05 -ZERO FIVE-

平中なごん

Ⅰ 00:03:05

 俺はMTEに所属するエージェントの釈春矢しゃくはるや。真の仕事人だ。


 今、俺はとある任務のため、ターゲットのもとへある荷物を輸送している。


 しかも、それを5分以内に受け渡さなければいけないという、たいへん厳しい条件付きのミッションだ。


 まあ、普段であれば、そんな時間の制約があったとしても簡単にクリアできる自信はあるんだが、今回は一つ予期せぬトラブルが起きた。


 制限時間まであと00:03:05……。


「――クソっ! どっちへ行けばいいのかわからない!」


 心臓の鼓動の如く秒を刻む音が脳内に木霊する中、俺はモスグリーン色をしたYATHCO製バッグにブツ・・を入れ、愛車のバイクで入り組んだ下町の路地を駆け巡る。


 俺としたことが、5分前に出発してからもう2分も無駄に費やしてしまった。


 ここら辺は土地勘がない上に無秩序な開発で建物が乱立していて、指定されたポイントへの最短コースを見失ったのだ。


「土井、聞こえるか!? 俺としたことが道に迷った! ナビを頼む!」


 俺はインカムのマイクを通し、本部で俺達現場をサポートしてくれる相棒の土井明太どいあけたに助力を要請する。


「釈、心配するな。一見、複雑に入り組んではいるが、その道を道なりに行けば大きな通りに出る。そうすれば後は簡単だ」


 助けを求めると、頼もしき我が相棒はすぐさまヘッドホン越しにそう的確な指示を与えてくれる。


 本部では俺のスマホを発信機代わりに、GPSでこちらの位置をリアルタイムで把握している。だから、その位置情報を地図と照合して、直ちにコースの修正をすることが可能なのだ。


「了解だ! すまん、土井。助かった。では、引き続き指定ポイントへ向け急行する!」


 俺はインカムで土井に礼を述べると、狭い路地ではあるがバイクを加速させて、その先にある大通りへと向かった――。

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