アケビの花言葉は「才能」5
「蒼汰さん、秋芽さん、来夢さん大丈夫でしたか!?」
班長が持たされていたトランシーバーを用いて忍先生に連絡を入れた後合流地点まで来ると甘夏さんが心底心配した様子で駆け寄ってきた。
秋芽さんは俯いたままだった。
「まったく、おい甘夏!一旦離れろ、今から病院に運ぶからとっとと道開けろ」
「病院!?」
「クマに襲われたって聞いたからな。万が一のことを考えてだ!」
忍先生は一括してすぐに担架を人数分持ってきた。
「ま、そういうわけだ。蒼汰、狂犬病検査は受ける必要があるから諦めな」
「狂犬病?」
「そ、ペットとかの検査があるのは知ってるだろ」
「うん」
「クマも一応イヌ科の生物だから持ってることがあるんだよ。まあ狂犬病は哺乳類全般にかかる病気だし山に行く前にワクチン接種は全員受けてるかどうかも確認しておいたから大丈夫だと思うけどな」
「それに日本では1957年でネコから確認されたのを最後に国内では確認されていないから安心して検査受けてこい」
そういえばこの学園に来る条件として狂犬病の予防接種を受けることが義務付けられていた気がした。
仕方が無く大きな病院に赴き受けたことは今でも覚えている。
しかも自由診療、保険適応外の診療でその時は泣く泣く自腹で払ったが特待生は学校が免除してくれることを知り何とか取り戻すことはできた。
定期的に病院に通う必要もあったので結構生活のリズムが狂った。
「それと科夫、うちの学園では海外で仕事に行くやつらも多いから世界的に見て感染者の多い病気は予防接種を受けておく決まりになっているから大丈夫だぞ」
「あ、すまん蒼汰……」
「じゃあ科夫アケビを取ってこいよな」
「アケビ?」
「なるほど、あい分かった華道、科夫はきちんと山に入れておくから安心しとけよ」
忍先生は俺の意図に気が付いたらしい。
アケビが実を成すのは怪しい時期のため見つかるかどうかは分からない。
つまり運良く見つけられるまで許さないという意味だったりする。
不必要で間違った情報を与えて不安にさせた罪である。
しかも実はつけているだけで食べごろには程遠い。
「まあでも科夫の言う通り狂犬病はワクチンを接種していなければ99%は死ぬ病気だ。2004年に行われた実験的な治療、ミルウォーキー・プロトコル (Milwaukee protocol) によって生存している患者はいるがこれの施術ですら成功率は1割だ。それに神経障害などの後遺症も残る。うちは声優やってるやつらやアイドル活動してる人間でアジアに行く人間も結構いるからな。中国とかはほんの数年前までは狂犬病患者は2000人を軽く超えていたほどだ。だからうちはどんな時でも対応する必要があるんだよ」
海外との交流がある組織ほど交流による災害には敏感にならなくてはならない。
日本で最も継続的に伝えられているのは外来生物や疫病、海外の病気を持ち来ないために江戸時代ではトイレを別々にしたという説もあり外来生物に関しては船などに付着した種から植物が猛威を振るい続けた。
セイヨウタンポポはその一例だ。
「まあ、きちんと認識はしろってことだ」
「……はい」
「どうした?いつもの元気が無いが……?」
「いいえ、だいじょうぶです……」
「…………そうか」
忍先生は静かに一言だけ言い速やかな消毒を行うように伝えた。
「とりあえず山にあるペンションを借りたからお前たちは風呂に入ってありったけのアルコールとオキシドールで消毒をしておくぞ。それと救急車は読んでおいたからワクチン接種は必ずしてもらうからな」
もしも狂犬病にかかった疑いがあるのならば傷口を消毒用エタノール(エチルアルコール濃度80%くらいのモノ)かオキシドール(過酸化水素水)で消毒する。
尚オキシドールを使う際には大量に使い過ぎないこと下手をすると傷口が開く。
殺菌力に関してはアルコールの方が強くオキシドールの方は傷の洗浄の方が強い。
その後ワクチン接種を開始する。
3回のワクチン接種を行っていない発症の疑いがあるものは6回接種(当日及び3、7、14、30、90日後)を行い加えて免疫グロブリンを投与する。
Wikipediaより引用.
保険医のようにテキパキとした処理ができるのも忍先生の良いところだろう。
「お前ら大自然は美しいがすぐに牙を剝くから気を付けるんだぞ」
元気の無くなった秋芽生徒会長を後目にきちんと締めて校外学習を切り上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます