ニンジンの花言葉は「幼い夢」3
「わあウサギさんが沢山!」
はしゃぐ新星飼育委員。
それもその筈、この秀専学園で飼育しているウサギは百羽(匹?)を超える。
なぜそんなになるまで放っておいたという地域からの声もあったがその理由は
食べるため
なんと給食に採用しているのだ。
もちろん手続きはとっているため合法だ。
どこぞの農業高校のように子供たちに育てさせて食べさせる行為はしていないが残酷だという声もあった。
だがその抗議を押しのけてたのが第2次世界大戦を生きた当時の名誉校長だった。
本来校内のことに口出しできないはずの名誉校長が地域住民に命の大切さを身をもって知ってほしいという理由と何事も目を背けてはいけないと当時ゆとり教育真っただ中の時代で根性教育でもないゆとり教育でもない海外の教育を提唱していった第一人者だった。
「そんなわけで君たち初等部の給食にウサギのお肉が出るんだ」
「可哀想」
「うんうん可哀想と思う気持ちもわかる。そのことに関しては後日先生たちやここにいる高校生のお兄ちゃんやお姉ちゃんが話してくれるから今はウサギの世話をしようか」
忍先生と連携しながらウサギ小屋に案内する。
「ねえこのウサギたちに名前はあるの?」
「あるよ、例えばこの子がぴょん吉で、この子が長友で、この足に土がいっぱいついてる子がビックフット、それと耳が一番長いのがエルフ、二番目に長くて小さめの奴がドワーフまだまだ沢山あるけど聞く?一応新しく生まれたの以外には名前つけてるけど……」
科夫のスラスラと名前が出てくる様子に子どもたちはスゲエと思っていた。
忍先生も当然だと言わんばかりの態度をしているため来夢さんと甘夏さんは嘘とでも言うような表情だった。
「そんな科夫さんは絶対お馬鹿キャラだと思ったのに」
「私も蒼汰君の友人とはいえそこまで勉強できるようには見えなかった」
「おいおい人を見た目で判断するのは良くないことだからな」
「忍先生、俺の見た目が普通に頭悪そうって見られてることを認めないで欲しかったです」
「いいだろお前は成績もそこそこ良いが見た目がオタクっぽ過ぎて馬鹿っぽいてお前の親も嘆いていたからな。服のセンスや髪型とかにもう少し興味を持ってくれればって家庭訪問の度に言われていたぞ」
家庭訪問?
高校に成ってからはそんな行事あったかなと蒼汰が思っていると忍先生から合図があった。
ウサギの餌から季節外れのホオズキがあった。
それを強調するように取り出してから餌球に混ぜ込んでいた。
「先生、それは何ですか?」
「一応学園では飼育小屋を綺麗にしているけどウサギが病気にならないとは限らないからね。これは生薬と言っておうちのお薬なんかに含まれているその元みたいなものを偶に入れているんだ。ウサギさんの調子が悪いと思った日には先生に相談してね」
「「「はーい」」」
ここでホオズキを混ぜ込むってことは裏花言葉を話しているのかもしれない。
ホオズキの花言葉は「あなたを誘惑している」ならば科夫とただならぬ関係なのだろう。
科夫もここ最近言動がおかしいし隠すこともある。
おそらく俺が甘夏さんに会った時のような外堀を埋められてそれを受け入れた結果だろう。
ある意味きちんと隠せている分羨ましいかもしれない。
「甘夏さんに告白されてから風当たりがいつもにまして強くなったからなあ」
「お、なんだなんだお兄ちゃんモテモテなのか?」
「モテモテなのか?」
「君たちはウサギたちの事見て居なくて大丈夫なのかい?」
「話逸らすなよお兄ちゃん」
「逸らしてないよ。そもそもモテるって言葉自体僕は好きじゃないしね」
「ちぇっつまんねえの」
「つまんねえの」
ああいうマセガキのあしらいも慣れたものだ。
まあ甘夏さんのような女性のあしらい方は知らないが……
「あ、蒼汰さん見てください」
「私も見て」
もふもふウサウサ
モフモフうさうさ
「「「きゅうううう」」」
ウサギたちはとても気持ちよさそうにしている。
「おまえらそろそろ触れ合うのは辞めにして餌やりをするぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます