ハルジオンの花言葉は「追走の愛」1

その後、蒼汰たちはウサギたちをなだめ終え帰ろうとしていた。

校門前まで来ると今朝見かけた吹奏楽部の1年生たちが居た。


「君たちは……」

「今朝はすみませんでした」

「ごめんなさい来夢さん。あなたの事全然知らなかったし私たちも努力不足だった」

「ごめんなさい先輩たちにも聞いてわかった。私たちが頼り過ぎだって」


どうやら忍先生の指導のかいもあって今は反省しているようだ。

三人の生徒たちは新しいタコを指に着けていた。


「今日はきちんと練習していたんだね」


来夢さんは彼女たちの手を見てそういう。

彼女たちのタコは来夢さんに比べればまだまだ若い。

来夢さんのように身体の一部のように馴染むことはなくまだほんの少しの跡が残るだけだ。


「でもそれを継続しないと大会には出れないよ」

「はい、それは先輩たちに聞きました。自分たちも山羽さんみたいな他人に頼って断られて結局ダメだったから今は練習しているって」

「先輩たちもあの時頼った子がどれだけの楽器を練習しているかを今になって知ったからもう遅くなる前に練習しているって」

「先輩たちは私たちが山羽さんに頼んでいたのも知っていたけど敢えて伝えなかったの」

「その理由はうちの顧問の音楽の先生が口止めしててこれも社会勉強だって」

「私たちは運のいい方だってわかりました。あのまま来夢さんに来てもらい続けて大学に入っていたら私たちは終わってたかもしれない」


秀専学園は反面教師として課外活動をしているのかと蒼汰は一人納得していた。

いわゆる体育会系の部活とは縁の無かった蒼汰は助っ人ありきの部活で教師が注意しないのはおかしいと思っていたのでもっともらしい理由を分からなかったが1年生の話を聞いて今一度理解した。


「それに忍先生に聞きました。学校は社会の縮図であるべきだけど悪いところはきちんと排除すべきだって」

「前の助っ人の人も自己の都合を理由に辞めましたしその際私たちと山羽さんのような状況に起こったそうです」

「その時はまだ新米教師だった忍先生が今日のように諫めてくれて体育会系の部活全体にその方針が生き渡ったと聞いています」


「「「今日は本当にごめんなさい!今まで山羽さんに頼りすぎて迷惑かけてごめんなさい!!」」」


三人の一年生は土下座とまではいかないが地に頭をつけそうな勢いで頭を身を低くして頭を下げていた。


「いいよ、きちんとうまくなった吹奏楽を私に見せてね」


「来夢さんもなんだかんだ言って甘いですね」

「そりゃあ来夢さんの教え子みたいなものだもの、可愛がってやりたくなるさ」

「そういえば蒼汰さん、来夢さんと仲がいいのはわかりますが私にはやっぱり壁がありますか?」

「うーん、やっぱり来夢さんとは居た時間も長かったしずっと名前で呼んでいたらね。科夫のことも名前で呼んでいるのはここ最近だし甘夏さんのことはまだちょっと信用しきれてないかも」

「わかりました。今まで迫っていたことを考えるとそうですよね…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………でも、その一年を1日に帰る魔法を使いますから覚悟していてくださいね」


その瞬間蒼汰に南極の山ヴィンソン・マシフの最低気温を越える寒波が襲った。


死の恐れと言わんばかりの大切なものを狙われている感覚に蒼汰は謎の震えが身体を支配する。


「こりゃ蒼汰の貞操が無くなる日も近そうだ」


この世界のモブにあたる科夫は既にない自分の貞操が無くなった日のことを思い出しながら親友である蒼汰の貞操に冥福を祈った。


「ごめんね蒼汰君待たせちゃってじゃあいっしょにかえろ」


来夢さんと合流して校門を出た。

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