第64話 方針
大地を揺るがすような轟音が、クリフたちのもとまで届く。
アトモスとハイオークロードが渡り合っている音だ。
アトモスが持つアルフォンスが鍛えた剣に対し、ハイオークロードは大森林で見つけたアダマンタイト製の棍棒で対抗している。
かつて大森林に挑んだ冒険者の遺品であろうその棍棒は、こと耐久性という一点においてアルフォンス製の剣と互角の性能を有していた。
ゆえに、両者の戦いは力のハイオークロード、技のアトモスのせめぎ合いといった様相を呈していた。
「うっひゃあ、アトモスさんパねえッスねぇ」
「ずっと、ロードの見下した笑いが許せねえって言ってたしなぁ」
ハイオークたちから、未だ治療中のアルフォンスや奴隷たちを守っているのは、アトモス以外の【
彼らは壊れた馬車の四方に立つと、その背後を最終ラインとして、敵をこの中に入れないことを是として、守りに就くことに方針を変更した。
アトモスという攻撃の要を欠いたために、守備に力を入れたクリフの判断に誤りはない。
実際、今の彼らにとってハイオークたちから背後を守るだけであれば、そう難しいことではないからだ。
決められた最終ラインを守るという練習を、嫌というほど繰り返してきた彼らにとって、ハイオーク程度の相手であれば、苦もなく対処が出来るようになっていた。
何しろ普段の練習相手は、ハイオークなどよりも遥かに格上のアルフォンスや子狼なのだから。
このため、いくら戦闘中とは言えども、アトモスとハイオークロードの戦いを見届けることや、会話を交わすことくらいは容易かったのだ。
「それにしても、だいぶ減ってきたッスね」
クリフがハイオークの棍棒を、上半身を捻って躱すと右手に持った矢をその目に突き刺す。
脳髄まで届いた矢によって、ハイオークが前のめりに崩れ落ち、事切れる。
「思ってた以上に弱かった。それでも、イーサンたちにこれほどの実力がついていたのには驚い……った!」
今度はイーサンが竜骨の錫杖を横薙ぎし、ハイオークを遠方に吹き飛ばす。
身体強化の魔術により、前衛並みの力を得ているからこその芸当であった。
いつの間にやら【
それこそハイオークと一対一で渡り合える程度には、動けるようになっていた。
「何で、後衛があんな動きができるんだよ……」
「魔術師がハイオークをぶっ飛ばしたぞ」
「さすがは高ランク……後衛までもが前衛並みに動けるとは……」
助けられた冒険者たちから羨望の眼差しで見つめられるバレットたち。
繰り返すが【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます