アサガオの花言葉は「固い絆」5

「今日は甘夏さんが居ない分静かだね」

「うん」


お昼休みに甘夏さんが秋芽さんに押し花を渡しに行くとのことで二人でお昼ご飯を食べていた。

いつも話しかける話題に事欠かない甘夏さんが居ない分物静かな食事に成っていた。

もちろん会話はしているが中々踏み切った会話はしてない。


「ねえ、蒼汰君。久し振りに映画でも見ない?今人造人間使徒の新劇場版やってるから」

「人造人間使徒……うーん、アレ原作呼んじゃったしなあ」

「じゃあ美少女戦士シーウォームーン?」

「それは女の子向けな気もするけど……」

「じゃあモンアドの実写版見に行く?」

「よしそれ見に行こう!……あ、でもライズも発売するから配信が……」

「え、生配信するの!」

「一応今回初めて生配信を他の実況者さんとしないかって誘われてて……」


来夢さんは映画に行きたいと言っていたことを忘れたかのように目をキラキラさせていた。


「うんそれは大事!映画はまた今度見よう!」

「そんなに生配信みたいの?」

「うん!蒼汰君今までマンションのお隣の音が気に成って配信できなかったんだよね。それが今回初めての声出しだよ!興奮しない筈が無いよ!」

「なんかここまでファンで居てくれたのは偏に幼馴染だからっていうのもあるんだろうけどお世辞抜きで嬉しいよ」


確かに来夢が蒼汰のことを知ったのは幼馴染の親の情報網から知ったことが要因だ。

最初にした動画はあまりにも拙いもので何故世に出したのかと後悔しそうなものだった。

でもたった一人の応援があったからこそ続ける勇気を持てた。


まあ母親に金を無駄にするなと怒られたことも要因の一つなのだが…………

母親曰く高い買い物をしたのだからそれ相応に使いなさいとのことでいくら時間がかかってもいいから毎日作業をすること、そして可能な限り早いペースで動画を投稿して半年は続けることを条件に店の手伝いを免除してくれるくらいには後押ししてくれた。


動画配信の時間は10分を目安に作っている。

だがその撮影時間は何時間に及び編集は決まってその3倍はかかっていた。

現在は色々な面で上手くなっているので時間は短縮されつつあるがそこまで行くのにクレーム、悪口などの書き込みもあったし辞めたいと思うことも何度もあった。


「蒼汰君は辞めたいと思う時期もあったでしょう。でも他の配信者さんからコメント貰って変わったよね」

「今でもあの出来事は忘れられないかな」

「だから次のコラボ配信に誘われている人はさ、きっとその人なんじゃないかって思ったから。恩師……みたいなものなんでしょう?だったら行かないと、確かに恋も重要だけど友情を認められないような人は妻には成れないからね」


応援だけでは耐えきれそうにないと思った時に誘ってくれたのが別の配信者さんのコメントで、様々なアドバイスをくれると同時に動画撮影の協力もしてくれた恩師のような人だった。


その動画配信者の方と来夢さんの言う通り今度一緒に配信をすることに成っている。


動画配信者さんの名前はアサガオ


奇しくも今日甘夏さんが秋芽さんに渡した花と同じ名前の配信者だった。

配信者さん曰く同じ狩りをした人たちは固い絆で結ばれているという意味を込めてチャンネル名を登録したそうだ。


「固い絆で結ばれてるんでしょう。だったらアサガオっぽく絡み合ってね。ホウセンカさん!」


ホウセンカ、それが蒼汰のまったり実況のチャンネル名だった。


「ありがとう来夢さん。じゃあ日曜日のライブ、楽しみにしててね」

「もちろん!それと代わりに私も配信に参加できる枠があれば参加するからね!」

「…………お手柔らかに」


蒼汰はわいわい集まっての生配信は行ったことが無いため基本はサークル内での配信だけだった。

だが今回のアサガオさんの配信では参加枠が設けられているのでそこに入る予定なのだろう。


アサガオのように絡みつき放さず逃さず土によって色を変えていき赤と青、紫色に染めあがっていく。


アサガオの花言葉は「固い絆」、小学生にどこまでもピッタリな道徳の花だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る