」とタカシを食堂に呼び出し、椅子に固定させ、とりあえずその口のぬるい茶を流し込み、
焼きたての魚を鼻の下に近づけた、、、
タカシは無意識であるにもかかわらず両手を伸ばし、おもむろに魚を掴んだと思ったら、頭っからばりばり食い始めた。
でも本人の目は虚ろ。
薬物中毒かよ、、いや、靴にのめり込みすぎ、寝食を忘れ、、ゲーマーかよ、、靴もゲームも一緒ダネ♪!!
味噌汁、、めし、、どんどんタカシは食っていく。
くうほどに、すこーしずつ目の色がまともに戻ってくる。
「はぁーーーーっ、、、うまかった!!」タカシ
「おまえ、、仙人じゃねーんだから臭いだけで生きられると思うなよ?」
「え?仙人になれば、靴嗅ぐだけで生きていけるんですか!!!」
いや、いけねーけど、、カスミ食うって知らんのか、、
タカシは向こうの世界で漫画などもそこそこ読んでいた。
ある日、あるコマのあるセリフが、タカシの無意識領域に染み付いた。妙に自分にはまったのだろう。
”モブはどんなに頑張ったってモブ”
もともと頑張るという概念をイマイチ理解できないタカシ。
好きなことは寝食忘れても、、自分では頑張ったとか思わない。嫌いなことをいやいや無理やりやっていくことを頑張るということだと理解し、なぜそんなことしなくちゃならんのか、が理解できないのだ。
学校でも、嫌いな教科はそこそこでいいじゃないか。好きな教科だけ好きなだけやれば。
全て嫌いなら学校行かなければいいだけで。
なので、タカシはこっちの世界に来てからは、かなり楽であった。
イサムに言われることをしていると結構面白い。結果がどうのは気にしないが、毎回何らかしらの結果が出たと褒められる。逃げても引きづって戻される場合もあるが、最後にはなんか楽しくなっている。
タカシは自分の評判とか気にしたことがない。前の世界ではそれが気に食わないといろいろ攻撃されたが、理解できないことは仕方がない。人の評判気にしてどうなるんだろう?
こっちでは皆好きに生きている。悪党は燃やされるが、悪党だから当然だ。悪党が燃やされる世界は正しいと思う。悪党なのに放置される方がおかしい。悪党を悪党だと思わないほうがおかしい。
なので、国一つ燃やした時は、皆でお祭り騒ぎで楽しかった。悪党全てを成敗し、皆それを喜んでいた。アタリマエのことを当たり前だと思い、当たり前に行動されたことを喜ぶ、して喜ぶ。ごく自然なこと。
自分はイサムのように悪党だけを選って燃やすことはできなかったが、ギリギリのところで出来るようになった。魔法発動寸前で可能になった。自分にとっては奇跡に等しいと思うことだが、それも今までのことの集積の結果だろうと思っている。その時は覚えたてのアラタも同じように出来た。
できなくて、ぜんぶ燃やしたとしてもイサムは叱らなかったろう。でもできてしまった。
おとぎ話の、本の世界でしか無かったこと。その主人公みたいなことを、自分らはやってしまっている。できてしまっている。毎回いろいろ呆然とするしかないこと。でも、それで頼る者が居て、頼られて。ホントなのか今でも信じられないくらいだ。
だが、普段でも、やることなすことも、皆笑ってくれて楽しめる。悪意のない笑い、裏のない笑い。楽しい。
モブも、場所が変われば、モブではなくなるんじゃないかな?
「タカシ、巡回行ってきてー。西の国と草履と敗戦国と最後に魔国なー、ちゃんと防衛軍とか王様とか姫とかんとこ顔出してこいよー」
「ういっす」
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