アサガオの花言葉は「固い絆」2

「玲菜ちゃん久しぶり!」


お昼をみんなで食べようと包みを外していたら突然教室の扉が開いた。


「秋芽さんお久しぶりです。今日はどのようなご用件で?」

「いや最近会ってくれないからちょっと来てみただけだよ!」

「確かに最近会えていませんでしたね。すみません。恋に先走るあまり友人関係を疎かにしてしまいまた」

「ああ、確かに玲菜は綺麗になったからね!恋する乙女は最強ってね!私もそんな恋をしてみたいよ!彼が蒼汰君かな……ああ、君は園芸部の!」


この語尾にエクスクラメーションマークを付けないと表現できないくらい元気いっぱいの人が四季 秋芽さん。

学年が蒼汰たちの1個上の3年生の先輩だ。

この元気さが生徒を引っ張て行く上で大いに役立ち瞬く間に生徒たちの信頼を得て生徒会入りを果たし2年目にして5名の立候補者いるにも拘わらず、全校生徒から80%の票を勝ち取った猛者だ。


「ご無沙汰しております生徒会長」

「うん!今日来たのはプライベートだから会議の時みたく畏まらなくていいよ!」

「いえいえ、学校では一生徒として接しさせていただきます」

「むむむ!社会人になる前の心構えとしては満点だけどそれじゃあ私がブラック上司みたいじゃん!まだ学生だから緩くして良いところは緩くして!」

「まあまあ秋芽さん、蒼汰さんも既に社会に貢献している身分でもあり同時に学生でもあります。両方の顔を使い分けるのは中々難しいものなんですよ」

「そっか!わかった!ごめん!」


ツンツンと来夢さんから催促が来た。


「あ!君は、音楽系の部活の総合力を上げている期待の新星!!来夢ちゃんだね!!!母から色々聞いてるよ!」

「ママがいつもお世話になっています。改めて山羽来夢です。よろしくお願いします」

「よろしく!私は四季秋芽!この学校の生徒会長だよ!!」


うっとおしくも思えるこの元気いっぱいさのペースは陰キャには厳しいはずだが来夢さんは自分と同じようにあくまでも事務的な行動と制することで会話をしていた。


「ちょっと硬いね!まあ中学から上がって2か月たったばかりだからね!!うちの学校は先輩後輩は厳しい人多いからね!私みたいなのばかりじゃないからそれでいいと思うよ!!!でも2年生上がるころには分別付けられるともっといいね!!!!」


この多少強引なところが甘夏さんと気が合うんだろなあと思いながら秋芽さんを見つめる。


「最近食堂にも来ないから話せないし私もお弁当持ってこようかな!一緒に食べても良い!恋のバトルの邪魔はしないからさ!」

「それは来夢さんと蒼汰さんに聞いてもらっても良いですか?」

「じゃあ来夢ちゃん!蒼汰くん!一緒に食事しても良いかい!」

「うーん、私は反対です。蒼汰君は?」

「僕も反対かな。それなら一人で食べようかな」


陰キャと呼ばれる人種の中には好んでボッチを望むものが居る。

口数は最低限、現実はkusoだと思うことで妄想世界への現実世界からくる浸食作用を防ぎ己の自意識を強固なものにするために人心知れた人しか話す気が無いのだ。


「むー無理強いは良くないしな!それに一人の時間も大切だな!学校は小さな社会でならなくてはならないしな!非常に残念だが玲菜ちゃんが良いという日に御一緒してもらうよ!!今日のところは私はこれで失礼するよ!!!」


颯爽と教室を出て行った。


「嵐のような人だったね」

「根は良い人だよ。だけど用務員さんとの仲は悪いんだよ。あまり技術者との会話が成り立たなくてね。リーダーシップはあるけどスキル、この場合は相手への理解力かな」

「そうですか?私と接しているときは理解力、理解しようとする気はあるように感じるんですけど?」

「うーん言葉では説明しづらいんだけど秋芽さんは感覚肌の人で技術者の人たちは基本的には経験型の人なんだよね。今まで培ってきた学べる技術を使う人と独自の技術を持つ人だと意見が食い違うのは当然だよね」

「なるほど、あれですね商品開発担当と製造との意見の食い違いみたいなものですね」


そう商品開発部と製造部では製造に必要な構成と現実的かどうかという使用者と製造者側の問題の齟齬が多い。

それを繋ぐのが会議で会ったり専門家であったり開発者は必ず製造者の意見を聞かなければできないのだがその逆も同じでそれがかみ合わないとこのような現象に陥る。


「ちょっと違う気もするけど概ねそんな感じかな。来夢さんも苦手だよね……」

「うん、集団行動するならこれ以上にない人物だと思うけどそもそも単独行動を好む人物を動かすには足りない気がするかな」


集団行動は全員が同じ目的を持つから成り立つ行動心理であって単独行動はそもそも前提が違う。

いじめも集団行動が原因で起こるのがほとんどだしむしろ秋芽さんのような人物はやり方次第ではいじめを促進する存在になりかねない劇薬なのだ。


「集団を丸ごと引っ張ってしまうリーダーに感じてしまうんですね。確かに日本では秋芽さんなら全てを搔っ攫ってしまうくらいのモノはお持ちでしょうがそれはあくまで日本に限ってのお話ですから私からするとどこにでもいる人にしか見えないってことなんですね」

「まあ、僕と来夢さんが苦手なだけだから徐々に慣らしていく予定ではあるけどね」


ポタポタポタポタポタ


「あ、雨だ」

「梅雨の到来かな?」

「家に乾燥機が無いし近くのコインランドリーに行くのも億劫になるなあ」


本格的な梅雨が到来し始めていた。

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