カトレアの花言葉は「美しい淑女」エメラルドの石言葉は「愛の成就」
「科夫、俺にはアーチャーの固有結界が見えるんだが気のせいか?」
「気のせいじゃないぞ。ちょっと違うけど」
「うんアーチャーだったら剣以外は少ないから違うか」
地面に突き刺さるは14種の武器、その数は計140本
「なに!凶戦士風にモンアド武器刺してるんだよ!」
「いやうちカフコンだし」
「いや確かにお前の家の看板商品でもあるけどこれは変な家だって!」
草原に鉄の塊が差し並ばれる光景はオタクが見れば聖地化しそうな場所である。
大剣、片手剣、ランス、ハンマー、ライトボウガン、ヘヴィボウガン、双剣、太刀、狩猟笛、ガンランス、弓、スラッシュアックス、チャージアックス、操虫棍その全てのメインモンスターの武器がまるで戦士の墓場のようにも見えた。
細部にまでこだわった武器の数々は一つ一つが一体いくらかかるのかわからないほどの美しさ
「一体いくらかかったんだよこの庭」
「確か一億したとか」
「庭に一億って……」
庭にしかも武器を刺しただけの芝生に1億とは金持ちの考えることはわからないがテーマパークを造るとしたら一区画はこれ以上するんだろうなあと思いながら車で庭を超えていく。
操虫棍に関していえば虫もリアルに再現しているものだから夜に観たら驚くどころじゃすまないという感想すら浮かぶ。
それ以外は特質すべき点は無いのだから本当にモンアドを模した土地なのだろう。
「家は普通なんだな」
「建物は5000万もしないって言ってたから東京の相場的には建物は普通だけど土地代はやばいぜ」
東京にアーチャーの固有結界を再現するだけの土地と普通の家1戸分の土地を全て賄えるだけの土地を探す労力に加えてその土地を買う金額を考えると庶民には宝くじを何回も1等当選しないと買えない値段としか想像できなかった。
科夫も家のことを自慢するというよりかは親が馬鹿やってるというような諦めの表情の苦笑いをしていた。
「とりあえず家に入って開発中のVRゲームしようぜ」
さらっと企業秘密になることを言ったが気にしたら負けだと思い案内されるがまま家に入ることにした。
◇◇◇◇
一方そのころ心と身体が一致せず自覚のない恋心を暴露した人物はというと……
「はわわわわわわわわわ」
一瞬海底ハンバーガーレストランの厨房従業員のスポンジが頭をよぎったが彼女、甘夏 玲菜は脳内処理が追い付かずショートを起こしていた。
「どうしようどうしようどうしよう!」
「あんな迫り狂うことをしてしまって嫌われてないかな」
「思わずキスしようとしたけど痴女って思われてないかな」
とにかく慌てていた。
しかも道の真ん中で考えていたため子どもからは指を指され、奥様方からは青春ねえ、私もあんな時期があったわという言われる始末
偶々通りかかった巡回の警察官もビクッと身体を震わせ呪詛でも吐いているような彼女に一瞬職質をしてしまうか迷わせるほどだった。
「玲菜」
「あーもうダメこれ以上蒼汰さんに嫌われない為には蒼汰さんと同じように花言葉を沢山覚える?けどそもそも蒼汰さんは私に興味が無いようだったし、それならいっそ蒼汰さんのことをストーカーして好きなモノを徹底的に調べる?それなら蒼汰さんと学校で一緒に歩いて帰って偶然を装って家を特定する方が…でも初日の時に帰りが会わなかったからそもそも時間が合わないかもしれないし、あ、最寄りのスーパーは一緒だったしそこからなら特定できるかも、そのためには発信機とかがあると便利だし盗聴もしたいなあ。一日中蒼汰君の声を聴けるなんて幸せ以外の何物でもないわ。あれ、私蒼汰さんのことが好きなの?」
「玲菜!」
「お、お母さん!?もう少し時間がかかるって言ってなかった?」
玲菜が声を掛けられた方を振り向けば玲菜の母、春菊が鬼の形相で立っていた。
「仕事が早く終わったんよ。それでねえ玲菜、私が言い張った言葉覚えとりなはりますか?」
「は、はい!」
「じゃあ言うてみんさい」
「淑女たるもの謙虚であれ、距離を縮めたいときはその人のペースに合わせなさい」
「ならさっき呟いておったんわ。どういうことですえ。ましてやストーカーなんて淑女のやることやないですよ」
「ご、ごめんさい」
春菊に言われてしゅんとなる玲菜。
春菊は通行人たちが居ようとお構いなしだ。
親が子を教育するのに時と場は関係ないと思っているからだ。
「それで玲菜、アンタ恋したんちゃいます?」
「こ、恋いいい!?」
「それも蒼汰さんに惚れたんでしょう。アンタ、妙なところで鈍感やしどうせ自分が何かわからないけど好きとか言うたんでしょう。前も甘えたい~ってバレバレなのに甘え方知らんから本ばっか読んで変に覚えた知識が出たんでしょう」
「しょ、しょんなことないよう。それに甘えたいのは小学生の時の話でしょう!!」
しかし春菊はクスクスと笑うだけで何も言わない。
玲菜は春菊の中では小学生も高校生となった今もそんなに変わらないと思っているのだろう。
実際そのとおりなのだが、
「私には小学生の時も高校生の今も変わらず私の可愛い我が子ですよ」
「もう」
「まあまあ拗ねない。それで好きなの?」
「まだわからない。初めてだからこんな感情は…蒼汰さんを見るとドキドキして好かれたいって思うの」
「好かれたいと思うのは悪くないわ。けどね好かれたいからと言って彼のことを知り過ぎるのはやめりんさい」
母として人生の先輩としてのアドバイスだった。
「どうして?」
「それはね、蒼汰さんに好かれたいと思うあなたはいいかもしれないですけど玲菜だって私に知られたくないことはあるでしょう」
「うん、あんまり知られたくないことはあります」
「なら蒼汰さんも一緒。知られたくないことは知ろうとせずに少しずつ詰め寄る方がいいのよ」
「でも、蒼汰さん良い人だし盗られちゃったら……」
玲菜が焦る気持ちもわからないでもなかった。
「それは確かに焦るわねえ。でもあなたの名前の意味覚えてる?」
「?」
「うふふ、まあ言ったのは幼稚園の頃だしね。玲菜は清く澄んだ玉のように美しい音を奏でる花、西洋の意味の女王と一緒にかけてカトレアのように育ってほしかったのよ」
「カトレア?」
「そうカトレアの花言葉は「美しい淑女」、あなたの今の鏡は美しい淑女かしらねえ、私にはとてもそうは見えないけどね。貴方にはカトレアのもう一つの花言葉「優美な貴婦人」にはまだまだ若すぎるわよ」
そして玲菜は気が付いた。今まで考えやろうとしていたことはただの押し付けではないかと、押し付けられて好かれたいと思っている人と好ましいと思われるかと言われれば否である。
ならば自分が真にすべきことは何か。
適度な距離感を保ちつつ餌をぶら下げ獲物がかかるのを待つことだった。
◇◇◇◇
「やべえなこのPX5のゲーム!家でやること考えると動きが激しすぎるけど家庭用ゲーム機とは思えないクオリティだぜ」
「一応カフコンで作成したアルファ版なんだけど色々欠陥があって出せないんだよな」
「完成度高すぎるけど……もしかしてデータ?」
「そうなんだよ。これゲームデータだけで900GBも使うからおいそれと発売できないんだよ」
科夫とゲームを楽しく遊んでいた俺はそろそろ帰ろうかという時間に差し掛かっていた。
「お、科夫あの試作品をやっているのか?」
「親父、友達とやらせてもらってるけど動作はオフラインでやる分にはほとんど問題なかったけどオンラインでこれを実現するのはきついんじゃね」
「そうか……とりあえずゲームショーの次世代ゲームソフトとして催し物にするしかないか。それと君は華道君だったかな。科夫から話はよく聞いているよ。私は父の根田 狩だ」
「親父聞いてくれよ。蒼汰の奴このゲームの裏ラスボス倒したんだぜ!」
おい科夫よ。挨拶くらいさせろや
あらためて挨拶をしようとした矢先、狩さんが放心していた。
「え、あの総合格闘技優勝者の慣習の元作った絶対に倒せないネタキャラとして造った裏ラスボスを倒しただと!!」
「あ、あのう」
「蒼汰君!君は何か武術の経験はあるのかい!!」
「あ、はい。柔術を少々祖父から習いました」
「柔術!柔道ではなく柔術なんだね!!」
「はい」
「これはもう点だった。このゲームルール無用だし古武術みたいな実戦武術学んでる人に聞く必要があったんだ。ありがとう蒼汰君!君のおかげでもっとこのゲームを楽しくできるよ!!」
狩さんはとても興奮しながら高速でスマホを打っていく。
おそらく今思いついたことをメモしているのだろう。
「しかし柔術を習っていたとは君はとても忍耐力があるんだね。まさに蒼汰という名前の通りだね」
「え?」
「ん?私の友人にも同じ名前の人が居るのだが彼はこのように言っていたよ。蒼汰とは翡翠、エメラルドにあやかった名前だと。エメラルドの石言葉は知っているかい?アレはプロポーズにもぴったりの石でね。石言葉は「忍耐力」「知恵」「愛の
「親父、俺それ初めて聞いたんだけど」
「はっはっはなんせ科夫には浮ついた話が一つも無いのでな話す機会がなかったのだよ」
ガハハハと笑う豪快な狩さんに驚いていたが同時に蒼汰は自分の名前の意味を考えていた。
愛の成就か、俺はそもそも恋とかそいうのが無いから無縁そうだな。
名前を付けてくれた親に申し訳ないという気持ちと自分の考えは曲げたくないという葛藤が僅かにだがにじみ漏れていた。
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