ハルジオンの花言葉は「追走の愛」3

「うーん、惜しい……」

「惜しいじゃありません!」

「でも絶好のシチュエーション、この大きな夕日をバックにチューをしたいと思うのは誰だって当然の事」

「ま、まあそれには同意しますけど……」

「大丈夫これからの季節は海だったりコミケでもっといいシチュエーションがあるからそこで蒼汰をメロメロにし魅せる」


来夢さんや本人の居る前でそのように言うのはどうかと思うが……

来夢さんの言動に対して本人に知らせるためにも敢えて言っているのだ。

最近来夢さんにもこういった意思表明のようなモノを間接的な形で行っている気がする。

甘夏さんのように直接では無いしあくまでも形式上は間接的なのでこれと言って拒否するわけにもいかない。


来夢さんらしいと言うかなんというか既に埋められている外堀を自分だけが入れる城壁へと改造しているようにも見えた。

そのような情景が浮かぶほど来夢さんは策士にも見える。

敢えて目立つ罠を掛けて二度目の罠で確実に仕留める。


警戒心の強い動物にも有効なミスディレクション


これをモンアドで表すならば死を纏うヴァルファザク、その目に見える毒霧で生息域の瘴気を隠しじわりじわりと二つの毒で敵を痛ぶっていく。


甘夏さんを例えるならニャルギガンテ、猫のような俊敏性と生え変わる再生角、古いものほど鋭く鋭利になり壊されれば直ぐに再生する。

シンプルだが故に強い。


罠師と追いかける狩りをするもの、どちらが強いかは一概に言えないが獲物を確実に一頭の獲物を狩るという意味では罠師の方が優れているイメージはある。


罠師も追いかけて狩りをするものは幾千もの失敗はするが罠師は狩り方を状況に応じて使い分けている。

獲物は一度覚えたことに対しては適応しようとするため毎回同じようなやり方になる単独犯の戦いにおいては来夢さんの方が一歩リードのように感じた。


「蒼汰さん、今来夢さんの方が有利だと思いましたね。つまり結婚したいという思いはあるということですね」

「それ本当?」


ずいっと2人の顔が目の前に来る。

甘夏さんは控えめながらも薔薇のボディソープのような香りがして来夢さんはボディソープというよりも制汗剤のシトラス系の香りがした。


ちなみに蒼汰の好みはシトラス系で蒼汰の使っている制汗剤もシトラス系の香りがついている。


制汗剤なら香水などと違って化粧扱いにならないためオシャレの一環として使用している生徒もいる。

制汗剤となれば基本的にシトラス系か無香料が多いのだが生徒たちはあの手この手を使って海外から取り寄せたり特注で作っていたりする。


余談は置いとくが最近に成ってから間近にオンナを感じる蒼汰は嫌にでも男女の着地点を考えてしまっていた。


「……思いはまだ無いと思う。でも意識はしているかな。僕は男女が付き合うこととかはさ着地点のことをどうしても考えちゃうからさ。どうしても今までの関係が壊れるのが怖いんだ」

「それは………うん、確かにそうだよね」

「私は蒼汰さんを幸せにして自分も幸せになりたいですけど、その子どもが幸せになれるとは限りませんね…………ですが、子どもの幸せは親が決めるモノでもありません」

「「!」」


蒼汰と来夢は今までいじめられていた過去から結婚したその先子どもが出来てしまった場合、きちんと生まれてきて良かったと心から呼んでくれる存在にさせようと考えていた。

だが玲奈はそれを否定した。


「だってそれは自己肯定の否定に繋がりませんか?」


「「……………………」」


玲菜はそのまま続ける。


「確かに親がいじめられた出来事は子どもに伝染しやすいです。私が住んでいた国でもあったくらいです。むしろ教師たちが率先していたくらいです。でも子どもたちは観ています。常に自分の価値観を確かめています。今はグローバル化が進んだ社会です。日本はまだまだかもしれませんが世界はきちんと過去に囚われない子どもを育てています。だから少しは子どもの未来に期待してもいいんじゃありませんか?」


「「…………………………………………」」


二人は熟考していた。

もちろんいじめの内容は親の育て方次第ともいえる。

例えば北海道の両親を持つ子どもが親の都合で沖縄に行ったのでは明らかに方言や文化、大雑把に言えば環境が違い過ぎる。


そのような状況で起こるいじめは多い。


教師の怠慢だと叫ぶ親もいるがそれは違う。

教師も教師で手が回らない。

若く正義感を持つ新任教師は仕事を覚えることで余裕がなくなり、年を重ねれば新任時代に経験済みのいじめとは変わった形のいじめも増えてくる。

頭がパンクしていくのだ。


難しすぎる社会と言われるようにその社会の縮図である学校も難しくなっていく。

より良い改革をと訴える政治家も未来を見通した教育を推奨するわけでもなく人材が圧倒的に足りないのだ。


「日本が変わるかはわかりません。でも子どもを後押しするのが親ってものでしょう。だから一押しでいいんです。子どもの訴えに気づけなかったときに相談してくれ、ではなくこの言葉があったから言えたに成れるような子どもにしたいと思いませんか?」


「「……………………………………………………………………………………」」


「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪ここまで息がぴったりだと妬いてしまいますね。まあでもそれだけお二人が悩んでくれるのなら話したかいがあったというものですね」


夕暮れの中でハルジオンが風に靡いた。


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星を!レビューを( ゚д゚)クレ

星乞食になりつつある……

まだこの作品2021/03/09時点でレビューの文章は書かれていないから書いてくれると助かる

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