第28話 白熱バトル!


「じゃあミハイルさん、ゲームでもしますか?」

「え? ゲーム……なんだそれ?」

 まさかとは思うが、ミハイルの家はそこまで貧しいのか?

 それとも余程の上級家庭なのか……想像に値しない。


「古賀、お前ゲームしたことないのか……」

「鬼ごっことか?」

 マジなのか……。

 ミハイルさん家、かわいそすぎ。


「なんてことですの!? つまりはミハイルさん『バミコン』や『ブレステ』すら触れたことがないということですか?」

 ならぬ……触れてはならぬぞ、かなでよ。

「うん☆ オレんち、ねーちゃんが『外で遊べ』っていうタイプだからさ」

 あー、クラスでたまにいるよな……。

 そっち系ね。


「つーかさ、かなでちゃん……その『ミハイルさん』ってやめてくんねーかな? 年もあんまかわんないし……」

 なにやら歯切れが悪いぞ、ミハイル。

 そんなに巨乳のJCに緊張しているのか?


「では、わたくしめはなんとお呼びすれば……」

「じゃ、じゃあ……ダチからは『ミーシャ』って呼ばれてっからさ……」

「ではミーシャちゃんで構いませんね」

 え? なんでちゃん付け?

「う、うん、タクトの妹だから、いい……よ?」

 ミハイルさん、ひょっとしてこのクソきもい巨乳JCにときめいてます?

 もらえるなら、もらってやってください。

 兄の切なる願いくさ。


「ではミーシャちゃん、一緒に遊びましょ♪」

「うん☆ ……ただ! タクトは『ミーシャ』って呼ぶなよ!」

「む? なぜだ?」

 なにこれ? いじめってやつを体験しているんですかね。

「そ、それは……かなでちゃんが……女の子だからだ!」

「は?」

 意味がさっぱりわからん……しかし、ミハイルさんよ。

 こいつは女の子というカテゴリ化するには故障しすぎているぞ?


「よくわからんが俺は今まで通り、古賀と呼べばいいのか?」

「いやだ!」

 ダダっ子だな……わがままはいけません!

「つまりどうすれば、お前の承認欲求は満たされる?」

「オレのことは……下の名前で……」

 つまり男同士は『ミハイル』。女からは『ミーシャ』で通しているわけか。

 なるほど、府におちた。


「認識した、改めよう。では、ミハイル」

「う、うん! なんだよ、タクト……急に……」

 なぜそんなに顔を真っ赤かにしている?

 かなで、喜べ。腐ったお前にようやくモテ期がきたぞ、知らんけど。


「じゃあ、かなで。お前が提案者なんだからゲームソフトは自分で選択しろ」

「もちろんですわ。おにーさま」

 そういうと誰でもお気軽に遊べる大人気パズルゲーム『ぶよぶよ』を持ってきたかなで。

「さすがだな、かなでよ。これならゲームのいろはを知らないミハイルでも余裕だろ」

「デヘ♪ ですわ」

 キンモ! ウインクすな。


 かなでが『ボレステ4』にディスクを挿入……。

 この時、妹のかなではデヘデヘと笑う。

 ソフトを自動でゲーム機が吸い込む動作がたまらないそうだ。

 我が妹にして最大の変態である。



「さあていっちょやるか! ですわ♪」

「うん☆ じゃあ、最初はオレとかなでちゃんでいいか?」

「構わんぞ。どうせ優勝はこの天才だからな」

 鼻で笑う俺氏。

「んだと!? かなでちゃん、タクトって強いのか?」

「強いですわ……この御方は……」

 顔を歪ませて拳をつくるかなで。

「フッ、せいぜい足掻いてみろ、ミハイル」


 もうすでに、対戦は始まっている。

 かなでは、連鎖まちというやあつである。

 いっぽうのミハイルは、ガチャガチャと乱暴に扱う。

 これは稀に幼少期に見られる子供と同様の行動に近い。

 ビギナーというやつだ。

 だが、なぜかそのプレイでも連鎖がかなで以上に優勢になりつつあった。


「うわぁ! 負けましたわ」

「やったぜ☆」

 すまん、今の言い回しだと『別のこと』を考えてしまうのは俺だけだろうか?


 すかさず、俺がコントローラーをうけとる。

「真打の登場だ」

「よおし☆ 負けないぞ、タクト」


 数分後……。


「なん……だと!」

「やりぃ!」

「この天才、琢人が負けただと……」

「どうだ? タクト?」

 ない胸をはるな!

 いちいち、おタッチしたくなるだろ。


 そうして夕暮れになると、ノックの音もなく扉が開く。

「晩ご飯できたわよぉ!」

「か、母さん……いつもノックをお願いしているだろ?」

「なに? オナってたの?」

「ちゃうわ!」

 我が母親ながら琴音さんは今日もブッ飛ばしすぎなのである。


「ミハイルくんもいっしょに食べていきなさい」

「う、うっす」

「わーい、パーティですわ♪」

 これってなんの罰ゲーム?

 明日、仕事(新聞配達)があるんですけど?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る