第16話 従兄弟との再開
お風呂場事件のせいで結奈の顔を見ることができない。
あの後、熱いシャワーを浴びてみたが意味はなかった。すぐ顔を合わせると気まずいので、頭も体も二周洗って時間を稼いでみた。
まぁ、今の状態から無駄だったということがわかる。結奈の姿を見るとさっき見た裸がフラッシュバックしてしまう。
服を着ているはずなのに、結奈の姿が裸に見えてくるという幻覚に襲われてしまう。邪念を頭を振って振り払う。
気まずいまま昼ごはんを食べる。結奈も視線が合うと顔を真っ赤にして俯いてしまう。耳まで真っ赤だ。
その姿がとても可愛いと思ってしまう。
黙々と黙って食べ続けたが沈黙を破って声を出す。
「今日の夕食のことなんだけど……」
「うん」
「親戚の叔父さん達と食事に行くことになったから、今日は大丈夫だ」
「わかった」
「悪いな」
「ううん、気にしないで」
この会話を機に気まずさが少しだけ和らいだので良かった。
◆◆◆◆
夕食の時間になり、叔父さん達と約束した場所へと行く。
待ち合わせをしていたお店にはすでに叔父さん達の姿があった。
「お待たせしてすみません」
「俺たちも今きたところだ。それにしても、久しぶりだな。少しデカくなったか?」
「はい、少しだけ」
叔父さん達に会うのはおよそ一年ぶりくらいだ。俺も成長期なので身長も伸びる。
父さん達が海外に行ってしまったことで一人暮らしをしている俺を気にかけてくれていた。
少し前に連絡をもらい、食事に行く約束をしたのだ。
「悠真君、久しぶりね」
「お久しぶりです」
叔母さんは優しく微笑んだ。
「悠にぃ!」
「ぐふぇっ」
叔母さんに挨拶をしていると、腹部に強い衝撃を受けた。そのせいで変な声が出てしまった。
「悠にぃ、久しぶり」
突進してきたのは今年で中学二年生になる従兄弟の
サラサラの黒髪に幼さが残る顔立ち。華奢な体。俺の身長が平均よりも高いことを考慮しても、光は小柄だ。
どこからどう見ても女子にしか見えないが、男だ。美少女だが、男だ。
ちゃんと付いている。小さい頃に一緒にお風呂に入った時に確認済みだ。
小さい頃から中性的な顔立ちをしていたし、可愛い顔をしていると思っていた。成長すれば、だんだん男っぽくなるだろうと考えていたがそれが間違いだった。
どういう訳だか、どんどん女の子っぽくなっていき、服も可愛らしいものを着ている。流石に制服は女子用のものではないが、私服は完全に女子用のものを着ている。
本人も自分が可愛いということを理解して、それを最大限生かした服を着ている。
以前聞いた時は、『可愛いボクが、可愛い格好しない方が変でしょ?』って言われた。
自然と納得してしまった。着る服は似合っていればなんでもいいだろう。
「今日のボクの服装、どう?」
「可愛いな」
「ありがとう!」
自然と俺の腕にくっつく。
「まったく光ったら、昔からお兄ちゃんのこと大好きなんだから」
昔から一緒に遊んでいたからか、とても懐いてくれている。俺も光も一人っ子だったので、兄弟みたいなものだ。
光と戯れあいながら店に入る。当然のように俺の隣に座ると、いろいろなことを話した。
食事の時間はとても楽しかった。
光との話で一番驚いたのは、学校で光とののファンクラブがあるという話だ。
可愛さに性別なんて関係ないんだな……
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