第209話チラシ

「え?飯塚さんってGPS発見器持ってるんですか?」


「まあね。アキバは俺の『聖地』だからねー。今はラジオ会館も全然『ラジオ』じゃなくなったけど。まあ、あれはあれでありっちゃありだけどさ。それでもこういうのを頑張って売ってくれてるお店はあの街にはまだほんの少しだけど残ってるんだよ」


「へえー。やっぱり『カメラ』関係も全部そっちで」


「ああ。今は二軒かな。素人が行ってもまず取り扱いに苦戦するだろうね。パソコンのOSもXPやVistaにしか対応してないのも多いし。ウィンドウズ10に対応してきたのも最近だからね」


 そう言いながら宮部の単車をチェックする飯塚。


「飯塚さん。今度その店へ一緒に連れてってください」


「ああ、いいよ。たなりんと三人で行こうよ」


「そうですね」


「おっけ。宮部っちの単車にはそういうのはつけられてないよ」


「え?もう分かったんですか?」


「まあねー♪それじゃあ『藻府藻府』のメンバーのもチェックしよう」


「了解です!それじゃあケツに乗ってください!」


 そして田所に何も言わず置いてけぼり、単車を走らせる宮部とそのケツに乗る飯塚。


「くしゅん!あれ?宮部っちの単車の音…。俺に黙って…。俺…、俺の『役』!」


 そしてもう一度台所で鼻うがいをする田所。




「ビンゴだ!」


 新藤の単車からGPSを発見する飯塚。他のメンバーの単車もすべてチェックするが新藤の単車にだけ取り付けられていた。


「いつの間に…。ちっ」


「まあこういうのは二十四時間見張ってるわけにはいかないからしょうがないよ。ほら、よくあるでしょ?『ばいくせんたー』のチラシが知らない間に勝手に貼られてることとか」


「あ…」


 二ちゃんが思わず声を出す。そしてまとめサイトの知識をメンバーに披露する。


「へえー。そういうのがあんだ。バイク窃盗予告ねえ」


「マッポも動かねえし。クソだよな」


「てか、なんで新藤の単車だけなんだよ」


「そりゃああれだろ。俺と比留間の因縁はあいつらも知ってるし。軍紀からちっと聞いててな」


「な!お前、軍紀と連絡取ってんの?」


「いや。連絡はあいつがうちを抜けてから一度だけ。直で会った。次にあいつと会ったら俺はあいつを殺るぜ」


 そして今の『摸索摸索』、軍紀から聞かされた現状を話す新藤。


「なるほどな…。だんだん話が見えてきたぜ。間宮の野郎がやろうとしてることがな」


 宮部の言葉に新藤も続く。


「ああ。俺の単車にGPSってことはあの日の『検問』もあの二人は俺と比留間のタイマンを見てるだろうな」


「だな」


「そんなGPS、とっととぶっ壊しちまえよ」


 そこで飯塚が言う。


「いや。それはちょっと待ってくれる?」


「え?奴らを泳がすんですか?」


「それもあるけど。それ以上のことだよ。このGPSは使えると思う」


「それ以上?それって何ですか?」


「まあ、GPSを無効化するものもあるし。このGPSはスマホで追跡できるようになってると思うけど。そのスマホに『フェイク』を入れることが出来たら最高なんだけど。まあいろいろと逆手にとる方法はあるってことだよ」


「いいですよ飯塚さん。俺らは『GPS上等』ですし。視界に入ればぶっ飛ばす。それだけです」


「それより『あの動画』すごかったですね!」


 宮部のバズった動画で盛り上がる『藻府藻府』メンバーたち。


「新藤。次は忍や軍紀だ。心配はしてねえが…」


「あ?さっきも言ったろ。軍紀が相手だろうと俺はあいつ殺るぜ」




 世良兄弟が世良兄の事務所で会話を続ける。


「そうなんだねえ。正兄ぃは『肉球会』寄りなんだね」


「まあ、商売のことを考えるとだな」


 そして世良兄を凍らせる一言を世良義経が口にする。


「『蜜気舞鵜須組』の前の親分さん。若林さんだっけ。殺されたんだよね。殺った奴ってまだ見つかってないんだよね」


 世良兄の目が鋭く光る。

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