第4話 遊園地でのデート
遊園地は賑やかさをまとって、その場の人々を童心に帰らせていく。その場の空気に身を任せて、軽々とした体でその場を翔ける。すぐ右側には、優しく触れている大切な人がいる。
ジェットコースターは高い位置から急速に落下し上昇するを繰り返す。風の抵抗がどこか気持ち良い。
お化け屋敷の中では、カッコイイ姿を見せようと張り切っていたが、彼女はお化けなど興味がないのか、お化け屋敷の無駄遣いをしていた。
これでも童心に帰ったように心から楽しんでいるのに、隣ではそれ以上の無邪気さを振舞っている。これには勝てない。そう思って微笑んでいた。
ベンチに座ってジュースを飲む。彼女の飲む姿はとても微笑ましかった。
「私ね、遊園地は小二以来なの。久しぶりの遊園地、楽しい」
独り言のように嘆いていた。その瞳はどこか虚しく光っていた。
「毎年のように遊園地に行ってたんだけど、小二の時にさ、パパが私の代わりに轢かれて亡くなったんだ。それからはママが一人でパパの分まで働いたから、遊園地どころじゃなかったんだ。こんな贅沢、できないと思ってたから、すごく嬉しいんだ」
優しく俺の手を強く握る。
温かいのは間違いない。けど、どこか冷たい箇所があるような気がした。
「お金を貯めてお母さんと二人で遊びには行けなかったの?」
「うん。ママね、遊びに行く前に過労で倒れてさ、これ以上養えないからって親戚の家に引き取らせたの。それからはもう遊びに行くことはなかったな」
これ以上過去を掘り下げてしまえば、彼女を深く傷付け、この楽しい空気は消えてしまう。気づかれないように話題を変えなければ。
「そういやさ、次のアトラクションどこにする?」
瞬く間の隙間の後、少し遅れを取り戻すような慌てようで話に合わせていた。それ以降は気持ちを遊園地に委ねて、心を通じ合わせていった。
彼女の握る手はとても冷たく温かいという不思議な感触をしていた。
俺にだけ秘密をさらけ出したのだ。俺にしかしらない真っ裸のソラリの心。気持ちはソラリの方へと思いっきり傾いていった。その気持ちを伝えるように優しく握り返した。
この時間がずっと続けばいいのに。そう思った。
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