第112話 発見
騎乗した【
その先頭を進むのはリーダーであるアトモス。
そして、それに並走しているのはアルフォンスと子狼改め【ショコラ】であった。
魔物であるショコラはともかくとして、人と馬が並走することなど本来はありえないのだが、この黒髪の少年に関しては、常識が裸足で逃げ出す有様。
もう毎日のように繰り返された光景であり、隊商のメンバーには、もはや当たり前のことと認識されていた。
「なんと、それで子狼殿は『ショコラ』という名前になったのだな」
「ええ」
「ガウッ」
アトモスが、子狼の名前を聞いて驚きの声を上げる。
「いやはや、なんともはや。魔物に名付けるとは……」
「何かおかしなことでも?」
「うむ。そもそも、魔物は悪と決めつけて戦ってきたのが我々だからな。名前をつけるなど思いもよらなかったのだ」
「ああ、そういうことですか……」
「子狼……いや、ショコラの例があるのでな。人と魔物が共存できる方法もあるのではないかと思った訳よ」
「素敵な話ですね。僕は、村でペットも飼っていましたから、不可能じゃないとは思います」
「ペットって……魔物のか?」
「はい。ゼリーの子で【スライム】って名前なんです」
「魔物も飼ってたのか……」
「かわいいんですよ。プルプルしてて」
そう得意げに話すアルフォンス。
一瞬、アトモスは「ゼリーがスライム?スライムがゼリー?」と混乱するが、いつもの大雑把な魔物の括りなのだろうと思い至り、深く考えないことにする。
そんな話が聞こえていたのか、クリフが馬を近づけてくる。
「まるでアルさんは【
「【
「ええ、例の大戦時、魔王領域軍には魔物を従えることができる者がいたとかって話ッスよ」
「へえ〜、そんなんですか。敵としては大変そうですね」
「あの【十聖】の方々も、だいぶ苦労したって逸話もあるくらいッス」
「師匠たちもですか……。でも、何となく分かりますね。魔物の特性を生かした作戦なんて立てられたら、考えるのも嫌になりそうです」
そんな軽口を叩くアルフォンスたち。
この日も、平穏な時が流れるかと思われたが、そんな期待をアルフォンスの言葉が打ち砕く。
「!!」
突然、眉間にシワを寄せたアルフォンスが【
「十時の方向、1キロ先に魔物の群れ。誰かが襲われているようです」
「魔物の数は?」
「およそ20。犬……いや、狼だと思います」
すかさずアトモスが、アルフォンスに魔物の群れの詳細を尋ねる。
「主!助けるが問題ないな?」
続いてアトモスは隊商の主であるグルックに救助することへの確認を取る。
「また面倒事かよ。ああ、構わねえよ」
すると、グルックは舌打ちをしながらも、助けることを了承する。
最近では、わざと偽悪的に振る舞っていることが隊商のメンバーに知られてきたグルックであったが、周囲にはバレバレであってもその態度は崩さないようだ。
「今回は我々が行く。アル少年、こっちの守りと補助を頼む」
「分かりました」
うなずくアルフォンスは【
「良し、行くぞ!」
「「「「応!!」」」」
アトモスの号令にそう応じたメンバーは、馬に鞭を打って駆け出す。
こんな荒野のど真ん中でどうしてと思うところがないわけではない。
ゆえに、何らかの罠を警戒して、最高戦力のアルフォンスを荷馬車の警戒に残す判断をしたアトモス。
瞬間的なやり取りで最適な方法を導き出し、有事に素早く対応するその姿は、もはや以前の二流冒険者では無かった。
こうして、一流の冒険者パーティーが救助へと向かうのであった。
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