ジャックフルーツの花言葉は「豪傑」4

それから何事も無く学校を終えお説教への道のりを歩いていた。


「あ、今日は少し寄りたいところがあるから先に帰ってて」

「私も一緒に行く!」

「来夢さん、1人だけ逃れようなんて許しませんよ」

「違う蒼汰君と同じ目的」

「来夢さんも、なら良いけど春菊さんがとても怒りそうだけど大丈夫?」


来夢さんは無言でスマホを見せる。


来夢さんを叱るのはお門違いでしたので申し訳ありまへん。

まあ来夢さんは反省しとるし大人しい子やから感情的になるなとは言いはりません。ただ相手の気持ちを考えなさい。

それと肉体関係を迫ることはやめりん

快楽に溺れるのはあかんで

春菊


「く、正論です」

「お土産か何か買ってくるから元気出して……」

「ならデートしてくれませんか」

「お土産は要らないのかな?」

「……冗談です」


今絶対本気だったろと言いたくなるくらいには目がマジだった。

もちろんデートしてもいいかもしれない。

だがそれは学校での甘夏さんとだ。

痴女の如く迫り狂うような女性とデートに行った日にはゴールまでインしてしまいそうなのではっきり言ってデートはしたくない。

それに甘夏さんの趣味を未だに知らないしプランは考えなくていいのかもしれないが来夢さんと違って同じ趣味の人間と遊ぶのとそうでないのでは心の余裕に違いがあり過ぎる。


「く、来夢さん抜け駆けは無しではありませんが蒼汰さんに迷惑はかけないようにお願いしますよ」

「玲菜さんに言われなくても解ってる。でもどちらかといえば玲菜さんに言うセリフ」

「解ってますよ今から怒られに行ってきます」


甘夏さんは一人さみしく怒られに帰っていった。


「じゃあ行こっか」

「うん」


そういって訪れたのは高級フルーツが描かれた看板の本屋


「「今日は角山シューズ文庫の新刊発売の日!」」


ライトノベルの刊行日は大抵給料日と被ることが多い。

つまりはちょうど懐の温まった時期に来るため予約の前金さえ貯めておけば特に気にすることなく小説を買えるのだ。


「蒼汰君は何を買ったの?ざまあ系?」

「ざまあ系は半澤直樹の影響を受けすぎてる気がしてあまり好きじゃないんだよね。異世界転生ものなら良いけど現実と重ね合わせた現代ドラマ型恋愛でざまあをやるとね」

「そうだね今やってる学生警視庁とかももう少し考えて作ってほしい気もするよね」

「いじめやパワハラがどこか昭和っぽいというかもちろん今でもそんないじめやパワハラはあるんだろうけど今の人たちはもっとうまくやるイメージが強いんだよね」

「うんなんかこうスカッとさせたいのはわかるんだけど復讐ざまあじゃないし正義とも言い切れないざまあだから共感性にイマイチかけるんだよね」


個人の好みの問題もあるが最近のweb上がりの書籍化作品はざまあ系で占められている。

ちょうど半澤直樹が流行った時期からざまあ系小説が一気に増えた。

その時期から倍返しパワハラみたいなもので始めた。

社会の不正をただすためにできた小説だというのにドラマが放送されるとそれを利用されるという悲しい出来事であると蒼汰は感じていた。


「今日は何を買いに行く?」

「今日は格ゲー転生を買おうかな」

「格ゲー転生は良いよねアレは面白かった」


格ゲー転生とは格ゲーのジャッジ役に転生したけどファイターに成って無双する物語だ。

マニアックな小説のためファンもそれほど多くは無いが固定のコアなファンはとても多かった。


「来夢さんは?」

「私は転生したらトロールだったけど魔法が得意な件」

「ああ、あの武術オタクが転生する話ね。あれもWEB上がりの小説だけど面白いよね」

「うん」


他にも良作が無いかタイトルと裏面のあらすじを見て決めていく。

もちろん好きな作者さんや絵師さんも居るが新たなジャンルを開拓するために新人作家を読んでみたりもする。


「やっぱり新たな開拓をするには作者読みは良くない気もするしね。やっぱりラノベは純文学ではないかもしれないけど文学だからきちんと好きな文章を探すべきだと思うんだ」

「それには賛成、私も普通の小説も読むから文章の好き嫌いもあるしジャンルに限らず表現方法とかが気に成るかな」

「うん、今期はこれなんかがよさそうな気がするね」


和気藹々で本を買い漁っていった。


帰る際に食料品の買い出しにスーパーにも寄ろうと甘夏さんに出会ったところのスーパーに行ったのだが……


「今日は子どもの日間近だから柏餅が多いね。でも蒼汰君あんまり餡子好きじゃなかったよね餡無しの作るからちょっと待ってね」

「餡子が嫌いだってこと覚えててくれたんだね」

「覚えてたよって言いたいけどお義母さんから聞いて思い出したの」

「僕が高校に入ってからだよね?おふくろに料理を習いに行ったのは……」

「基本的にはそうかな。でも最初は中学に上がったばかりの時に蒼汰君が居ない合間にママにお願いして合わせてくれたの、それからは交通費も出してくれて定期的に行くようになったかな」

「そうなんだ……でもなんで会いに来てくれなかったの?」

「それは……その…………」


もごもごと小さな声で


「恥ずかしかったから……お姉さんだと思われてたのに年下だと思われたらって……」


ゴロゴロ……ピッカーン!!


心臓にイナズマが迸るサッカーボールをありえない高さからオーバーヘッドシュートされたようだった。


「お、お客様!?」


突然店員からの叫び声により視線がそちらに向かった。


「そ、そんな……蒼汰さんが、蒼汰さんが」

「玲菜、落ち着きなさい。それにこんなところで倒れ込まないの」


泣き崩れた甘夏 玲菜が居た。

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